「それはどういうコトダイ?可愛くて綺麗なキミヨ。詳しく教えてオクレ。」
「そ、その、『可愛くて綺麗な君よ。』っていう部分とか、えっと…。」
うわあ、恥ずかしい!僕こんな言葉人生で一度も言ったことないんだけど!?いや当たり前なんだけどさ…!
顔がみるみる熱くなって口早に言う。
「つまりそういう後付けしている言葉を言わないようにすれば少しは改善されるかと…!」
「…ナルホド! アリガトウ。キミに教えて貰えてヨカッタ。キミはとても素敵な人ダ…?」
僕は口の前でシーッというポーズを作る。クララさんはそれを見て口をつぐんだ。
うーむ、今教えたばっかだけど、やっぱり日本に来てから一年間そういう言葉を使って生活していたから癖になってしまったのかな。
「く、クララさん、それを言わないように耐えてください…! 」
「あ〜…えっと…、教えてくれてアリガトウ…?」
で、出来たーーー!!!
凄いぞ!後付けしている言葉がないだけで、こんなにもまともな日本語っぽくなるなんて! いや!これはまともな日本語と言っても過言ではない!
クララさんと友達になれる日もそう遠くはないのかもしれない!!!
「そ、そんな感じ、です…!ちゃんと普通の日本語に、なってますよ…!」
「あ、アリガトウ!」
クララさんは分かりやすく瞳をキラキラさせていた。
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…ワタシ、ちゃんと日本語使えるようになるのカナ。蓮太サンは『後付けする言葉を無くしたほうが良い。』って教えてくれたケド、なんだか違和感が凄くあるし…。喋りづらいんダヨネ…。
学校が終わり、家の中で悶々と悩んでいる。違和感はあるし喋りづらいけど、普通の日本語で会話がしたい。そのせめぎあいの中、ピロン♪と通知が届いた。その通知は、齋藤英孝のYouTube配信を知らせるものだった。
「齋藤英考サンがYouTube配信なんてメズラシイ。早く見ないと!」
一年間、日本語勉強の為に動画を見ていたら、ファンになるのも当然。チャンネル登録もしていて、珍しくYouTube配信をやっている時は必ずそれを見ている。
『僕のことを見てるのかい?やめておくれよ。照れるじゃないか。』
画面の中の齋藤英孝は、面白おかしくコメントを読み捌いていく。
「…ヨシ、聞いてみよう。」
いつもはしないケド、今日はスパチャをしよう。だって、齋藤英孝サンの日本語が本当にムダにカッコつけてロマンチックな言葉なのかを確かめないト…!
《初スパチャです!
私は日本語を齋藤英孝さんの動画を見て勉強しているのですが、隣の席の子が『それは無駄に格好付けてロマンチックな言葉なんだよ。』と教えてくれました。齋藤英孝さんは普通の日本語を喋っていないのですか?》
答えてくれるカナ…。
『スパチャありがとう!ふむふむ、なになに…?』
読んでクレタ…!な、なんて答えてくれるんダロウ…。
『なるほどね。この言葉は僕にとっては普通だよ。可愛い子猫ちゃん♡…うーん、多分その隣の子、実は君のことが好きなんだよ。だから、こういう言葉を君の口から聞いて照れているんだ。君はモテモテなのだね。嫉妬しちゃうなあ。』
…え!?
蓮太サンって私のコト好き、ナノ…!?
━━━━━━━翌日━━━━━━━━
「お、おはようございます、クララ、さん…。」
「お、オハヨウ。綺麗な蓮太ク…ン。」
…?
僕の間違いじゃなければ、クララさん、なんだか顔が赤い…? 熱だったら危険だし、聞いておいたほうが良いかもしれない。
「クララさん、か、顔が赤いけど、大丈夫ですか…?」
「へっ…!?き、キミの心配には及ばないヨ…!」
もっと顔が赤くなった。絶対大丈夫じゃない。
考えるよりも先にクララさんの額に手を乗せる。すると、少しだけ暖かい体温を感じた。
熱ではない…?いや、そうじゃなくても体調が悪いのかもしれない。
「クララさん、熱ではないっぽいけどしんどかったら言ってください。保健室に連れて行きますから。」
「あ、アリガトウ…。でも、距離が近くて…驚いた、ヨ…。」
…!!!!
僕なんてことを…!?人見知り兼陰キャの僕がクララさんに触れてしまった!熱じゃないかどうかを確認したかったとはいえ、なぜこんな行動をしてしまったんだ!
「あ、あの…!ごめんなさい…!」
頭を下げてめいっぱいの声で謝った。
ああ、絶対キモがられた。やっぱり僕は友達なんて出来ないんだ…。
「………。」
…む、無視か…?
チラッとクララさんの顔を見ると、頬をさっきよりもさらに赤くして、固まっているのが見えた。
あんなに顔が赤くなってるってことは、やっぱり熱なのか?なら早く、クララさんを保健室に連れて行かないと!最悪なことをしてしまったけど、今はそれどころじゃない!
「く、クララさん!僕のことを最低なことしたキモイ奴って思ってることは分かってます!でも、今は僕に従ってください!」
「へっ…!?」
クララさんの手を引っ張って保健室に連れていく。
周りの視線が痛いけど、仕方ない。これは緊急なんだ。
保健室の扉を勢いよく開けた。
「すみません、先生!この子が熱っぽくて、ベッドを貸してあげてください!」
「あらビックリした。ええ、分かったわ。」
「ちょ、チョット待っておくれヨ…!」
僕はクララさんから嫌われた。だから、早くクララさんの視界から消えたほうがいいんだ。
「では、よろしくお願いします。」
そう言って、保健室の扉を閉めた。
〜第三話へ〜
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