テラーノベル
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『この際だからはっきり言うけど、俺は一人で頑張ってくつもりだった、この先もずっと。お前が2人でってしつこいから話合わせてただけで、お前とやってくつもりなんて最初からなかった』
『やれるだろ、お互いがいなくても。別に1人でさ』
『……俺は、もうお前とは一緒にいられない』
言われた言葉が鋭いナイフになって心に刺さっていく。実際に血なんて出てなかったけど、それでも痛みは広がっていって、本当にこのまま死んでしまうのではないかという錯覚を引き起こした。
部屋を飛び出してきたはいいものの、寮生活の俺は他に帰る場所なんてない。外出許可を取りもせず家に帰ることは許されない。それでも今は1人でいたかった。
数日前に学長に呼び出され、事務所から声をかけられたときは本当に嬉しかった。ここ出身の先輩も数多く所属し、世界に向けてグローバルな動きも活発で、まさしく俺の目指すデビューだった、はずだった。
「え……」
「契約は君1人。ソロデビューということで話を進めたいんだ」
「ちょっと、待ってください……僕、一緒にデビューしたい人がいて、チェ・スンヒョンていう人なんですけど、ダンスも歌も素晴らしいし、前からずっと…2人でデビューしようって、話してて…それが夢で、」
「ジヨン」
咎めるように名前を呼ばれてハッとする。周りはみんな固い表情をしていて、こんなときになにわがままを言っているんだ、と声が聞こえる気がした。
それでも、だからといって簡単に頷くことはできない。ずっと、彼と共に夢見て、そのために頑張ってきたのだから。
「考え直して、もらえませんか?2人でデビューしたいんです、どうしても。でなきゃ………この話はなかったことに、したい…です」
「ジヨンっ、」
「……」
「……事務所の方針は変わらない」
「…………どうしても、ですか?」
「ああ、申し訳ないが」
最初に渡された名刺、そこに記載されていた事務所の副社長。眉を下げ悲しそうな顔をしながらも、考えが変わることはなかった。
「……………少し、時間をください」
「いい加減しなさい」
「お願いです!……考える時間を、ください」
立ち上がって頭を下げる。俺の身勝手なわがままで、学長はすっかり困り果てていた。
「……わかった。一週間、しっかり考えて…再度君の答えを聞かせてほしい」
「……ありがとう、ございます」
ギューッと胸が締め付けられる。苦しくて、つらくて、全部投げ出して逃げたくなった。
今すぐにでも彼の元へ駆けつけて、その身体を目一杯抱きしめて、優しい温もりに身を任せて眠ってしまいたい。
「ジヨンヒョン、」
トイレから出てくると、待ち構えていたように立っていたドンスが声をかけてきた。
「………どうしたの?」
「ヒョンと話がしたくて……時間、ありますか?」
普段クールで感情があまり顔に出ないそんな彼が、切羽詰まったように顔を歪ませて苦しそうにしている。
「……うん」
なんの話がしたいかなんて、そんなの、わかってた。
普段休憩室として使われている部屋でドンスの向き合う。彼はなにから話していいか迷うように口を開けては閉じ、俺はその唇の動く様をぼんやりと見つめていた。
「……スンヒョンヒョンと、なにがあったんですか?」
「……」
「あんなに、いつも離れなかった2人が、一昨日から全く話さなくなって、全く近くにもいなくなって……今朝急に、ジヨンヒョンが行く事務所が決まったって報告されて…明日もうここを出て行くって…」
「……」
「僕もう、なにがなんだか……スンヒョンヒョンもジヨンヒョンも全然元気ないし…」
「………うん」
本当は誰にも言うつもりはなかった。でも、彼には話しておこうと思った。
『僕、初めて言いますけど、いつまでも2人のこと支えていきたいんです』
あの日言われた彼の言葉が頭を流れたから。
「……実は…………、」
俺は経緯を洗いざらい話した。あの日呼び出されたときに言われた話、考えたこと、そしてスンヒョンに言われた言葉、壊れてしまった仲。ドンスは驚いたように目を見開いたあと、まるで泣き出しそうな顔になった。
「そんな……」
「……」
「ジヨンヒョン…まさか、スンヒョンヒョンの言葉、信じてるんですか、?」
「……」
「ずっと、一人でやってくつもりだったなんて…話合わせてた、だけなんて…一緒にはいられない、て……そんなの、そんなわけっ」
「わかってる」
無意識に自分の口から出た言葉に驚く。それと同時に気づいた。
そうだ、本当はわかっていた。
「わかってるよ。ヒョンが……本当は、そんなこと思ってないって。迷ってる俺の背中を押すために、チャンスを掴めるように…わざと、傷つけるような言葉で、俺のこと突き放したってことくらい…」
「ジヨンヒョン…」
「だから………だから、つらいんだろ」
全部俺のためってわかってるから、つらい。ここで諦めてしまったら、せっかく君がしてくれたことを無駄にしてしまう。
「………そう、ですね」
彼はそう言うと、目を伏せ唇を噛み締めた。誰よりも俺たちを近くで見てきたから、想いも全部わかってるはずだ。
「……ねぇ、ドンス」
「…はい」
「こんな、情けない俺から…ひとつ、お願いをしてもいい?」
「……なんですか?」
「君はいつか、俺たちを支えていきたいって言ってくれてたよね。もし…もしさ、今もその気持ちが変わってないなら………俺が離れたあと、スンヒョンヒョンのこと、よろしくね」
彼は驚いたような顔をした。残酷なことを言っているのはわかってる。俺が手放してしまうものを、俺の代わりに傍で見守っていてほしいなんて、身勝手なことを言っている。彼のしたいこともやりたいことも夢も、全て無視した意見だ。
「……ヒョン、ああ見えて、実はすっごい寂しがり屋だからさ」
「っ、」
ドンスはギュッと目を瞑った。そしてじわりと溢れてきた涙を乱暴に拭うと、力強い目でこちらを見つめる。今更ながら、大きくなったなと思った。
「わかりました。でも、条件があります」
「ん?」
「いつか……いつか必ず、スンヒョンヒョンに会いに来てください。迎えに来てください。それまでは僕が、必ず傍にいますから」
ああなんだか俺まで泣きそうだな。これからがスタートなのに、こんなはずじゃなかったのに、なんて考えても仕方ないけど。
「……わかった。約束する」
そう言ってドンスを力強く抱きしめる。タガが外れたように泣き出す彼、じんわりと濡れていく肩を感じながら、俺たち2人の分まで泣いているような彼の背中を優しく撫でた。
コメント
6件
わーーーい!!!!第二章あげてくださってありがとうございます!!🩷🩷ジヨンがタプさんが背中を押すために言ってくれてるってちゃんと理解してて安心しつつそれが一番辛いっていう気持ちもわかって悲しくなりました😢😢ドンスさんいい奴すぎてまじで友達に欲しいんですけど???
久しぶりの投稿めっちゃ嬉しいです😭 こういう悲しい系の話めっちゃ癖なので最高です💕 ゆっくり活動してくださいね🪄
うわ…第12話、めちゃくちゃ胸に来ました。スンヒョンがわざと突き放すための言葉だったって、ジヨンがちゃんと気づいてるのがもう切なすぎる。それでも「わかってるからつらい」って部分、本当にその通りだなって。ドンスにスンヒョンを託すところ、泣けました。2人のために泣いてくれる存在がいるって、それだけで希望になる。続き、どうなるんだろう…
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