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半年後。
妹は無罪が確定し、釈放された。
けれど、彼女の笑顔は事件の前とは違っていた。
「兄さん、ありがとう。でも……人を疑うのって、怖いね」
「もう大丈夫だ。お前は、何も悪くない」
春の風が窓から吹き込み、カーテンが揺れた。
街路樹の若葉が陽を反射して輝いている。
俺は思った。
もしあの時、妹を信じなかったら――彼女はもう、ここにいなかったかもしれない。
新聞の一面には、黒川梨沙の判決記事が載っていた。
“懲役十五年”。
だが、その記事の隅に、見慣れない一文があった。
「被告の供述には、一部矛盾が残る」
俺は記事を閉じ、窓の外を見た。
遠くで誰かの笑い声が聞こえる。
平穏な日々が戻った――はずだった。
だがその夜、玄関のポストに一通の封筒が投げ込まれていた。
中には、一枚の写真。
――雨の夜、妹の背後に立つ“もう一人の影”。
俺は息をのんだ。
そして、静かに呟いた。
「……まだ、終わってないのか。」