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9 - 第9話 「与えられた名前」

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2023年12月23日

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1.与えられた名前─ソライア─

「ソライア?」

『えぇ。今回の仕事を成功させた祝いに、新しい名前─すなわち、コードネームを与えようかと思いましてね』

子供が起きているにはもう遅い、夜の11時20分。幼い杏咲─ソライアは突如としてかかってきた電話を血塗れの手で取った。淡々と話す彼女の前には、既に息を引き取った男が血を流して横たわっている。

「…兄さんは?」

『今そちらに向かっているようですよ。姿を見られる前に2人で戻って来なさい』

「了解」

ソライアは電話を切ろうとしたが、そのときには既に相手に切られていた。終話音が辺りに薄く響く。

静まり返った裏路地を何食わぬ顔で後にしたその少女は、このとき僅か12歳という幼さだった。

2.計画

「仕事だ。例の取引をした会社の社長をバラすことになった」

前日の夜、カラスのように真っ黒なポルシェ356Aを運転するウォッカの隣で、ジンが言った。

「へへっ、やっぱり殺るんですね。…で、誰が行くんで?」

「今回は奴のボディーガードの数が多いんでな。俺とウォッカ、キャンティとコルン、バレンシアとその妹で向かう」

「バレンシアの……ですかい?まだガキだってのに役に立つんで?」

「もちろん使えねぇよ、今はな」

ジンはフッと笑うと、咥えていたタバコを灰皿にグリグリと押し付け、火を消した。

オトリだよ

「オトリ…?」

「あのガキが奴を引き寄せているうちに、俺たちがボディーガードを殺る。ここで”使える奴”か見てやるんだよ」

「なるほど…」

ジンの言葉の意味を理解したウォッカもニヤリと笑った。そのすぐ後に、ジンが「それと」と付け加える。

「ターゲットはバレンシアに殺らせる」

「え?アニキじゃないんですかい?」

「あぁ、ちょっとな…」

真っ黒な2人を乗せた真っ黒な車は、輝く夜の街を通り過ぎ、暗闇に紛れ、そして見えなくなった。

3.作戦

「─ってことらしいんだけど、杏咲、行けるか?」

「うん」

明くる日、ジンから届いたメールを確認したバレンシアは、ちょうど朝食を食べ終えた杏咲に聞いた。その問いに、嫌がることなく返事が返ってくる。

「ターゲットを仕留めるなんて、そんな大役俺で良いのか…?」

「それほど信頼されてるってことじゃないの?」

「なら良いんだけどな」

冗談めかした声色で笑ったバレンシアは、ジンに向けて「了解」とメッセージを打ち、スマホをポケットに入れた。


そして、夜9時。

「俺とウォッカはここ」

「へい」

「キャンティとコルンはここの上から」

「あいよ」「分かった」

「バレンシアは俺とウォッカがここにいる間にターゲットがいるバーへ向かえ」

「了解」

「お前の妹はこっちで借りる。いいな?」

「あぁ」

ジン、ウォッカ、キャンティ、コルン、そしてバレンシアと杏咲は、人通りのない裏路地に停めた車の中で地図を見ていた。

「細かい動きはこうだ」

ジンが指揮を取り、それぞれ段取りを説明する。

「奴は今、このビルで別の会社と会議中だ。それが終わったらここのバーに来ることになっている」

ジンは地図から目を離し、薄暗い路地裏にぽつんと建つバーを指さした。恐らく常連しか行かないところなのだろう。看板がなければバーだと分からない。

「そこで社長をバラすんですね?」

ウォッカが聞く。

「いや、奴は部下やらボディーガードやらを引き連れてくるはずだ。まずお前がそいつらを上手く誘導しろ。その後に俺とウォッカ、キャンティとコルンで奴に気づかれないよう殺す」

ジンは長い前髪から覗く鋭い目で杏咲を見た。杏咲は無言で頷く。

「俺はどうしたら?」

後部座席で腕を組んでいたバレンシアが問う。

「お前は店に入って奴を殺せ。何があっても気づかれるんじゃねぇぞ」

物凄い威圧感と緊迫感、そして大きなプレッシャーを感じ、バレンシアもまた、無言で頷いた。

「…そろそろ時間だ」

4.決行

「はー、久々に長い会議だったな。次はどこだ……あぁ、いつものバーか?」

「はい。20分から━━の代表と接待が入っています」

ターゲットと、そのボディーガードらしき男たちがビルから出てきた。

「5…6…7人かい。随分と連れてくるねぇ」

キャンティが向かいのビルの屋上でライフルスコープを覗く。ボディーガードは専属というだけあって、全員が屈強な大男だった。真正面突破では勝ち目はなさそうだ。

「取引先の方はまだ到着していらっしゃらないようです」

7人のボディーガードが社長と共に店内に入ろうとした時、社長がそれを止めた。

「悪いが、店内に入るのは少人数に留めてくれ。先方に気を遣わせたくない」

「しかし…」

「君たちの仕事ぶりには感謝しているよ。そんなに気を引き締めなくたって良いさ」

「…」

社長は大きく笑い、7人中2人のボディーガードを連れて店に入っていった。

「あとの5人はどうするんですかね?」

ジンと一緒にいるウォッカが呟く。

残されたボディーガードは、店の前に立ち、辺りを警戒し始めた。

「撃っていいか?」

「いや、まだだ。俺が指示を出すまで待て」

キャンティと同じビルの屋上にいたコルンも、スコープでボディーガードらの頭に標準を合わせるが、ジンに止められた。

ターゲットが来る前から既に店内にいたバレンシアは、自らの胸ポケットに挿したボールペン型の小型カメラを通じて、ターゲットの様子を映した映像をジンに送っていた。

ターゲットが椅子を引き、そこに座る。

「よし、やれ」

杏咲は動き出した。

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コメント

1

ユーザー

続き待ってました~! 幼い杏咲ちゃんも今とはまた違う魅力がありそう(*´-`) 任務上手く行くのかドキドキですわ😁 次回も楽しみにしてます(*^^*)

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