テラーノベル
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夕方の帰り道。
街灯がぽつぽつ点き始め、空はすっかり冬っぽい色になっていた。
「なんか今日思ったより冷えるね」
えとが手をポケットに突っ込みながら言うとゆあんが空を見上げた。
「ん?なんかちょっと雪降ってね?」
「えこれ雪?」
「雪でしょ」
「そりゃあ、寒いよね」
微かに雪が降っていることに気づいて、手を出して確認する。
「ほんとにさむい、ダウンきてくればよかった」
「だからひろくんからずっと言われてたじゃん 。あ、そういえば」
ゆあんが何か思い出したようにポケットをガサゴソと漁るとえとのポケットに手を突っ込む。
「え、なになになになに」
「ポケットに手入れてみて」
えとはキョトンとしたまま自分のパーカーのポケットに手を入れる。
「カイロじゃん!いいの?」
「2個持ってたから」
2人は目を合わせてにっと笑う。
「よし、寒いしさっさと帰るぞ!」
ゆあんがそう言って走り出す。
えとがそのゆあんを後ろから追いかけて行く。
「ちょ、速いって!」
えとが叫ぶとゆあんは振り返りもせずに言う。
「寒いから体あっためてんの」
「理論おかしい」
雪はまだたくさん積もるほどじゃないけど、アスファルトが少しだけ濡れていて、足元には気を使う。 えとが歩幅を小さくすると、ゆあんも自然とスピードを落とした。
「滑ったら最悪だからね」
「うん、じゃぱぱにいじられまくるね」
「じゃっぴにチクる前提なの?」
「俺は滑んないから」
そんな会話をしながら二人で並んで歩く。
特別なことは何もないけどこういう帰り道はわりと好きだった。
えとはポケットの中のカイロを握り直す。
指先があったまってきて、さっきよりも寒さを感じにくくなった。
「ほんと助かるわ、これ」
「使うだろうなって思ってた」
「未来予知?」
「ただの経験」
シェアハウスの近くまで来ると、遠くから声が聞こえてきた。
「うっわやばいこれ!」
「寒すぎやろ!!」
聞き慣れた声がここまで聞こえてくる。おそらくじゃぱぱとたっつんであろうと2人は考えた。
「ここまで聞こえて来るのやばすぎ」
「近所迷惑まである」
そう話しながら家までの最後の角を曲がると声の主は案の定じゃぱぱとたっつんだった。すると2人がこちらに気づく。
「おかえり!雪降ってんで!」
「当たり前に知ってる、寒すぎるし 」
「これ見て!」
じゃぱぱが手のひらにちょこんと小さな雪だるまを乗せてこちらに近づいてくる。
「ちっっさ」
「でもかわいいね」
「だって全然積もってないからさ、端のかき集めてがんばったんだよ?」
「てか北海道出身のえとさんからしたらこのくらいなら余裕やないん?」
「いや、寒いには寒いよ。」
その後ろではひろくんともふくんがスマホを構えて写真を撮っていて、 なおきりさんは隅にある雪をかき集めて何か作っている様子。
すると玄関のドアが開いてどぬくにうりがこちらを覗き込む
「外寒いから早く入れよー」
「中あったかいよ!」
みんなが揃っているその感じに、えとはなんとなく安心した。
靴を脱いでゆあんと中に入ると、暖房の空気が一気に体を包む。
「はー、生き返る」
「外との温度差やばい」
「雪の日はこれがいいんだよ」
リビングではシヴァとのあがココアを準備していた。
「外寒かったでしょ」
「めちゃくちゃ」
「ほら、あったかいの飲みな〜」
マグカップを受け取ってソファに座る。
ゆあんは向かいに腰を下ろして、手を伸ばして暖房の風に当たっていた。
「外でじゃっぴ達すごいはしゃいでた」
「私たちも外おいでって言われたんだけど、寒そうだからやめといた」
「出ないのが正解だよ」
メンバーの声に、テレビの音も混ざって いつもの夜がゆっくり始まる。
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