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番号で言って頂ければ嬉しいです!
音沙汰なくてすみませんっ!!!紫蘇ㄘャンです!
実はもう少しで期末テストという学生には地獄のイベントが待ち構えてまして…
早ければ来週末には落ち着くので、それまで活動を一旦お休みします…!!
それまでの間に、今からズラーと私がために貯めた下書きの一部をお見せするので、良ければコメント💬にこの話の続きが気になる!と教えて貰えれば幸いです✨✨
では!宜しくお願いします!
※とても長いです!!
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1 『放課後、衝動的に海に来たknmcの話です。海行きたい()』
「〜〜♪〜〜〜♪」
吹く風が運んで来る潮の匂いが鼻を通り、打ち寄せる波が足元を濡らす。靴も靴下も脱ぎ置いてきて正解だったな、と冷たい海水に足元を浸からしながらそう思う。
波音に混じる自分の鼻歌。
学校から家へ帰る手段として電車を使っているknmc。その電車の中に吊られてた広告の紙に「海」をテーマとした宣伝があった。それを見て不意に「海に行きたい」そう思ったknmcは、いつもの降りる駅を通り過ぎて、海まで歩いて行ける距離の駅まで乗り過ごす。
目的の駅に着けば降りて直ぐ、海がある場所へ続く道を歩く。秋で涼しい風が吹くも、まだ日差しは肌に刺さる程暑くて、歩いている最中には額に汗が浮かぶ。それを拭いながらも歩き続ける。
そしてその海に着く頃には陽が沈みかけていて、空は橙色に染まっていた。だけど、陽の光を浴びる海はキラキラと宝石の様に輝いて、それがどことなく綺麗だった。
そんな景色を眺めていたら突如、脳裏にぼんやりとしたメロディーが流れてきた。誰かが歌っている、小さい頃に聞いた事があるメロディー。歌詞があった筈なのにそれが思い出せない。
それとはまた別に、海を眺めていたら「少し水に当たろうかな…」そう思って靴や靴下を脱いで、竹刀入れも濡れない砂浜の位置に置いておく。
裸足で波打ち際を歩きながら、頭に流れるメロディーを鼻歌で歌う。
何処で聴いたんだっけ…。長い長い休みの日には必ず毎日その歌を聴いた筈なんだけどな。そんな事を考えながらただひたすらに、なんの目的もなく歩く。
覚えている箇所のメロディーをただ只管に鼻歌で繰り返し歌う。それでも歌詞が思い浮かばずのまま。でも不思議と、モヤモヤとした気持は残らない。
それがなんでなのか、よく分からなった。
少し歩いた頃に、ポケットに入れてあった携帯が震え出す。何かと思い、手に取って画面を見れば『社長』と名前が乗ってある画面が開く。
「社長から電話…ぁ、やっば忘れてた…今日企画の打ち合わせだったなぁ」
そう1人つぶやく。名前を見て思い出した。今日はrfmo塾での企画の打ち合わせがある日だという事を。この電話は多分、というか絶対に「何処に居るの?何をしているの?」と聞かれるであろう電話だろうな。そして怒られる。ちょっと身勝手な事をしてしまったと、まだ話の内容は聞いてないのに反省する。
緑のマークが表示されている所に指で押し、電話に出る。耳にスマホを当てて、「もしもし」と返事する。
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2 『“テスト返し”というゲームをしている人の動画を見て、妄想膨らみました。hrmcです』
「…い………おい………いつ………きろ」
頭の遠い遠い所から、誰かの声が聞こえる。その声で意識が引き戻される。
ゆっくり目を開ける。目に眩い光が差し込み、視界はボヤけていたものの、次第に晴れていき、頭も徐々に覚醒していく。
目の前を見れば、何かが僕の顔を覗き込んでいる。
「おい!kidhr!!いつまで寝ているつもりだ!起きろ!!」
「ッわぁぁぁぁ!!!!??」
回るようになった頭で、しっかりそいつの顔を認識したら、ドアップで目に映る羊の顔だった。
頭の中で羊の鳴き声が再生される。
突然の視界いっぱいに映る羊の顔に、僕は仰天し盛大に声を上げる。
「メェうるさい!!!」
すると羊顔のそいつは、僕に向かってそう叱咤する。そして奇妙な事に、羊の顔のくせに嫌そうな顔をしていると分かってしまうのはどうしてだろうか。
ちなみに、羊顔というのは馬面とか犬顔とかそう言った比喩表現じゃなくて、マジの羊の顔だ。その割に格好は人間が身に纏うようなスーツで、言ったらスーツ人間が羊の顔の着ぐるみを被っているような、奇怪な容姿だ。
「聞いているのかkidhr!!」
風船がパンっと割れたように、考え事をしていたものが一気に散る。羊のような奴に名前を呼ばれ、反射的に「はいっ!」と返事をしてしまう。
「君はまだまだだメェ ~ !他の回答は素晴らしいのに、選択肢問題は全て不正解だ」
と、言いながら僕の机の上に、解いた記憶がない回答用紙が置かれた。上から順に目を追って見れば、一問一答の問題は丸が付けられていたが、羊が言っていた選択肢問題なのであろう所は全てにペケが付けられていた。
「及び平均より下という事で、君は赤点決定だメェ ~ 。再試だから、もう一度」
「えっ」
言ってる意味がわからず、呆然とする僕に羊は突然、その手で視界を遮ってきた。目の前が見えないかと思えば、視界は暗転する。
──────────────────
目が覚める。
目の前には黒板があって、目の前には1列に並ぶ机。僕は前から3列目だからそこそこ見える位置にいて、左側から太陽の光が差し込まれて、それを浴びている。
時計を見ればどうやら放課後らしく、空はオレンジ色に染まっていた。
それよりも、と辺りを見回す。あの羊の姿は見えない。しかし、さっきと同じ教室で同じ場所に居るから、もしかしたら気付かぬ内に寝落ちていたのだろうか。
グググと背伸びをする。
きっとさっきのは夢だったのだろう。にしても変な夢を見たなぁ。
さっさと帰ろう。そう思いながら横に掛けていた鞄を手に取って立ち上がる。椅子を机に仕舞おうとした時、僕の席の後ろに人影が見えた。
あまりにも気になってそっちに目を向ける。途端に目を見開く。
「え…?」
困惑したような声が漏れる。
それに反応するように、机に伏せて寝ていたであろう藤色髪の男から「んんっ…」と唸るような声が聞こえ、ビクッと肩が上がる。
「ふぁぁ…、ん?あれ?」
目をゴシゴシと擦りながら欠伸をする彼は、先程の僕と同じように周りを見渡していた。
それから僕の姿を捉えて、じっと見つめてくる。僕は未だに唖然とした顔で立っているだけだった。
「kid、くん?」
そう僕の名前を呼ぶ。
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3 『ストーカーされるknmcのお話です。不穏ですね!』
「はっ、?」
___帰宅して、家の郵便箱の中を確認しようと、受け取り口の扉を開けた時。身に覚えのない、茶色の封筒が入ってあった。
父の仕事の関係で良く似たような資料がこの形で届く事が多かった。だから今回もその類かと思いながらその封筒を手に取る。その封筒はサラサラとした質感で、妙に重たかった。手に取って裏がして見れば、『knmctoya様』と丁寧に僕の名前が書かれていた。
僕宛?なんて思ってその場で中身を確認する。家の中で確認する手もあったが、一体何が入っているのかと好奇心が勝ってしまった。
そんな理由で、封筒の中身を取り出してみれば、それはあまりにも不可解で、それでいて信じ難いものだった。
約30数枚近くの、僕が写っている写真。
ドッとした緊張感が押し寄せて、思わず手の力が緩み、写真がバサッと落ちる。慌ててしゃがみ、写真を全て回収する。
拾うと同時に1枚1枚確認する。どの写真も僕に不気味な程、鮮明にピントがあっている。僕が知らない場所で撮られているものばかりだった。
学校からの帰り道。図書館で勉強をしている時。駅のホームから出てくる姿。
写真をかき集める手が、ふと何か薄いものに触れた。写真より小さい便箋だった。
僕はその便箋を拾い上げる。それは百均でよく見かけるデザインのものだった。引かれている線の上に、文字が綴られていた。
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4 『アルバムを見つけたknmcが____みたいな話です』
たまたま、部屋の棚の整理をしていた時だった。引き出し式の収納の奥に古びたアルバムが出てきた。これと言ったタイトルは書かれておらず、真ん中に英語で『memory』とだけ金色で書かれてあった。
僕はそれを見て懐かしさを感じる。
整理して片付けをする為に動かしていた手は、いつの間にかアルバムの表紙を捲る為に右端の角を手に添えていた。
ゆっくりとページを開く。
産まれたての頃の僕が母の腕の中で抱き抱えられた写真。
1歳頃だっけな?自分の手で離乳食を食べていて、周りは少し散らかっている。食事中の写真。
これは園児の時かな。卒園式と書かれた看板の前で、両親と並んでいる写真。
入学式だ。初めての学校で少し緊張したりしてるなぁ自分。いい笑顔で学校の校門前に立つ僕の写真。
これは卒業式。胸元にコサージュを着けて、同じように両親と並んで撮った写真。
中学校に入学、卒業した時の写真。
これまでの間に、色んな写真がアルバムに貼られていた。友達と並んでとってる写真や兄や姉と写っている写真。兄との割合が姉と比べたら多いが…。
そして、高校入学式の写真。
時期的に、高校2年生になった頃の写真が次ある筈なのだが。
「まっさらだ」
ページを捲っても捲っても、写真は一枚も無かった。
最後に撮られた写真は、この高校1年生の冬だろうか。何かのクリスマスイベントの時のイルミネーションを眺めてる僕1人だけが写っている写真だった。
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5 『地震で震源地が神奈川県だった話です。文字通り地震要素があります。苦手な方はもう素早くスライドして下さい。』
ほんの一瞬だった。
突然、カタカタと小さくテーブルが揺れだした。でもそれだけだった。
土曜日の朝。テレビ画面の上から『地震速報』と表示が出てきて、僕の地域の名前が上がっていたが、特に大きくはなかった。
小さい地震だったんだろうな…
そう思っていた。
今日の休日は僕も両親も特に用事は無かったので、各々好きに時間を過ごしていた。
お昼頃に時間も差し掛かった頃。
勉強中、カタカタと揺れだした。
「わっ…また揺れた…」
今度は自室の勉強机の上に置いてあるものが微妙に揺れているのが分かった。
「またさっきの同じくらいかな…」
体感的に、朝と同じくらいだろうと思った僕は、止めていた手を再び動かした。
その日の夜。
22時10分を過ぎた頃だった。
充実した休日を過ごせたと思っていた。明日は朝からrfmoの収録がある為、早めに寝付こうと思った時。
地面が唸るような、ゴゴゴ…とした重く低い地響きがして、出しっぱなしにしたペンが床に落ちたかと思えば
「っえ…ぅっ?!」
揺れ始めた。それも、先程と同じような感じではなく、比べ物にならないほど大きく、足元がふらつき、ベッドの縁でしゃがんで体制を取る。
勉強机の上にあるものが床に落ちたり、棚に飾ってあるものが転がったり、地面は悲惨な状態となっても尚、未だに揺れは収まらない。
心臓がバクバクと脈を打つ。「これまずい…」そう頭の中で警鐘が鳴り響く。
バサバサと本が落ちる音が聞こえた。
かと思えば大きな影が僕を覆う。
本棚だった。固定していた筈なのに、それが意味をなくし、壁から勢いよく僕に落ちてくる本棚に僕は呆気にとられる。
「… ッ !!?」
そしてそのまま、僕は本棚の下敷きとなった。
それでも、お父さんとお母さんは大丈夫なのかと、本棚で下敷きとなっている僕の頭はそんな事でいっぱいだった。
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6 『knmcが何かしらのバグが生じて、rfmo(それ以外も出るかも?)となんやかんやなる話です』
「「「knmc/mcさんがバク ~ ?!」」」
「うるさい」
とある休日の朝のこと。
控え室に揃った大人達の驚愕をする声が上がる。そんな反応をする大人達に対して、当の本人は不思議な程に冷静で且つ何処かムスッとしていた。そして「うるさい」と一喝する。
事はほんの数十分前。
「お疲れ様です」
kgmが扉をノックし、その挨拶と共に顔を出した。部屋の中には同じユニットで活動しているrfmoメンバーのfw、kidの2人が居て、2人共kgmの返事を返した。
「お疲れ様です社長!」
「お疲れっす」
「お疲れ様です。…あれ、knmcさんは未だ来てないんですね?」
控え室に入るなり、確認出来るのはknmc以外の2人だと気付いたkgmは不思議そうにしながらもそう言った。
knmcがメンバーの中で集合が遅れているのはとても珍しい事で、基本的にkgmの次か、その前かなのだ。
「なんか部活で長引くらしくてちょい遅れるらしいで」
スタッフが言ってたわ ~ と、fwは自身の携帯を弄りながらkgmにそう伝えた。
「そうなんですね、なら仕方ないか」
「あ、ちなみにその事で収録開始時間少し伸びるって事も言ってましたよ」
次にkidがfwの説明に言葉を補った。kgmは朝から大変だなぁと此処には居ない本人に労りの気持ちを抱えながら、荷物を置いて、持っていた台本を開く。
一通り目を通し終えて、腕に着けていた時計を確認する。9時過ぎ、本来ならば後15分後には収録が始まっているが、時間が伸びているのでもう少し余裕あるなとkgmは考え、もう一度台本の確認を行った。
暫くして
「なんか、結構遅いな」
不意にfwがそんなことを呟く。
確かに、とその言葉を聞いてkgmもkidも頷く。
「僕、スタッフさんに聞いてきますね」
そう言って立ち上がるkidだったが、数歩歩いた所でガチャっと扉が開いた。しかしそこにはknmcの姿は無く、変わりに何処か焦った顔を浮かばせたスタッフの1人。
3人は焦りを浮かばせるスタッフを不思議そうに見つめた。
「お、お疲れ様です…?あの、どうかされたんですか?」
「お疲れ様です…!あ、kidさん、そこからもっと後ろへ下がって下さい!」
「へ、あ、はい!」
不思議にしながらもスタッフに挨拶をするkidだったが、そのスタッフは光の速さで挨拶をし返した後、kidに向かって後ろへバックとジェスチャーをした。あまりの必死なスタッフの様子にkidは咄嗟に返事をして、言う通りに数歩後ろへ下がる。
kgmもfwも何が何だか分からず、何を思っての行動か、自然と座っていた席から立つ。
「よし、皆さん、一旦その場からこれ以上先に来ないようお願いしますね」
一体なんの忠告なのやら。しかしあまりにもそのスタッフの目がガチだった為、撮影の為のドッキリじゃないんだろうと瞬時にそこは把握出来た。
それからスタッフもkidと同じ位置まで移動したら、「knmcさん入ってもいいですよ」と扉の向こうにknmcが居るのだろうか、そう本人に伝える。
するとヒョコッと顔だけを出したのはknmcだった。
「あ、どうも」
だがどうにも不可解な事に、スタッフの様子とknmcの様子を比べてみてもあからさまに違うのだ。
何処か必死で、緊張感を漂わせているスタッフとは対に、落ち着いていて普段のknmcだった。
その様子の違いさに3人は呆気らかんとする。
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7 『knmcの何かを感じるfwとknmcのお話です。fwmcです』
「mcさん、居なくならんで下さいよ」
2人だけの控え室に、fwっちが唐突にそう言う。
rfmo塾での収録を終え、帰宅しようとしていた時だった。社長はこの後残っている仕事を片すべく、支度が終わり次第に直ぐ帰って、kidくんは桜魔という場所ですべき事が出来たらしく、いやいやと泣き喚きながら同期の2人に連れ出されて行った。
控え室に残ったのは僕とfwっちで、たわいもない話を2人でしながらゆっくり帰る支度をしていた。僕が全ての荷物を片付け手に待ち、fwっちに「また収録の時に」、と別れを告げて扉から出ようとした時、いきなりにfwっちに名前を呼ばれ、進む脚を止められた。
何かと思ったら冒頭のあの台詞だ。
いきなりなんの事か、僕は訳が分からず首を傾げる。
「なに?どういう意味なのそれ?僕は居なくなることなんてしないよ?」
fwくんにそう微笑みながらそう言う。
彼が掴み所のない人間なんだという事は結成当時に知って、fwっちの発する言葉や行動一つ一つが奇抜だが、そこが面白くて。それを目の当たりにしたらついつい笑ってしまう。さっきの発言もそういった類なものなんだと思って、つい微笑んでしまった。
が、しかし。誰かがなんだ?と聞けば、いつもなら「にゃはは」と芯のないような声で笑い、特に意味の無いものだと本人の口から聞いて、なんだよと突っ込むのだが、今のfwっちは普段のfwっちとは何処か違う。
顔をよく見れば、僕を見つめる彼の瞳には僕の先を見据えている、何かが映っているように思えた。
「…fwっ、ち?」
なんだろ、なんか、怖い。
「mcさんなんかあったら頼ってな」
そう言って僕を追い越して、控え室から出て行った。僕はさっきのfwっちの言動に理解が追いつかず、その場で突っ立っているだけだった。
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8 『やばい人と連絡繋がって、それから…なknmcの話』
ピロンッ。そんな軽快な通知音が僕のスマホから鳴った。
マネージャーからだろうか他のライバーからだろうか、はたまたプライベートでの友達からだろうか。一体誰からなのか確認して見ると『苔田(こけだ)』という、馴染みない名前が表示されていた。
「苔田…?」
事務所からの帰宅の際に使う電車の中で、唐突に身に覚えもない人からの連絡。口にして読んだら心当たりがあるかもと思い、小さく名前を呟くも、それといった点が浮かばなかった。
とりあえず…と思い、メッセージの内容だけ確認してみようとメッセージアプリを開く。
『急な連絡、びっくりしたよね…
僕と君とじゃ直接接点は無いけど、僕、どうしても君と話したくて…連絡しちゃったw
君はまだ高校生だよね。あ、俺は苔田って言うんだ宜しくね。』
全てを読み終える頃には無意識にと眉間に皺が寄っていた。周りから見れば凄い気難しそうな顔を浮かばせていたなと自覚する。
でも無理はないだろ。“直接接点が無い”ってどういう事だよ。
そりゃあ名前を見てもピンと来ない訳だ。そう一人で納得する。だがしかし、直接喋った事も会った事もないのにどうして僕の連絡先を手に入れられたのか。
それがいまいち分からなくて、また頭を悩ませる。
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9 『色々と疲れて、リスカしてしまうknmcのお話』
辛い。しんどい。疲れた。
机の上に置いてあるカッターを手に取って、銀に光る刃先をカチカチカチと出す。ほんの一部分は錆びていて、頭の片隅に買い替えという言葉が浮かび上がる。
左腕の袖を捲って巻いてある包帯をスラスラと解き取る。腕に並ぶ薄い傷跡が顔を出す。右手に持ってるカッターを傷跡が並ぶ腕にあてがい、スーッと刻むように引く。
腕には一瞬の鋭い痛みが走り、切った傷跡からは赤い線が浮かび上がる。それが1つの雫となって腕を沿って机の上にポツっと落ちる。1つ、2つと不規則で机上に落ちる。
そしてまた、手を止めること無く次々と刃を肌に押し当てては切っていく。作業のように、黙々と切り裂く。
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10 『バグで消滅してしまうかもしれないと危惧するknmcの話』
部屋で1人、黙々と勉強をしていた。
ペンを動かしては問題冊子のページを捲る。そしてまたペンを動かそうとした時。
「痛 ッ … 」
突拍子もなく、右手に電撃が打たれたかのような痛みが走った。それもほんの一瞬。あまりの痛みにペンをノートの上に放って、片手で擦りながら一体なんなのか見てみる。
「はっ…?」
ジジッ____。
右手の人差し指と中指の輪郭が揺らぎ、まるで古いテレビのノイズのようにチカチカと細かな四角が瞬いた。
指が消えた。かと思えばそのノイズは無くなり、指先の輪郭はハッキリとする。
その一瞬で一体何が起こったのか、分からなくて、手を握ったり開いたりの動作をして何も無いか確認する。
気の所為、で終える訳にはいかなかった。なんせまだほんの少しだけピリピリと右手は痛む。
あの現象、もしかして…。
そう考えた瞬間、心臓がドクンッと跳ね、冷や汗が背中を這った。
「そんなわけ…」
声が震えていて、自分でも恐怖が抑えきれていないのが分かる。
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11 『テーマは同じですけど、knmcがストーカーに遭って、先に言います。死ネタです』
男の自分がストーカーに遭っているなんて言えば笑われるだろうな。
それでも助けて欲しかった。
勇気をだしてそれを家族に告げた。
家族は否定せず、笑わず、ただ僕を心配して、「良く1人で頑張ったね」そう励ましてくれた。
僕は心のどこかで安心した。言えた。これで1人で抱え込まなくていいと知った。
けれどそれは甘かった。
ストーカーに遭っている。
そう警察に相談した。そうしたら警察は気の所為では?そう返した。
母も父も、反論した。
そう、僕は気付いた。家族だからこそ信じてくれたのだこの人たちは。けれど、普通の、それに他人からすれば男がストーカーなんて有り得ないと笑う。
それが本来の反応で。
僕は両親を止めて、家へ帰る事になった。
その道中、両親は悔しそうに唯ひたすら「ごめんね」とだけ僕に言うだけだった。
僕は「大丈夫」そう言うしか無かった。
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12 『地球最後の日に配信するknmcの話』
「あ、あー…ん、どうかな?聞こえます?……お、聞こえるっぽいな…よし」
突然立ち上がった配信枠に、何万人ものの視聴者が1人の配信者の元へ集う。
何万人もののコメントが迅速で流れ出す。
「よし…、はいと言うことでお待たせしました!20××年は×月×日となりました、皆様いかがお過ごしでしょうか?knmctoyaでございます!はい!という事で、」
コメント欄には『イェア』と統一された単語が次々と溢れかえる。
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13 『色々と忙しく、そんな中で無理したknmcが体調を崩す(そんな予定)話です』
ふと、考える。
最後に自分が心の底から落ち着けたのはいつだったかな。
そんな事が不意に頭をよぎり、ペンを動かしていた手が止まる。
ああ、ダメだ。余計な事を考えたらまともに勉強も出来ない。
最近、何かと忙しい日々が続いた。時期も時期だから仕方ないと言えば仕方ないし、忙しいと言うのはどちらかといえば有難い事だ。
学校じゃ近々テストが控えていて、それが終わっても部活の大会や他校との練習試合が待っている。それに学校行事の手伝いにも駆り出され、家に帰ってもその準備に追われている。
それと同時進行でrfmo塾での収録にnjsj公式の企画から嬉しい事に声がかかって、そっちにも手をつけてる。他にも大人達との打ち合わせもあって、色々と引っ張りだこだ。
今だって、近々行われる定期考査に向けて勉強中なのに、中々思うように進まない。
「はぁ」と溜息を吐いてペンを置く。
「…配信、しないとなぁ…」
椅子に背もたればギィと音を鳴らす。
最後に配信をやったのは2週間近くも前の事だ。いい加減そろそろ配信をしないと、今年の目標に到達出来ない。
「あぁも ~ やる事いっぱい」
ペンを置いて、体を伸ばしながらそんな事を吐き捨てる。
普段、あまり弱音は吐かない人間の僕だが、そんな硬い口でも一瞬にして緩めば、マイナスな言葉が溢れ出そうになる。
「ふぅ…」
僕以外しか居ない静寂な部屋に僕の吐く息だけが響いた。
頑張れ僕。大丈夫、できる。ちゃんとできる。
そんな事を心の中で唱えては、パチンっと両手で頬を叩く。ジンジンと痛みが主張をするが、気にせず、もう一度ペンを持って動かす。