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逃避行(短編集)

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逃避行(短編集)

4 - 縋りついたまま朽ちて行くんだ

♥

356

2025年08月05日

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シリアス注意

💙❤️

(💛さんいます)









「死ぬの、怖い?」

「……」

「大丈夫だよ、俺は一生離れないから」

「うん」

「だから、元貴も一生離れないで」

「離れないよ。……もう、ずっと早く終わりにしたかった」

「そっか……」

「でも、死ぬってやっぱ実感湧かないかも。死んでも離れ離れにならないよね……?」

「絶対ならないよ。……手繋ぐ?」

「繋ぐ、」


「……今までありがとうね」

世界に、さよならを告げる。

無意識に手に力が籠る。


どちらからでもなく、地から脚を離す。

風が身体を切るようだ。ひどく冷たくて、ひどく乾いていた。

それでも、痛みは感じないのだから。

僕たちなら、どこまでも行ける。

そんな気さえしてしまった。



手を繋ぐだけではまだ空っぽが埋まらないような気がして、隣にいる彼に手を伸ばす

……綺麗な、顔。

この世に未練なんてないみたい。


伸ばした手にすぐに彼は気づいてくれて、僕の腰を引き寄せてきた。

冷たい空気を裂くなか、暖かな温もりを感じる。

「若井……」

「元貴、だいすきだよ」

「僕も……」

冷たい風に当てられて目が乾いているはずなのに、なんだか涙が止まらない。

「ひろと、だいすき」

「うん。俺も元貴がだーいすき」

最期を迎えることを改めて実感するように、柔らかなくちづけを交わした。



すぐそこに終わりが見える。




これが幸せっていうのかな。

だけど、ひとつ心残りがあるとすれば……




「……ごめんね、涼ちゃん」

そんな呟きは、ぐしゃり、と何かがつぶれるような音にかき消された。





最期に目にした光景は、今までにないほどの煌めきを湛えていた。







「……」

ひどく冷えた早朝。否、まだ深夜とでも言うべきだろうか?普段はこんな時間に起きるなんてありえない。

「ここ、か」

数時間前に、ふたりの大事な仲間が消えた場所。

空にはまだうっすらと星が瞬いており、自分の心と対照的である。

流石は山。空気が澄んでいて肺が喜んでいる。東京の汚れた空気とは全くの別物だと勘違いしてしまうほどに。いや、実際全然違うのだろうが。

「なんで、」

そんなことを問いかけても無駄だ。もう、ふたりは存在しないのだから。

「……」

ぽたぽたと水滴が地面に落ちてくる。天気予報では快晴だったはずだが、雨?空を見ても雲なんてどこにも見当たらないけどな。

「気づいてあげられなくてごめんね。最年長なのに」

崖の下を見る。相当な高さだ。そりゃあ、酷いことになるだろう。誰だかわかったのすら奇跡に思えるが、できることならふたりを救いたかった。

「また3人で音楽できるかな?」


質問のようではあったが、その声には確固たる自信があった。

またひとり、空に輝く星を目指して。






この日の夜空には、世にも稀な三重星が、かつてないほどの美しさで煌めいていたという。












死ネタ悲しくなるから苦手なのに書いてしまいました。

テーマ:心中

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356

コメント

10

ユーザー

うぁぁぁぁ...... 今まで見た去ネタの中で1番好きだわ...ガチで なんかどのセリフも文も表現がエグいって!!!😭

ユーザー

泣いちゃったというか泣かせに来てるよ…😭涼ちゃんのセリフがもうさ、寂しさとか怒りがある気がする、

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