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朝。ムツキはリゥパの温もりを感じながら目を覚ました。すー、すー、とまだ小さな寝息を立てている彼女を起こさないように添い寝をし続ける。彼に彼女を起こさずに自分だけ起きるスキルはない。
さらに言えば、呪いによって、彼は自分で服も着られないので、裸でうろつき回るわけにもいかず、彼女が起きて着させてくれるのを待つしかなかった。
「本当に綺麗で可愛いよな」
顔にかかる髪をそっと動かす。薄い緑色は光に照らされて美しく淡く輝く。さらさらとした髪質はいつまでも触っていたくなるほどに肌触りが良い。
「ん-……ん? おはよう、ムッちゃん。ごめん、起こしてくれたらよかったのに」
リゥパは寝ぼけ眼でムツキの身体に腕を回す。肌の密着度が増して、お互いに安心した気持ちになっている。
「起こすなんてもったいないだろ?」
「私が静かだからかな?」
「そうかもな」
「もう、いじわるね」
何気なく、お互いに無駄な気遣いもなく、相手とのやり取りを楽しむような会話。ムツキはリゥパの頭に手を置き、髪でも梳かすように優しく撫でる。
「言い出したのはリゥパの方だろ? 冗談だよ、冗談」
「んふふ……ぎゅー」
ムツキが少し口を尖らせながら言ったので、リゥパは笑みを浮かべながら、先ほどよりも強めに抱き着いた。彼は彼女の柔らかな感触にドキドキしっ放しで、一方の彼女もまた彼の筋肉質な身体に逞しさを感じてドキドキしている。
「幸せよ」
「俺もだ」
どちらからともなく始まる口づけは、唇を軽く合わせるようなもので、挨拶のような気軽さを思わせる。
「なんだかんだでナジュミネとも仲良くできているしね」
「お互いに相手を思いやれるからだろ」
ナジュミネとリゥパの出会いは物騒な戦いだったものの、その後の関係は良好である。
「そうね。ユウ様はワガママも多いけど、どこか一線を引いている感じもあって、ちょうどよくしている感じがするわ」
「ユウはユウなりにいろいろと考えてくれているみたいだな。俺のことをすごく好きでいてくれているみたいだ」
ユウにとって、ムツキは最高傑作であり、最高のパートナーだった。自分の理想を固めて作った存在であり、そのために異世界から好みの魂を交渉して引っ張ってきたくらいだ。
「あら、創世神を相手に大胆不敵な自信ね」
「ユウの愛を感じて思ったことを言っているだけだよ。長いこと2人きりでいたからな」
ユウとムツキは、17年ほど2人きりの空間で過ごし、ムツキが17歳の誕生日を迎えた時に、ユウはムツキとともに過ごすためだけにこの世界に再び顕現したのだ。
もし、ムツキがモフモフやハーレムを望まなければ、悠久のときを二人きりの世界で過ごしていたかもしれない。
「でもまあ、確かに間違いないわね。それにしても、ユウ様は寛容よね。私がユウ様なら、モフモフはともかく、ハーレムなんて絶対に許さないわね。ムッちゃんを独り占めしたいもの。誰にも渡したくない、って思っちゃう」
リゥパは本心からそう思っている。なんなら今でもそうできるならそうしたいと考えている。それが叶わない夢だとしても。
「俺のハーレム欲を一人で受け止めきれるかな?」
「……難しいかもしれないわね。でも、そういうことじゃないけどね。ふふっ」
しばらく無言で抱き締め合う。そうして時間が過ぎていく。やがて、2人の腕が相手の身体から徐々にほどけていった。
「もう少しこうしていたいところだけど、そろそろ起きないとな」
「残念ね。次はいつかしら?」
2人はベッドから出て、お互いに一糸纏わぬ裸体であることを改めて認識する。
「なるべく早くにするさ」
「待っているわ」
今日は増改築が終わった記念パーティーをすることになっている。しばらく起きてこないユウもパーティーには絶対に起こさなければいけない。その準備が必要なのだ。
「それにしても、本当に呪いが不便みたいね」
リゥパは自分の服を着るよりも先にムツキに下着から何からお世話をしている。その姿は介助のように見え、すべてはムツキに掛かっている呪いのせいであった。
「みんなには迷惑を掛けているな」
「んーん。そんなことないわよ。その呪いと引き換えにいろいろなことがムッちゃんはできるんだから、その恩恵に与っている私たちはお世話くらいするわよ。さっきの言い方で気にさせちゃったなら、ごめんね」
「いや、ごめん。こっちこそ、気にし過ぎた」
リゥパは少し悲し気なムツキの髪の毛を触るように頭を撫でる。
「んふふ。ありがと。さて、服はOKね。寝ぐせを直さないとね? 次は洗面台にGOよ」
リゥパは下着と寝間着をささっと着ると、ムツキの背中を押しながら洗面台へと向かった。