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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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この小説には以下の要素が含まれています

・GL

・桃水

・女体化

・sxxn


nmmnのルールの確認をよろしくお願いします





ちょっとだけいい家庭に生まれて、ちょっといい待遇をされて育った。

それでも、小中高は普通のところに行かせてもらったし、家庭なんか関係なくお友達をつくった。

そんな中できた好きな人は、優しい家族からすら、さすがに反対されそうな人だった。

だって、好きになったのは友達の女の子だったから。

私も女、あの子も女。きっと、この恋は結ばれないと悟っていた。


「らーんちゃんっ!」


ぼーっと考え事をしていると、悩み事の元凶、こさめがやってきた。

彼女は相変わらず、可愛らしいボブを揺らしている。


「なにしてんの?」


私のスマホ画面を除くこさめに思わず仰け反ると、こさめの頬が膨れる。


「ちょっと、なんで隠すの!」


「そもそも勝手にスマホ覗かないでよ!!」


やましいこと隠してるんだーと楽しそうにスマホの取り合いをする。


「あ…っ!」


手から滑ってしまい、机の上に鈍い音を立ててスマホが落ちる。スマホは上に向いて落ちてしまい、思わず手を伸ばすがこさめに取られてしまう。

画面に映されたトーク履歴に、こさめは目を見開く。


「…らんちゃん、お見合いするの?」


「あ…。う、うん…」


ふーんと軽く反応される。少しだけショックかも。


「お見合いとは言っても、実質顔合わせだけどね。お父さんの会社がお世話になってる人の息子さんらしくてさ」


「じゃあ、その人と結婚するんだ?」


「うん、そうなるね」


正直、私はあまり乗り気ではなかった。

だって、私はまだ目の前の彼女を諦められていない。

男の人を好きになろうと思ったことはあるけど、付き合ってみても恋愛感情は生まれず。その度に、自分は女性が恋愛対象だと痛いほど気付かされる。


「ま、らんちゃんが幸せならそれでいんじゃない?写真見たけど、イケメンじゃん」


「そう、だね」


引き止めてくれていいのに。もしこさめが私を好きなら、止めてくれてたのかな。

好きじゃないから、こうやって背中を押してくれてるのかな。

そう思う度、自分の中で苦しい感情が渦巻いて、胸が苦しい。




「はじめまして、らんさん」


「はじめまして」


お見合いが始まると、その人はとても私と向き合おうとしてくれた。とても優しそうな人で、きっと、この人と結婚すれば幸せになれるに違いない。

僅かに残った女としての感情が、そう言っている気がする。


「会ったばかりでごめんなさい。俺、あなたが好きになりました。結婚、よければ考えてくれませんか?」


これで、きっといいはず。


「ええ、よろこんで」


私の選択は、間違ってない。



「「らん、婚約おめでとー!」」


乾杯と共に祝いの言葉。今日はイツメン6人と、私のお祝いをしてくれている。


「まさからんが一番乗りとはなぁ〜」


なつが肩を組みながら私にだる絡みをしてくる。


「こら、ひまちゃん。すーぐだる絡みするんだから」


開始早々なつを私から剥がすのはすち。その様子を、いるま、みこと、こさめが笑ってみている。

やっぱり、私はこの和やかな雰囲気が好きだ。父親の付き合いで行く会食や、デートで連れていかれた高級な店よりも、一番好き。


「…こさめ?飲んでないね」


「んー?どうせみんな潰れちゃうから、こさはセーブしてんの!」


「えー?いつもならめっちゃ飲むのに」


意外性を感じつつも、きっとこれは何か隠してるんだろうなと少し察する。

私が突っ込んでいい話でも無さそうだから、そっと隣に座る。


「らんちゃん?みんなと飲んでくればいいのに」


「んー、私はこさめともお話したいな」


顔を合わせて笑ってみせる。きっと、これが私がこさめを好きでいれる最後の時間だから。

この先からは、あの人だけを愛さなきゃいけない。

円満な夫婦になって、両親を安心させて、子供にも恵まれる未来。これでいいんだ。これが、周りを幸せにさせる最善策だから。


「……。っしょ」


「…えっ、こさめ!?」


セーブすると豪語してしたこさめは、いきなり目の前の生ビールを飲み干す。確かにお酒は強いけど、ジョッキ一気飲みって。こさめマジかよ。


「ぷはっ。もう一杯ください!!」


「え、え?セーブは!?どうしたのいきなり!」


このペースだとアルコール中毒になりかねないので、おかわりが来たところでさすがに引き留める。


「らんちゃんがなんか暗い顔してたから。今日は主役なんだから、もっと楽しそうにしよ?こさもちゃんと飲むからさ!」


にっ、と笑うこさめに、胸が苦しくなる。

ああ、諦めなきゃいけないのに。次に進まなきゃダメなのに。


忘れよう、全部。この感情も、こんな悩みも。


目の前のチューハイをこさめのように一気に流し込み、全てを飲み込む。


「らんちゃん弱いのに平気!?」


「気合いで飲めばこんなもん、ぜんぜん平気」


とはいいつつも、ちょっとふわふわしている。

なんか、気分良くなってきた。今ならこさめと、友達として話せる気がする。


その期待通り、この飲み会は楽しく終わった。

頭がふわふわして、帰る時まで幸せな思い出に浸っていた気がする。

起きると二日酔いで死にそうになっていた。



 

「それじゃ、また後で」


今日は衣装合わせの日。式場も決まり、当日のプログラムも決まってきた。

あと一週間後には結婚式が控えている。


この準備の期間は本当に楽しかった。このドレスいいねとか、こんな飾り素敵だねとか話して笑い合えたのが嬉しくて。結婚すれば、私はこの幸せがきっと毎日手に入る。

私の幸せまで、もうちょっと。



結婚式の前日になると、みんなバタバタしている。私も出席の人などの最終確認をして、当日の流れなどを再確認。

もうすぐで結婚か、とまだ実感が湧かない。

婚姻届は式のあとに出しに行くし、まだ私たちは夫婦じゃない。

この薬指にいる婚約指輪だって、ただのリングでしかない。


コンコン。控え室の扉がノックされた音で、忙しくてパンクしそうだった脳がスっと晴れていく。


「はーい?」


反射のするように声を出してみる。どうせ婚約社だろう。


「あ、らんちゃん!今忙しい?」


しかし、扉を開いて出てきたのは水色のボブを揺らした小柄な女性。こさめだ。


「…え。こさめ?」


思わぬ来客にすぐに頭が処理してくれない


「いやぁ急に来ちゃってごめんねー!」


「それは全然いいんだけど…」


謝りつつもしれっと入ってくるし。なんならソファ勝手にかけてるし。

自由すぎるこさめにハテナを浮かべながらも、手に持ってる紙袋に気づく。


「こさめ、何それ」


「ん?あー!はい、これらんちゃんに!」


まさかの私への物だったらしく、こさめはそれを差し出してくる。

黒い細長い箱に、水色のリボンがあしらわれたオシャレなラッピングだ。


「ありがとう…。これ、開けていい?」


そう聞くともちろんと返事がきたので、遠慮なくそのリボンを解く。

蓋を開くと、出てきたのは小さく煌めく桃色のネックレス。


「か、可愛い…!」


「でしょ?それ、らんちゃんに合うと思って。早めの結婚祝いだよ!」


「ありがとう…!!」


もう友人だと振り切ったはずなのに、相変わらず彼女と話すと自分の良くない感情が出てしまう。


「あーあ、らんちゃんついに結婚かぁー!」


「そうだね。私も実感湧かないよ」


「新郎さんもいい人だし、こさめ勝ち目ないね」


「なにそれ、こさめ私と結婚する気だったの?」


一瞬ドキッとしたが、どうせ冗談なんだからと笑って返してみる。


「…そうって言ったら、どうする?」


「……え?」


どうせ、冗談なんでしょ?

もうやめて。私の心を動かさないで。


「こさめは、らんちゃんが好きだった」


「なに、それ…」




ああ、言うつもりなんてなかったのに。


らんちゃんのお花のように笑う綺麗な顔が好き。

お姫様みたいに綺麗な髪も、沢山食べる綺麗な口も。

なにもかも、こさめが1番愛していたのに。


どうして。どうしてあの男を選んだんだ。


でも、気持ち悪いよね。同性なんて。

らんちゃんは、その心の声に答えるように目をまん丸にして驚いている。


ごめんね。ごめんね。


結婚前にこんなこと言ってごめんね。


自分でもう友達だと吹っ切れて、らんちゃんと接すると決めたのに。


好きになっちゃって、ごめんね。


「こさめ…。泣かないで?」


「え?」


そう言われると、頬に伝う水の感覚に気づく。

なんで、わたしが。


「怖かったよね。気持ち、伝えてくれてありがとう」


そう言ったらんちゃんは、こさめの事をギュッと抱き締める。

らんちゃんの匂いに包まれて、でもちょっと香る新居の匂いに嫉妬して。


「ごめんなさ、らんちゃ…ッ!」


抑えきれない涙に、途切れ途切れの謝罪を零す。

その間もらんちゃんは、ありがとう、ごめんねを繰り返している。

困らせたくなかったのに。幸せになってほしかったのに。


「私は、こさめの気持ちには答えられない。でもね───」


抱きしめられていた香りが離れていく。そして、らんちゃんはこさめを目を合わせた。


「私も、大好きだったの」


目に涙をいっぱい溜めて、らんちゃんはそう言った。


怖かったとか、伝えてくれてありがとうとか。

全部同情じゃなかったの?

らんちゃんは、こさめのことを。


でも、今更知ったって意味が無い。

らんちゃんはもうあの人のものになるんだから。


愛してたよ、らんちゃん。




扉が開くと、たくさんの人に拍手で迎えられ、喜びの眼差しが向けられる。もちろんそこには、何年も共にした友人たちがいる。

お父さんの隣に並んで歩くこの短い道は、私の幸せの未来への道。


でも、本当にこれが私の幸せ?


「新郎さんあなたは………を誓いますか?」


「はい、誓います」


「新婦らんさん。あなたもまたここにいる新郎を、悲しみ深い時も 喜びに充ちた時も、共に過ごし 愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」


その言葉に、なんだか返事ができない。


「……らん?」


なんで私は返事ができないの?

答えなんて、きっと簡単だ。


怒られちゃうかな。たくさんこの式にお金かかったよね。

ごめんね。



「私、本当はあなたが好きじゃない!」



静かな式場に私の言葉が投下される。

その瞬間にざわめく会場、周りの刺すような眼差し。


「ごめんなさい。本当は、他に好きな人がいたの。でも、あなたとの日々は楽しかった」


それだけ言って、私は走りにくいドレスでバージンロードを戻る。


道沿いに座っていた、今日のためにいつもと違う雰囲気を纏った水色髪の手を引いて、私は過去に戻る扉を開けた。




あなたが好きじゃないなんて叫んだ彼女は、真っ白で綺麗なドレスでシンデレラのように走り去る。

その拍子に見えた煌めく桃色のネックレス。

間違いなく、昨日自分があげたもの。


なにしてんの。もうすぐ幸せになれるんじゃん。


驚いてただらんちゃんを見ていただけだったが、ふとこちらに手が伸びてくる。


ぼーっとしているとガシッとその手が掴まれ、こさめは強制的に立たされる。


ばっと扉が開かれた時、らんちゃんは何故か楽しそうだった。




「ちょっと、何してんの!?」


こさめに怒られ、後ろの方から聞こえる会場の騒ぎやらなんやらで押しつぶされそうになる。

でも、これがどんなに最悪な選択だったとしても、私からしたら最高の選択だ。


「…こさめ」


眉毛がキッと上がったこさめの手を握り、私が口を開く。


「私ね、昨日言ったこと嘘じゃないんだ。私、こさめが好きなの」


「むり、しなくていいよ」


昨日は大好きだったと過去形にして伝えてしまったから。

今はあくまでもあの人を愛していたから。

でも、もう違う。


「好きな人って、ふと頭に浮かんじゃうでしょ?あの人ならこうするなとか、あの人はこんな感じかなとか。

私は、こさめをすぐ頭に浮かべちゃう。いつもこさめで頭がいっぱいになって、苦しくなっちゃう。

それほど、私はこさめが好きだよ」


こさめのことを考えて泣いちゃうくらい。こさめが大好きで、大好きで。

そんな思いを精一杯伝える。

私なりの恋の伝え方は、これしかないから。


「こさめだって、らんちゃんのこと…!」


こさめは涙をボロボロ流しながら言葉を紡いでいく。

そんなとき、うるさかった会場の扉が開く。


「よー、らん!」


「なっちゃん!みんなも」


「うるさかったから抜け出してきたわ」


「ぅわあ!こさめちゃんどうしたん!」


「みこちゃん、察してあげて…」


とりあえず、この4人は私たちの味方らしい。

まぁ、そうだろうと思ってたけど。


「そうだらんらん。この近く海があるんだって。車出すよ」


すちがそう言うと、みんなが賛成して車の方に向かう。

式場の前だとあまり自由じゃないから、気を使ってくれたのかな。



みんなが海だーとはしゃぐ頃には、こさめもすっかり泣き止んでいて海を楽しそうに眺めていた。


夕日と海の並びはなんだか幻想的だ。


「らんちゃん、こっち来てよ」


「うん!」


掴んだこさめとの手は、自然と恋人繋ぎに変わる。

もう私たちに、片思いの壁はない。


こさめが頑張って言ってくれたんだから、今度は私が言う番だ。


波が立つ音に、水の流れる音。

全てが私たちを応援しているみたい。


「こさめ、愛してるよ」


「…わたしも、愛してる、らんちゃん」


2人で微笑みあって、手を繋いで、抱きしめて。


結婚式ダメにしちゃったなとか、婚約破棄だなんだとか、気にすべきことは沢山あるけど。


今は、この瞬間だけは、ただあなたと。



砂浜で笑う2人の影は、夕日に照らされていた。

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