ある男は道中、武器を売って儲けを出していた。彼は自分の武具を売るとき、こう言って客を引きつけた。
「この盾は貫かれることのないほど硬い」
「この矛は貫けぬものなどないほど鋭い」
しかし、それを聞いた通りすがりの者が言った。
「では、この矛でその盾を突いたらどうなる?」
商人は答えに詰まってしまった。
それを見ていた武士が口を開いた。
「私が試してやろう」
そう言うと、武士は盾と矛を受け取り、盾を木に掛けて矛を構えた。人々は立ち止まり、息を飲んで見守る。
そしてついに、武士は勢いよく駆け出し、矛を盾に突き立てた。
その瞬間、盾と矛の間で激しく火花が散り、矛と盾は一体化した。
矛は盾を貫通したが、その刃は持ち主に届くほどではなく、また、盾にはひび割れひとつない。ただ、その部分だけが穴となっていた。武士は矛を引くことも押すこともできず、やむなく矛を手放した。
静かに、武士は言った。
「このような素晴らしい等級の武具が出回れば、戦は長引き、死者が増えるばかりであろう。ならば、いっそ盾を貫通するように作らせれば、つまらぬ戦はいずれなくなると言えよう」
当時の職人たちは卓越した腕を持ち、戦場には最高級の武具があふれ、幾度となく殺戮の手助けをしていた。
盾と矛を試したあの武士の言葉は風に乗って広まり、職人たちはそれに感銘を受け、盾をあえて貫通するように作り始めた。
その結果、死者は増えたものの、戦の決着は大いに短縮されたということである。