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#ろふまお
やん
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#年齢操作あり
んぽちゃむ
65
kid視点─────
翌朝起きた時、不破さんは僕の隣に居なかった。いつもはある温もりが布団から消えていて、その寒さで目が覚めた。
隣にいないことに、ほっとしたのか、それとも残念だったのか。自分でもわからないまま、視線だけが無意識に空いたスペースをなぞる。思い出したくないはずの夜ほど、鮮明に蘇るものだった。
それにしても違和感を感じた。彼は、僕が起きる前に起きたことなんてなかったから。いつもとは明らかに違う、最終日の今日。抑えきれない不安と、期待のような幸福感もあるような気がした。
リビングに行こうとして布団を剥がすと、そこでようやく、僕はズボンを履いていない事に気付かされた。
あっそうか、昨日……。
ふと昨夜の営みを思い出し、胸がぎゅっと苦しくなる。
彼が吐露した胸の内は、想像以上に苦しいものだった。自分に向けられていた感情の重さを、ようやく知った。
自分はただ欲を発散したいがために使われている、とさえ思ったくらいだ。そんなことを考えたことを恥ずかしいくらい、彼は自分に真剣だった。
彼と釣り合うような大きさの愛は抱えてはいないが、それでも僕も、命を助けてくれた彼に恩があり、彼に恋心を抱いているという自覚も持てた。
感謝してもしきれない。だから不破さんには、この生涯をかけて償わないとな。
丁寧に畳まれた自分のズボンが、クローゼットの棚に入っていた。きっと不破さんが畳んで入れてくれたのだろう。どこまでも完璧な人だ。
脚を通し、寝室の扉を開ける。するとその瞬間、ドア越しに不破さんの声が聞こえた。聞く限り、どうやら誰かと喋っているようだ。
おそらくこんな朝に誰かが尋ねてくることは考えにくいため、電話だろう。よく耳をすまして会話を聞く。
「……いやほんとに今日は、……」
「……明日ならいくらでも出るんで、……いやぁ……」
「何とかできないんすか……」
なんか揉めてる。
会話の内容なんて聞こえないのに、そう分かった。 言葉の途切れ方とか、曖昧な相槌とか。 ああいうの、だいたい良くない時にするものだ。うまく話が進んでないのは、なんとなく分かった。
「はぁ……分かりました。……はい、はい、……了解す、」
ため息が聞こえ顔を見ると、スマホを乱暴に机に置き、頭を掻きながら俯いていた。腹を立てているのはもちろん、なんだか落ち込んでいるようにも見えた。
一歩進むと、床がギシッと音を立て、それに気づいた不破さんが勢いよくこちらに目を向けた。
その一瞬、とても悲しそうな顔をしていたように思う。
「晴……起きとったん?」
「いや、今さっき起きたばっかです」
「……ごめん、うるさかったな」
「別に不破さんのせいじゃないですから」
「はは、ならええけど…………」
どんな言葉も、今の彼には響かない。寂しそうに床に向けるその笑顔が、妙に僕さえも苦しめた。電話の内容を聞くに聞けず、その場で目を泳がせていると、再び彼の乾いた笑いが聞こえた。
顔をあげた彼が、虚ろな目で僕を見ていた。
「気になるんやろ?今のはなし」
「いや、でも無理に聞こうとは……!」
「ええよ、どうせ言わなあかんことや」
「……なんの電話でしたか」
「今日出勤せなあかんくなった」
何となく、そんな予感はしていた。そんな予感がしていたから、聞けなかったのかもしれない。現実を突きつけられても、受け止められる気がしなかったんだ。
紆余曲折あって彼のそばに居たいと願ったのに、ようやく真っ当に生き直そうかと思っていたのに。尽く邪魔ばかり入る。人生なんて所詮こんなもんだ。呆れてしまうな。
「……そうでしたか」
「ほんまにごめん、晴」
「言ったでしょ、不破さんは悪くないんですって。ほら、準備してきてください」
無理やり笑顔を作り、手をパンと叩いて空気を変えようと試みる。何も変化なんてしないのに、不破さんは僕の思いを汲み取り、寝室に服を着替えに戻った。
リビングに取り残された僕は、笑って使い物にならない膝を叩き、キッチンに向かった。何かしていないと、ショックで泣き出してしまいそうだった。
深く考えないように。情けないそんなことだけを頭において。
漆黒のスーツに身を包み、麗しいご尊顔を見せつけるように髪の毛を立ち上がらせ、お客様の声をよく聞く耳に飾りを纏わせて。彼はため息をつきながら、革靴に足を入れる。
「早めに帰ってくる」
「うん、……待ってますね」
「……ありがとう」
僕に手を振り、彼は扉を閉じた。ひとり取り残された僕には、彼が帰るその時を待つことしか出来ない。
会話がなくとも人の気配を感じさせてくれた部屋が、今はとても寒かった。たった一週間で彼に染められた僕は、ひとりで暮らしていた頃がもう思い出せない。
あのころ僕は、どうやって暮らしていたんだっけ……。
お読みいただきありがとうございました。
長らくサボってしまい大変申し訳ないです💦とにかく書く気分になれず、ずっと放置してしまいました。そんなことしてる間に他界隈にも多く手を出し、余計気持ちが入らない状態でした😭
黙れって感じですね言い訳すんな
必ず完結させたいという意思はあります。どうかこの大馬鹿者の作品を、見ていただきたいです🙇♀️
いいねコメント、お待ちしています。
コメント
2件
えー!!やんやん久しぶり!!!まじでいつ見てもストーリ性面白いし文字に起こすの上手すぎて尊敬🫵🏻🥹
うわああ…おかえりなさい、やんさん🥺💔 晴くん視点、すごく切なかったです…。朝起きたら隣にいなくて、自分でも「ほっとしたのか残念なのか分からない」って感覚、すごく共感しました。ズボン履いてないことに気づくところで昨夜を思い出して、胸がぎゅっとなる感じ、伝わってきたよ。 それに「僕も命を助けてくれた彼に恋心を抱いてる」って自覚できたのに、最終日なのに不破さん出勤しなきゃいけなくなって…「何かしていないと泣き出しそうだった」ってところがすごくリアルで、私も切なくなった。 最後の「あのころ僕はどうやって暮らしていたんだっけ」がじわじわくる…🥀 完結まで待ってます、頑張ってくださいね!!