昔、最強と言われた2人組がいたんだ。問題児だけど、その実力は本物でね。2人の前に遮るものなどないと言わんばかりだった。…え?その話をもっと聞きたい?…仕方ない、いいよ。___これは、2人の青い春の話。
楽しい日常。
五月蝿いくらいに鳴くセミ。青々と茂る葉。美しく水々しい青空。最強に成った俺。少し痩せた親友。そう、いつもと変わらない。去年と同じで。去年と__
「君にならできるだろ、悟。」
カワラナイ………?
「…五条」
生き残った伊地知と硝子との話し合いが終わった彼に、硝子が話しかけた。
「どした?」
「…夏油は?」
「!」
彼はその問いを一瞬で理解できた。”夏油の体はどうだ”ということだ。
「…肉体は、全部傑のだったよ。百鬼夜行の時と変わらずの服装で口調も声も優等生ぶったあの笑顔も、何もかもが一緒だった。でも魂が違った。肉体も既に死んでる。あれはもう、死体の中に別も魂が入ったゾンビに過ぎない」
「…そうか」
彼が問いに答えると、硝子は静かに返事をした。
「…もし、まだ生き返る可能性があったら、お前は試すか?」
「いいや?試さないよ」
「…意外だな、即答でやると答えると思ったんだが」
「死者蘇生が出来ちゃったら、この世界終わるでしょ」
「まぁ確かにな」
「……それに、心の底から笑えないこの世界にまた連れ戻す とか、そんな残酷なことできるかよ。流石に僕もそこまで鬼じゃない」
「…」
「…」
沈黙が続いたが、少しして硝子が口を開いた。
「…五条、死ぬなよ」
「勿論!だって僕、最強だしね」
「天晴れだ五条悟。俺生涯お前を忘れることはないだろう。」
あ〜ぁ、 負けたか。硝子との約束破っちゃった…。でもまぁいいや、硝子がこっちに来た時に謝ろ。早く眠りたい…。
「最後くらい呪いの言葉を吐けよ」
ザシュッ
「…」
人なんて今まで沢山殺してる。死体も沢山見てきた。呪詛師を殺す事に、別に罪悪感を感じた事はない。だから今回も大丈夫。「呪詛師を殺す」別に珍しい事でもない。いつものようにすれば大丈夫。
「待ち受け変えた?」
大丈夫。
「外で話そうか、悟」
大丈…。
「悟」
………。
大丈夫だと言い聞かせる程、親友の記憶が頭に浮かんでくる。そして彼はいつの間にか、親友の前に立っていた。
「………傑」
近い距離じゃないと聞こえないくらいの声で、親友の名前を呼ぶ。
聞こえない虫の声。葉の落ちた木々。深い空。最強の彼。呪詛師になった親友。
季節は正反対で、2人の状況は少し変わった。
(せめてあの夏で眠りたかっただろうに…)
そう思いながら、彼は親友を抱きしめた。
「………ごめん」
長い沈黙から出てきたのは、謝罪の言葉。その言葉にどんな重りがあろうと、他人には分からないだろう。あの素晴らしく眩しい、幸せな青い春は、2人にとってかけがえのない宝物だから__。
そして彼は、南で親友と再会する。彼は悪態を吐いていたが、その態度の裏には、親友と再会できた事に対する喜びがあった。そうして悟と傑は、天国とも言えるそこで、笑い合い、多くの事を話した。2人は幸福に包まれ、幸せそうな顔を浮かべていた。
あの、青い春のように____。
コメント
4件
実際は五条が居るとこは“空港“、まだ可能性はあるよね。 死亡の伏線が沢山あるけど。
(主)泣けるやんけーーーー!!!!!!確かに夏五の喧嘩が始まる時硝子さん逃げてた……それを分かってて夏五を見てたのか???キラリン✨次回作も楽しみにしてるぞ!!!!!