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#学園
大正
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花月夜れん
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#現代ダンジョン
夜鐘
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同時刻 天界
三蔵達の目の前で、観音菩薩の口から吐き出された血が地面に彼岸花を咲かせる。
パキパキッと音を立てながら観音防壁にヒビが入り始め、弥勒如来は観音菩薩の元に走り出そうと、一歩踏み出していた。
「観音菩薩っ!!!」
「来るっ、な!!!弥勒如来っ!!!」
「っ!!!」
観音菩薩は力を振り絞って叫び、弥勒如来は足を止め、離れた場所で地面に力なく倒れる。
ドサッ…。
「嘘…だろ?観音菩薩っ!!!」
三蔵は自分の目の前で起きた光景が信じられず、頭の中がぐちゃぐちゃに搔き乱されていく。
シヴァの巨大な手は観音菩薩の髪を乱暴に掴み、持ち上げられた状態のまま、シヴァの手が振り下ろそうとしてるのが分かった。
「やめろおおおお!!!シヴァ!!!」
ドゴォォンッ!!!
ゴキッ!!!
弥勒如来の叫び声と同時に、観音菩薩の体が地面に力強く叩きつけられる。
地面に叩きつけられた衝撃で、観音菩薩の手足が折れ、苦痛の叫び声が交差し、その姿は神とは呼べない程に痛々しい。
折れた腕の骨が皮膚を突き破り、綺麗な黒髪に血液が付着してべとつき、細長い指すらも逆方向を向いてしまっている。
泡姫や哪吒は観音菩薩の姿を直視する事が出来ず、口元を押さえながら視線を逸らした。
「酷い事するな…、同じ神がする事じゃないよ」
「シヴァって野郎は、頭のネジが一本外れてやがる。そう言う野郎を、この手で叩き潰す瞬間が一番楽しい」
「悪趣味過ぎません?」
【なんと、哀れな姿ダ】
風鈴が羅刹天に引いているとシヴァの冷血な声が響き渡り、弥勒如来の目から静かに涙が零れ落ちる。
彼の中で幼少期の観音菩薩との思い出が蘇
がり、共に過ごしてきた日々、観音菩薩が成長する過程までもが、弥勒如来の中では愛おしくて尊い思い出ばかり。
弥勒如来にとって、この世界で一番大切で美しい存在が、シヴァの手によって壊されてしまった。
「何なんだよ、これ。何で、こんな酷い事が出来るんだよ!?何が哀れだよ、お前が観音菩薩の事を傷つけたんだろ!?」
【何故、貴様が我に怒ル?この世界は我のモノ、邪魔する者は排除すル。当然の事だろウ?】
「本気で言ってんのか、テメェ。神なら何しても許されるのか、そうじゃねーだろ!!!」
「「三蔵…」」
三蔵の怒りの言葉を聞いた沙悟浄と猪八戒の声が重なり、三蔵は姿見えないシヴァの手だけを睨み付けた。
『如来』
「っ!!!」
『如来、僕の声が聞こえる…?』
弥勒如来の頭の中に語り掛けていたのは観音菩薩本人、弥勒如来はすぐに反応する。
『観音菩薩っ、やはり俺も残る。お前一人で死なせる訳にはいかない』
『如来、君とこの世界で出会う事が出来て、本当に良かった。君と出会えた事が、僕にとっての幸運だよ』
『それは俺の台詞だよ、観音菩薩』
『僕の体にはもう、神力が残り少ない。シヴァの体に傷を残す事だけは出来る筈、君は三蔵達を連れて行ってくれ』
観音菩薩の言葉を聞いた弥勒如来は、観音菩薩が何をしようとしているのか分かった。
自分の頭の中に語り掛けてきているのも、三蔵とシヴァの二人に聞かれないようにしているとも。
『観音菩薩、俺はお前の事を愛してる』
『今、その言葉を言うのはずるいよ…、如来』
『俺もすぐそっちに行く。俺が来るまで、アイツ等と一緒に待っててくれ』
弥勒如来が心の中で呟いた瞬間、観音菩薩の体の下から金色の梵字が地面に浮かび上がり、シヴァの巨大な手に光の鎖が巻き付く。
ジャキンッ…!!!
「観音菩薩の体が光ってないか?一体、何が起きて…」
「三蔵、転送札を使え」
如来の言葉を聞いた三蔵は、観音菩薩の姿を目に焼き付け、泣きそうになるのを堪えて頷く。
「下界転送!」
三蔵はそう言って、下界転送用の札を破ると三蔵達の前に大きな鳥居が現れ、鳥居の中に歪みが生まれた。
観音菩薩は顔を上げて三蔵に微笑み、観音菩薩の優しい笑顔を見た三蔵は口を開く。
「アンタは俺が小さい頃から、俺の事を見守ってくれた。観音菩薩、アンタの願いを叶えるよ。行こう、みんな」
涙を流す三蔵の後に続いて沙悟浄達も鳥居を潜り、弥勒如来が最後に潜ると下界転送用の鳥居が姿を消すと、シヴァが怒りの言葉を吐きながら姿を現す。
【貴様アアアア!!!死にぞこないの分際デ、我が作り上げた運命に逆らうカ!!!】
「当たり前だ…よ、逆らうに決まってるだろ!!!」
ドンッ!!!
【ッ!?】
観音菩薩が叫んだ瞬間、シヴァの背後に巨大な観音様が現れる。
「はぁ、はぁ…っ、君を殺す事は出来なくても、足止めは出来る…。僕の命と引き換えに」
【何をする気ダ、貴様】
「無慈悲観音神革」
呪文を唱えると穏やかな表情をしていた観音様の表情が怒りの表情に変わり、金色に光っている体も紅色に染まり、シヴァの体を両手で叩き潰す。
バチーンッ!!!
ボキボキ、ブシャアアアッ!!!
蚊を殺すように両手で叩き潰されたシヴァの両腕の骨が折れる音、観音様の両手の指の隙間から血が漏れ出し、地面に大きな血溜まりを作る。
無慈悲観音神革、文字の如く思いやる気持ちのない・事を神はしてはならない。
自分の命と引き換えに守りたい存在がおり、神と言う立場を捨てる覚悟が出来ているかが、無慈悲観音神革を使用する時の条件である。
悪神と化す技でもあり、この技は観音の称号を与えられた神のみが使え、技を発動させる条件もあり、観音菩薩は条件を満たしていた。
観音菩薩の指先が黒く染まり、ボロボロと黒い破片が舞い、徐々に足先から上半身にかけて体が破壊されていく。
条件を満たしていたが、観音菩薩の体には微弱な神力しか残っておらず、悪神となる前に体の崩壊が始まってしまっていたのだ。
観音菩薩は自身が死ぬ事を、この身を挺して実感し、これまで出会ってきた人間や妖達、神達の
顔が彼の脳裏に浮かぶ。
全ての人達が幸せになれる世界を思い描き、一人の少年が神となり、世界の未来を変えようと動き、身を挺して人の子を下界に送り出した。
観音菩薩の中で何一つ未練はない、そう本人も思っていた筈なのに、一人の男の顔が浮かんだ。
この瞬間まで、観音菩薩は彼に抱いていた感情を殺し、気付かないふりをし続けて来ていた事は誰にも話さず、観音菩薩の心の奥底に隠していた。
尊敬と憧れの目で見ていた筈なのに、いつの日かその感情は恋情に変わり、人の子よりも愛してしまっていたのか。
『愛してる』
その言葉を彼から言われるまで、言われてもなお素直に答えられなかった気持ち。
「如来…、僕も愛してるって言えば良かったな…」
そう呟いた瞬間、観音菩薩の体は黒い小さな欠片となって消え、シヴァの体を押さえつけていた観音様も同じように姿を消す。
ドサッ!!!
地面に折れていない方の手で体を支え、シヴァの怒りは頂点に達している。
【あの糞神ガ、我の体を傷付けおッテ!!!許サナイ、許サナァァァァイ!!!】
ドコドコドコォォォンッ!!!
地面についている方の手に力が籠り、誰もいない天界の地面を破壊し、ブチッと何かが切れる音が聞こえる。
シヴァの怒りは更に爆発し、シヴァの体に紫色の炎が纏われた。
***
同時刻 下界
武器化した黒風を掴んで現れた人物は、釈迦如来と阿弥陀如来の声を聞いてほくそ笑む。
「「阿修羅…っ!!!」」
「よぉ、釈迦如来。こうして顔を合わせるのはいつぶりだ?」
「貴様は六道の神だろう、下界に降りて来る必要は…、っ!?」
釈迦如来が話をしている途中だが、阿修羅は容赦なく洋風の剣を釈迦如来に向かって振り下ろす。
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
阿修羅の攻撃を防いだのは、化け物姿と化した毘沙門天が腕を硬化させて、釈迦如来に攻撃が届かないように妨害に成功したかと思われた時。
「黒煙」
「っ!?」
呪文らしき言葉を呟くと阿修羅の体が黒煙に包まれ、釈迦如来と毘沙門天をも覆う程の量の黒煙が現れ、煙に紛れて阿修羅は釈迦如来の背後を取っていた。
ズシャッ!!!
「ガハッ!?」
表情を変えないまま修羅王は釈迦如来の背中を斬り付け、傷口から鮮血が噴き出し、体を支配されていた悟空達は解放される。
阿修羅に斬られた釈迦如来は黒煙の中から脱出し、息を切らしながら体勢を整える姿が阿弥陀如来の視界に入った。
「しゃか、にょらい?釈迦如来!!!」
ドンッと地面を踏みつけた阿弥陀如の体は宙に浮き、釈迦如来の元に向かって急上昇して行く。
阿弥陀如来が悟空の側を離れたのを確認してから、小桃は悟空の元に走り出したが同じタイミングで星熊童子も走り出していた。
一気に阿修羅の元まで辿り着いた弥勒如来は、釈迦如来の傷付いた体を見て、阿修羅の事を強く睨み付ける。
「釈迦如来に何すんのっ⁉釈迦如来がっ、私達にとって大切な存在だって分かってるでしょ?それなのに、どうして⁉」
「はぁ?コイツが位が高いのは分かってるさ。仏教を世界に広めたって事くらいだろ?アンタがした善意は」
「それ、本気で言ってんの?阿修羅」
「聞こえてなかったのか?広めただけだろって」
ブンッ、キィィンッ!!!
怒りに身を任せたまま阿弥陀如来は、阿修羅に向かって刀を振り下ろすが、黒煙の紛れて攻撃を避けた。
「お前が釈迦如来を崇拝してんのは勝手だ、私等は崇拝される立場にいるしよ。崇拝してる神が悪事を教えれば、それは信者にとっては正義になっちまう」
「アンタと釈迦如来は対等な立場じゃない、身の程を弁えろ」
「今更、立場も糞もねーだろうが。現実を見ろよ、この世界は今どうなってんのかよ」
「何が言いたいの」
「この世界に神はいないあ、居るのは煩悩にまみれた者だけだ」
黒煙の中から顔を出した阿修羅は釈迦如来の背後に現れ、迷いなく刀を振るう。
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
釈迦如来の前から黒く細長い腕が伸び、振り下ろされた刀を弾き、毘沙門天は口を大きく開ける。
開かれた口から眩い光が放ち、ものの数秒で阿修羅に向かって光のビームらしき物が放たれた。
ビュンッ!!!
毘沙門天の口から出たビームを瞬時に避けるが、避けきれなかった長い髪が燃える匂いが漂い、本人は楽し
そうのか口角を片側だけ上げる。
「アハハハッ!!!戦いはこうじゃねーとな。釈迦如来、アンタは昔からそうだろ?常に守られる立場に居て、高みの見物してたよなぁ」
「釈迦如来はお前とは違う、神秘的な存在なの。血で汚れる事なんかしなくて良い、釈迦世来は命令するだけで良い」
「くだらねぇ、マジでくだらねぇ」
「今まで口を出して来なかったくせに、今頃になって口を出してくんな!!!」
「この世界もよ、もう終わりだろ?だったら、今まで溜まってた不満を言ったって、罰は当たらねぇだろ?ほら、空を見てみろよ」
阿修羅に促されるまま阿弥陀世来は空に視線を向け、空に大きな亀裂は入り、黒い小さな埃のような物が舞い落ちていく。
シヴァの使いの者と釈迦如来の作り出した軍団同士が、黒い小さな埃が舞う中で刃を混じり合わる中、阿
修羅と釈迦如来の視線が合う。
釈迦如来は阿修羅に斬られた傷に触れ、指先に付着した鮮血の生暖かさを感じ、釈迦如来の瞳に感情が写り込む。
「そうか、怪我を負えば痛かったな。傷口が出来れば血が流れ、戦い合えばどちらかは死んでしまう。それは弱いから?それは人間だから?それは何者でもないから?」
「何言ってんだ?お前」
「釈迦如来?」
「…」
阿修羅と阿弥陀如来は釈迦如来の様子がおかしい事に気付き、釈迦如来に声をかけるが何も答えない。
「すっかり忘れていたよ、私が王子だった事の記憶を。人間と言う生き物に失望した事を、ここに居る奴等を全員殺せば良い話だったなぁ」
ガクンと釈迦如来の首が右側に傾き、赤色の瞳が漆黒の闇色に染まり、口角が横に広がるような笑みを浮かべる。
すぐに阿修羅は釈迦如来から距離を取り、釈迦如来の背後に出来た大きな黒い穴に視線を向けると、中から細長い糸が現れ、釈迦如来の体に巻き付く。
まるで人形劇に出てくるような人形のような動きをし、釈迦如来の意志がここにない事を悟った。
『異端人めが、神の真似事をするな』
釈迦如来ではない謎の声が釈迦如来の口から聞こえ、阿修羅と阿弥陀如来は自身の耳を疑うが、聞き間違えでない事はすぐに分かる。
「な、なに?貴方、誰な…」
ズシャッ!!!
釈迦如来に近付こうとした阿弥陀如来の腹に、鋭い刃が先端についた錫杖が貫き、阿弥陀如来の口から血液が噴き出す。
「ガハッ!?な、何で?釈迦如来…?」
「諦めな、阿弥陀如来。お前の好きな釈迦如来はいない、居るのは操り人形になった釈迦如来だけだ」
「釈迦如来がいない?何を言ってるの?釈迦如来はここにいるじゃない…っ」
阿修羅の言葉を聞いた阿弥陀如来の目に涙が溜まり、阿修羅が言った言葉を信じたくなかった。
ズポッと阿弥陀如来の体から錫杖が引き抜かれ、傷口から血が垂れ落ち、自分の意志で釈迦如来の元に戻った錫杖が光り輝く。
「天上天下唯我独尊」
そう言って釈迦如来が手を叩くと、空に浮かんでいた太陽が黒く染まり、降りて来た太陽は釈迦如来の背中に宿る。
ジャキジャキッと音を立てながら様々な形をした錫杖が無数に現れ、釈迦如来の背中から六本の腕が生え、空中で胡坐の体勢で座った。
「天上天下」は天上の世界と地上の世界、すなわち大宇宙のすべてを指す言葉であり、「唯我」は「ただ我のみ」、「独尊」は「独りとして尊し」を意味する。
字義通りに訳すと「天の上にも天の下にも、我ただ一人として尊し」となり、「自分が一番偉い」と言う意味で使う言葉ではない。
この言葉は釈迦如来が、作り出した言葉であり、彼の強力な技でもある。
釈迦如来の前に謎の生物達は膝をつき、その姿は自分達の王に忠誠を誓う臣下のよう。
太陽を奪われた空は灰色に染まり、暖かさも寒さも何もない空間が広がり、その光景を見ていた白沢と鳴神の額に冷汗が流れた。
「釈迦如来様の魂が、完全にシヴァの物になってしまいましたね」
「こう言う事か?今、釈迦如来の体の中にはシヴァが乗っ取ったって事か?」
「えぇ、シヴァは釈迦如来様の体を奪う事に切り替えたので…、鳴神様!!!」
「っ!!!」
白沢の言葉を聞いた鳴神は殺気を感じ、後ろを振り返ると黄泉大津神が鳴神に斬り掛かろうとしていた。
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
鳴神は瞬時に槍を構え、黄泉大津神が振り下ろして来た刀の動きを止めると、黄泉大津神は鳴神の事を睨みながら口を開く。
「今の話はどう言う意味」
「伊邪那美命…」
「その名前は捨てたの、二度とその名を呼ぶな、私の息子が操られてる?そんな訳ある筈がないだろうが!!!」
怒りの感情に身を任せたまま、黄泉大津神は再び、鳴神に向かって刀を振り下ろす。
ブンッ、キィィンッ!!!
鳴神は黄泉大津神の攻撃を受け流し、彼女に真実を話すかどうか躊躇ってしまっていた。
美猿王と釈迦如来の二人が、全ての出来事の黒幕であるシヴァに争うように仕組まれている事を。
この事を神を、この世界を恨んでいる黄泉大津神に話せば、彼女の理性を崩壊させてしまう事を鳴神はよく分かっていた、
「私の息子は操られてなんかいない、そんな筈がないっ!!!」
「二人を争わせて、死なせるように仕組んだ神が居る。この世界は、シヴァって野郎が支配してる状態で…」
「は?」
「こんな事、お前に言うか迷ったよ。だけど、俺達と一緒にシヴァを殺せば、美猿王は…」
黄泉大津神の表情を見た鳴神は、話した事をすぐに後悔する事になる。
数百年前のあの日、痩せ細った伊邪那美命の手足に手錠が付けられ、伊邪那岐命に抱かれそうになっていた時の表情だったからだ。
絶望に満ちた表情をもう二度、彼女にさせないと誓った筈なのに、自分の言葉でその表情にさせてしまった事を後悔した。
「私が神を嫌っているのは、お前がよく知っているだろ!?あぁ、神の側に居たから頭がおかしくなったんだな」
「伊邪那美命…、お前を傷付けるつもりはなかったんだ」
「あぁ、早く殺してあげないと。安心しろ、息子の世界で幸せになれるから」
そう言った黄泉大津神の背後から、沢山の骸骨達が地面の中から現れ、一斉に鳴神に襲い掛かる。
崖の間に建てられた仏像の下から邪の髪を掴んで歩いてくる美猿王の姿が白沢と悟空の視界に写ったからだ。
美猿王の体から神々しい光が纏われ、首元の金色のチェーンのネックレスが輝き、薄暗くなった世界を明るく照らす。
「ハハッ、爺さんが俺に見せた映像通りになってんな」
「貴方は何を見て来たのですか、この国に訪れてから。少し雰囲気が変わったように見えます」
「シヴァって野郎をこの手で殺し、残ったのは俺とお前だけって事を」
白沢に声を掛けられた美猿王は、白沢に視線を向けずに悟空に視線を向け、ゆっくりと口を開いた。
美猿王に髪を掴まれている兄である邪の姿を見た天は、温羅との戦いの手を止めて叫んだ。
「兄者っ!!!」
「俺が留守にしてる間に、面白い事になってんな。いつの間にか、悟空や釈迦如来共が来てやがる。それに気味の悪い化け物までうろついてんな」
「王、兄者の事を殺したの?」
「さーな、自分の目で確かめたらどうだ?天」
そう言って、美猿王は天に向かって乱暴に邪を投げつけ、地面に落ちないように慌てて駈け寄る。
「兄者っ、兄者っ!!!しっかりして、あに…っ、ゴホッ…!!!」
意識を失っている邪の名前を呼んでいた天だったが、込み上げてきた血を吐き出すと、体が小刻みに震え出す。
その様子を見ていた悟空は、天の体に何が起きているのか察しがついていた。
天邪鬼の二人は美猿王から血を貰い、忠実なる僕として美猿王に仕えて、彼からもそれなりの愛情を貰っていた筈だろう。
美猿王への忠義が薄れてしまえば、二人の体内にある美猿王の血液は、強大な力から強力な毒に変わり体を蝕み始めた。
「王、お帰りなさい」
「夜叉、状況を説明しろ」
「あの化け物共の正体は分かりませんが、神力の宿った武器しか攻撃が通らない状況です」
夜叉の簡単な説明を聞いた美猿王は、悟空だけを捉えている。
悟空も同じように美猿王だけが視界に入ってたが、星熊童子が小桃に向かって行く姿を見た悟空は、声を上げた。
小桃を自分の元に向かって来ないように阻止する。
「来るな、小桃!!!星熊童子が来てぞ!!!」
悟空の声が小桃に届いた時、星熊童子は小桃のサイドに現れ、小桃に向かって刀を振り下ろす。
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
小桃は反射的に星熊童が振り下ろしてきた刀を瞬時に受け止め、刃同士がぶつかり合って火柱が上がる。
「久しぶりだねぇ、お姫様。会いたかったよぉ」
「会いたいって言うのに、小桃に敵意丸出しなんだねっ!」
キィィンッ!!!
星熊童子が振り下ろしてきた刀を弾き返すと、星熊童子は天界から持ち出した銃を取り出し、小桃に向かって引き金を引く。
バンッ、バンッ、バンッ!!!
パキパキッ!!!
放たれた弾丸は小桃の目の前で凍り付き、冷たい冷気を漂わせながら砂の地面に静かに落ちる。
「うーん、不思議な刀だねぇ。弾丸が凍っちゃったし、そんな刀持ってたっけ?」
「鬼のお姫様は知らないよ、この刀は大事なの」
「ふーん、大事な物なら守らないとだよねぇ?みんな、お姫様は私が殺すから手を出したらだめだよ?」
星熊童子は嬉しそうに笑いながら、仲間の鬼達に伝
え、クルッと小桃の方に振り返って口を開く。
「私は王が好き、王を天竺に行かせたい。お姫様は悟空が好き、悟空の事を天竺に行かせたい、そうでしょ?」
「そうだよ、小桃は悟空を天竺に送り届けたいよ」
「だったら、どっちの愛が正しいか証明しよ?どっちの愛が報われるのか、どっちかが死ぬまで殺し合おう?」
そう言って、星熊童子は小桃の足元に銃を投げてから、自分が持っていた銃の引き金を引いた。
コメント
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わあ…観音菩薩の最期、あまりに重すぎます。弥勒如来への「愛してる」の告白が、あの状況で初めて交わされるなんて。ずっと♡♡♡てきた気持ちを最後に自覚して、それでも「言えば良かったな」で終わってしまうのが切なすぎる……。そして釈迦如来がまさかシヴァに体を乗っ取られるとは。この怒涛の展開、次が気になりすぎます。連載中とのこと、本当に楽しみにしています。百はな🍑さん、ここまで物語を紡いでくださってありがとうございます。