楓side
「はぁっ、はぁっ」
喘ぐような辛そうな息が聞こえてきた。
教室を見回すと、3列右の所にさっきのもみじちゃんが辛そうに胸を抑えてた。
えっ…?
先生は気づいてないのか、黙々と授業が進んでいく。
どうするか迷っているともみじちゃんの息がさらに苦しそうになって座っていながらもフラフラしていた。
ガタッ
その音を聞いて反射的にあの子の元に駆けつけて、頭を打つのを防いだ。
流石に先生も気づいたようで、丸い目でこっちを見つめてくる。
「ほ、保健室連れてきます」
保健室の場所なんか知らない。でも、口が滑ってしまった。
もみじちゃんを抱き上げて急いで廊下を走った。
運良く、直ぐに保健室と書かれた部屋を見つけた。
ガラッ
「失礼します」
「誰もいない?!」
部屋を見回しても誰もいなかった。
とりあえずもみじちゃんをベッドに寝かせたけど、腕の血管を触っただけで分かるくらい激しく脈が乱れてた。
「なんでだろう」
両親と血液循環科を回った時の記憶を蘇す。
早くしないと、危ない状況かもしれない…
そう考えていた時…
ガラガラ
「あら、どうしたの?」
「あ、失礼します。えっと1年1組の」
「西山もみじちゃんね」
えっ…?
この学校に数えきれないほど生徒がいるはずなのになんで知ってるんだろう…
「あとはこっちで対処するから戻っていいわよ」
「っでも…」
え?今、俺、《でも》って言ったよな…
保健の先生がなんとも言えない顔でこっちを見つめてくる。
「僕、昨日ここに転校してきたんです。もみじちゃんを見た瞬間、一目惚れしたんです。だから、だから助けたいんです!」
俺は助けたいんだ…!
「いいけど、西山さんに怒られても責任取らないからね」
怒られる?
どういうことか考えてると、先生が引き出しを開けて、薬を取りだした。
「西山さんね、持病を持ってるからこの薬を口に入れてあげて、少し休ませてあげれば、大抵は大丈夫よ」
そう言いながら先生は手馴れた手つきで舌の下に薬を入れた。
「それって、狭心症のニトロペン(発作での心臓の負担を和らげる薬)ですか?」
「そ、そうだけど…なんで知ってるの?」
先生が困ったような不思議な顔を向けてくる。
「両親が医者で小さい頃からよく病院の見学させてもらってて…最近は色々な本とか読みあさってて、その薬について知りました。」
「随分熱心なのね、応援してるわよ」
「ありがとうございます」
「先生職員室戻るから西山さん起きたら教えてくれる?」
「分かりました。」
「じゃぁよろしくね。ドアに職員室にいることを知らせる紙貼っとくから、起きてくるまでゆっくりしててね」
「ありがとうございますっ」
ガラガラ
先生の優しすぎる気遣いにより、もみじちゃんと二人きりになれた。
手首の脈も安定してきて、ほっとした。
❖
❖
❖
❖
❖
❖
❖
「んっ」
「あ、大丈夫?」
周りを不思議そうに見回して、ようやく状況を理解したのか、こっちを見つめてきた。
「なんでっ…
なんで助けたの?」
「なんでって…」
「タヒねたかもしれないじゃん」
「え?」
「何も知らないくせに…もう辛いんだょぉっ」
もみじちゃんの頬を涙が伝る。
「っ好きなんだよ」
「…」
「もみじちゃんが大好きだから助けた」
「うそっ」
「俺と付き合ってください」
…あっ…
「私も好きだったよ…よろしくお願いします」
「ありがとうっ」
思わずもみじちゃんに抱きついた。
そして、気がついたら2人で唇を重ね合っていた。
「っハァッハァッ」
もみじちゃんの苦しそうな息を耳にして我に返る。
「ごめん、つい…」
「ゃ、やめないで欲しかった//」
涙目で言われた。
「さ、誘うなよ。彼女できるの初めてなんだから」
「…!!そうなの?あんなにモテるのに?」
「まぁね、先生呼んでくるよ」
「ぁーぃ」
ガラガラ
「谷口さん…?」
「その呼び方嫌いだな〜」
「楓くんっ//」
「どーした?」
「助けてくれてありがとう//」
「無事で良かったよ」
そう返して職員室に向かった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!