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ーウパパロン目線ー
ハァッハァッ……”
俺は涙を手で無理矢理押し込み、ただ走る。
勢いよくドアを開け
「先生、彼奴は無事なんですか」
そう質問した。
先生は
「命に別状はありません。ただ…………」
と言った。
俺は頭を打つようにへたり込み、頬に涙を蔦らせた。頭に激痛が走る。でもそんなのが関係無いくらいに、俺はその事実を受け止め切れなかった。
「あの時、ちゃんと喋っていれば」
━━━━━━━━━━━━━━半日前
ー????目線ー
最近ウパさんが冷たい。と言うか直訳すると倦怠期なのだろう。私が何を言っても面倒くさそうに返してくる。
私何かしたかな、。
それでも私はウパさんの事が大好きで、構って欲しかった。ウパさんからすればどうしようもない盲目的存在何だろう。
「ウパさん。お話しましょ!」
私は元気にそう言う。でもそんな私を見たウパさんは、
「ごめん今編集中。と言うか編集も仕事のうちなの。仕事中話しかけて来ないで?」
と言われた。
1度視界が歪みかけたが、私は言う。
「最近、ウパさん冷たくないですか?本当に私の事好きなのか分かんないですよッッ、!!」
自分が思っているよりを大きな声を出し、ウパさんを怒鳴っていた。
そうするとウパさんは顔を歪ませ、
「この際だから言わしてもらうけど迷惑。お前の為にも仕事してるのに何なの。」
「ウザイんだよッッ!!!」
びっくりした。鳥肌が立ち、私の足は竦む。厳密に言えば震えているのだろう。
でもウパさんは私の事を気に停めずそのまま部屋を出ていった。
私は過去をフラッシュバックして、過呼吸を起こし、そのまま倒れ込む。
頭から血が抜けて行くのが分かる。寒い。けれど血が出ている部分のみはものすごく熱くて痛かった。
「頭、痛いなぁ…笑」
私が涙を流しながらも笑っていると、誰かがすぐに駆け寄って来てくれた。そして救急車のサイレンが聞こえる。
その記憶を最後に私は意識が遠ざかり、目を閉じた。
━━━━━━━━━━━━━━
ーウパパロン目線ー
最近、彼奴が何を喋って来ても全てが鬱陶しい。俗に言う倦怠期とやらだろうか。俺がそう思考を巡らせながら編集をしていると
「ウパさん、お話しましょ!」
そんな元気な声が聞こえる。正直うるさい。そんな無邪気に俺の前で笑わないでくれ。
俺は全て面倒いと思い、のらりくらり交わしていた。つもりだった。
「最近、ウパさん冷たくないですか?本当に私の事好きなのか分かんないですよッッ、!!」
そう俺が怒鳴られていた。
その瞬間、俺の頭の中でプツンと何かが切れた音がする。俺はすかさず言い返した。
「この際だから言うけど迷惑。お前の為にも仕事してんのに何なの?」
「ウザイんだよッッ!!」
と。
此処にはとてもじゃないがイライラが抑えられなさそうだから居たくなかった。俺はドアを乱暴にバァンッと閉めると自分の部屋に戻る。
その数十秒後、ドスンッと大きな音が聞こえたが俺は気にしない。どうせ彼奴がイライラして乱暴に扱っているだけだろう。そう思っていた。
数分後、突如に救急車のサイレンが聞こえる。どうせいつもの老人ホームだろうと思っていた。だからほっておいた。と言うか頭を整理する為にも俺は眠りたかった。
そうしてベットにダイブした俺の意識は暗転する。
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起きたのは村長、めめんともりの電話の着信でだった。何故家に居るのに電話を掛けているのか不思議だったが俺は話を聞くと同時に
「ぇ」と、頼りないセリフを吐き、電話を繋げたままだがスマホを投げ捨て走る。
「レイマリが倒れた。現在意識が不明。」
だと。その二言は俺を全力で走らせるのには充分すぎる内容であった。
道中は信号など気にしている暇が無かった。と言うか余裕が無いの方が正しいだろう。車に何度クラクションを鳴らされただろうか。だがそのクラクションすらも聞こえないようになっている俺の方が、余っ程彼奴、レイマリよりも盲目な奴なのかもしれない。
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ーレイマリ視点ー
起きれば見慣れない白い天井。私が目を開けたと知ると、髪の長い金髪の女性?は逃げる様に部屋を出ていった。何処かで見覚えがあった気がする。
そこからハァハァッと肩で息をして、涙を流している村民達が入って来た。私がキョトンと首を傾げて居ると、女性?が再度来て言う。
「レイマリ、お前は1ヶ月間ずっと眠ってたんだぞ」
と。やはりこの声にも呼び方にも聞き覚えがあった。メテヲさんだ。どうやら私は倒れた後、メテヲさんの勤務している大きな総合病院に運ばれたそう。まぁ家から1番近いのだから当然と言えば当然だ。
そして、私が1ヶ月間ずっと眠っていた。その事実に私自身も驚きを隠せずに居たのだが、突如、大きな嗚咽が静かな病室内に響き渡る。
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ーウパパロン目線ー
病院に着いた頃には俺は汗だくだった。
看護師が状況を察して、急いでレイマリの病室に案内してくれた。
俺は問う。医者ことメテヲに。だが俺はその時冷静さを失っていて、メテヲである事に気が付かなかった。メテヲはその俺を見るや否や普通の医者として、敬語で対応をして来る。
「レイマリさんは、命に別状はありません。けれども、いつ目覚めるか、本当に目覚めるのか。現在分かりません。」
俺はその言葉を聞いた瞬間。視界が歪む。そして涙など気にも止めず頭を打つようにへたり込む。頭が痛いのも気にならないくらいに、ただその事実を受け入れられなかった。
他の村民の視線が今の俺には鋭く突き刺さる。村民が何を言っているのかも耳に聞こえない。優しい事を言ってるのかも、それとも文句を言ってるのかも分からない。ただ1つ事実があるとするならばレイマリさんをこんな有様にしたのは紛れも無い俺だ。
「もっとちゃんと向き合えば良かった、倦怠期は理由になんざならない」
俺はそう泣きながら言う。メテヲに今日は帰れと言われ、家に帰るが食事もまともに喉を通ってはくれない。食べれたとて、すぐに胃酸となって吐き出す。
これじゃまるで俺が病人みたいじゃん。
レイマリさんは俺のせいで今も生死を彷徨って居る中で。
俺はその日から罪悪感に押し潰される日々だ。
何で俺が無事でレイマリさんが。そう自問自答する毎日。そんな毎日に意味なんかはっきり言って無かった。
俺は今日もレイマリさんに声を掛ける。勿論返事なんて帰ってこないし、担当医のメテヲは心配そうに俺を見ている。でも俺は俺が出来る最大限の償いをするんだ。
「レイマリさん!今日はさ〜〜〜だって」
徐々に増えて行く一方のクマも、何もかも気にならない程に俺はレイマリさんを気にしていて、それ以上の事なんて見当たらなかった。
「貴方が居ればそれで良い。」
いつも俺は最後にその言葉を言い、いつも同じ帰路を辿る。
1ヶ月くらい経った頃。そろそろ起きて欲しい。そう罪悪感が再び押し寄せて来た時くらい。村長からの電話が来た。レイマリさんに何かあったのかもと思い俺はすぐに電話に出る。
「レイマリさんが目を覚ましました」
!?
俺は走った。前回の様に涙を抑える必要は無い。逆に、笑顔で走った。
レイマリさんは俺を見ると「ウパさん、」
と少し申し訳なさそうな声で俺を呼んだ。
俺の罪悪感が無くなることは無いし、レイマリさんのトラウマについてもまだ教えて貰ってはいない。だけどそれで良い。俺は嬉しいのか、感情がぐちゃぐちゃで具現化する事は出来ないが、無言でレイマリさんに抱き着いた。
そうすると2人で、村民の存在も、ここが病室である事も全てを忘れ去るような感覚のまま嗚咽を出して泣いた。レイマリさんは子供のようにわぁぁんと泣いていた。
俺はレイマリとまた共に人生を歩むことになった。もう二度とお前を離さない。逆に離せって言ってもくっついててやる。レイマリさんの心の傷をまだまだ癒すことには時間が掛かりそう。だが、ゆっくりでいい。だって
「貴方が居ればそれで良い。」
俺の人生はレイマリさんの生きている事が何よりも最幸で愛おしい事だ。
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