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まだ空が青い夏のことだった。あの日はとても辛かった、何故なら国木田くんと喧嘩をして探偵社を追い出されたからだ。 あの日のこと
国木田「おい太宰!何故貴様は毎回自殺しようと、!」
国木田くんは怒りながら言っていた
太宰「生きる意味ってあるの?」
私はそう答えたのだそしたら国木田くんはこう言った
国木田「チッ…もういい一度出ていけ!」
と、それが私にとってかなり悲しかった
太宰「…わかった」
私は渋々返事をしたそして出ていった
国木田「…仕方が無い、太宰が悪いッ、」
そして今はとても幸せだ、何故なら国木田くんと同居出来ているからだ
太宰「国木田くん国木田くん!暇なのだよー、」
国木田「今俺は仕事をしている!少し静かにしろ!」
怒りながら言っている
太宰「起こらないでくれ給えよ、」
私は泣きかけていた、それを国木田くんが気付いていくれた
国木田「太宰、大丈夫だ、怒らない」
太宰「国木田くん、(泣)」
何故か私は安心して泣いていた
国木田「大丈夫だ、」
私が泣いていると国木田くんはそっと撫でてくれた。
私は安心して寝てしまっていた
国木田「太宰、寝たか、」
国木田くんはそのまま寝かせてくれていたのだ。
それから数分間が経った
太宰「国木田くん、おはよ、」
私が起きると国木田くんは寝ていたのだ、国木田くんも安心出来てたのかな、と心の中で思っていた、動こうとすると国木田くんは起きてしまった
国木田「太宰、?起きたのか、」
太宰「あ、起こしちゃった、ご飯創るから待ってて」
国木田「嗚呼」
このときの国木田はすごく甘えたような声だった
太宰「今日はオムライスなんてどうかな?」
私は台所に立ちながら、後ろを振り向いて言った。国木田くんはまだ眠そうな顔でソファに腰かけていた。
国木田「……お前が作るなら、何でもいい」
太宰「ふふ、じゃあ愛情たっぷりにしておこう」
冗談めかしてそう言うと、国木田くんは少しだけ顔を背けた。だけどその耳が、ほんのり赤くなっているのを私は見逃さなかった。
しばらくして、出来上がったオムライスを二人分テーブルに並べた。私は自分の皿のケチャップで、くるくるとハートを描いた。
太宰「国木田くんのにも描いていい?」
国木田「……勝手にしろ」
ぶっきらぼうに言うくせに、ちゃんと皿を差し出してくれる。私はにこにこと笑って、彼のオムライスにも小さなハートを描いた。
太宰「いただきます」
国木田「……いただきます」
二人で並んで食べる朝ごはんは、探偵社で過ごしていたときとはまるで違って、あたたかかった。あの喧嘩のとき、こんな日が来るなんて思っていなかった。
国木田「なあ、太宰」
ふいに国木田くんが口を開いた。
太宰「ん?」
国木田「……もう、あんなことはするなよ。勝手にいなくなったり、自分を傷つけたり、そういうの……嫌だから」
私は手を止めて、彼の顔を見た。真剣な目だった。
太宰「……うん、わかった。国木田くんがいるなら、生きてみようかな」
国木田「バカ……」
だけどその「バカ」は、優しかった。
そしてその朝、私の心のどこかにずっとあった冷たい穴が、ほんの少し、埋まったような気がしたのだった。
朝食を食べ終えると、私はコーヒーを淹れた。国木田くんはまだソファに座ったまま、新聞を読んでいる。なんてことない、静かな朝。
だけど、こんな朝が、私はとても好きだった。
太宰「国木田くん、コーヒーどうぞ」
カップを差し出すと、国木田くんは「ありがとう」と少し照れたように言った。
国木田「……お前、最近優しいな」
太宰「ふふ、好きな人には優しくする主義なんだ」
国木田「……お前な……」
国木田くんはまた耳を赤くして、新聞で顔を隠した。だけど隠しきれてないよ、その目元、少し笑ってる。
太宰「ねぇ、国木田くん」
国木田「ん?」
太宰「好きって、ちゃんと言っていい?」
国木田「……お前が言いたいなら、言えばいい」
太宰「うん。好きだよ、国木田くん」
国木田「……バカ」
そう言いながらも、彼の指先がそっと私の手に触れた。そのまま、指を絡めてくれる。
国木田「俺も、だよ……」
小さな声でそう言う国木田くんを見て、私は心の奥がふわっとあたたかくなった。
太宰「ん、ありがとう」
そっと体を寄せて、国木田くんの肩に頭を預ける。彼は一瞬だけ戸惑ったようだったけど、すぐにその肩を少しだけ傾けて、私を受け入れてくれた。
国木田「……重くないか?」
太宰「ううん、安心するの」
朝の陽射しがカーテン越しにやわらかく部屋を照らしていて、まるでこの空間ごと、優しさに包まれているみたいだった。
このままずっと、こうしていられたらいいのに。そう思いながら、私は目を閉じた。
そして――
国木田「……今日の仕事、午後からにするか」
太宰「えっ、それほんとに? いつも時間厳守の国木田くんが?」
国木田「……たまにはいいだろ。お前が、あんまりにも甘えてくるから」
太宰「嬉しい……好き、国木田くん」
国木田「……うるさい」
そう言いながらも、国木田くんはそっと私の頭を撫でてくれた。
甘くて、優しい午前のひととき。私はもう少しだけ、国木田くんのそばで夢を見ていたかった。
夜、探偵社での仕事を終えて、二人で帰宅した。
国木田「……ふぅ。やっと終わったな」
太宰「お疲れ様、国木田くん。今日もずっと資料まとめてたね」
国木田「お前はサボってばかりだったがな……でも、まあ……助かったよ、太宰」
太宰「珍しいな、素直に感謝なんて。雪でも降るかも?」
そう冗談を言いながら上着を脱ぐと、国木田くんはリビングのソファに深く座り込んだ。ネクタイも緩め、眼鏡を外して、ふぅっと深いため息をつく。
太宰「疲れた?」
国木田「……ああ、少しだけ。頭を使いすぎた」
太宰「じゃあ、国木田くん専用マッサージ師がサービスしてあげようか」
私は背後からそっと彼の肩に手を置き、軽く押してみる。
国木田「……っ、あ……そこ、効く……」
少しだけくぐもった声。普段は凛とした国木田くんが、今は私にすべてを委ねるような柔らかい空気をまとっている。
太宰「ふふ、気持ちいい?」
国木田「……うるさい。喋るな……」
だけどその声は、とても優しかった。
肩をもみながら、私は彼の耳元にそっと囁いた。
太宰「がんばったね、国木田くん。ほんと、偉いよ」
国木田「……やめろ、そういうの……」
そう言いながらも、彼の手が私の腕に絡んでくる。まるで、「ここにいてくれ」と無言で言っているかのように。
太宰「今日は甘えていいよ」
そう言うと、国木田くんは私の胸元に額を預けてきた。
国木田「……こういうとき、お前が隣にいるのは……悪くないな」
太宰「……うん、私もそう思うよ」
そのまま二人はしばらく、言葉もなく寄り添っていた。
静かな部屋の中、時計の針の音だけが優しく響く。
国木田「なあ、太宰」
太宰「ん?」
国木田「……こうしてると、安心する。昔は……あんなに衝突してばかりだったのにな」
太宰「だからこそ、今があるんだよ。ぶつかって、離れて、でもやっぱり……ここに戻ってきた。私は、あのとき探偵社を追い出されてよかったと思ってる」
国木田「バカだな、お前は……」
太宰「でも、国木田くんが好きって言ってくれたのは、あの後でしょ?」
国木田「……だから余計に、バカなんだよ。俺はもう、お前がいないと駄目になってる」
その言葉が、今夜一番甘かった。
私はそっと国木田くんの髪を撫でながら、心の中で「大丈夫だよ」と何度も繰り返していた。
彼が強くなろうとしていることも、誰にも甘えられなかったことも、私は全部知っているから。
太宰「ねえ、今日はさ……一緒に寝よう?」
国木田「……お前がそうしたいなら、いい」
小さな声で返されたその言葉に、私はそっと微笑んだ。
ソファの明かりを消して、二人で肩を寄せ合って寝室へ向かう。
この夜が、永遠に続けばいいのに。そう思いながら、私は国木田くんの手を、ぎゅっと握りしめた。
ベッドの中、カーテン越しに月明かりがうっすらと差し込んでいる。
時計の針は深夜を少し回った頃。部屋は静かで、隣にいる国木田くんの体温が、ただ心地いい。
太宰「……国木田くん、起きてる?」
国木田「……ん。まだ寝てない」
太宰「疲れてたのに?」
国木田「……お前が隣にいると、なんか……落ち着くけど、逆に眠れないんだよな」
太宰「ふふ、それは褒め言葉と受け取っていいのかな?」
国木田「……どうせ図に乗るんだろうが……まあ、そうだな。褒めてる」
珍しく素直な言葉に、胸がぎゅっとあたたかくなる。
太宰「ありがとう、国木田くん。今日も頑張ってたよね、ちゃんと見てたよ」
国木田「……お前はいつも、俺のことを見てるな。飽きないのか?」
太宰「飽きるわけないよ。私は、国木田くんを見てるだけで、安心するから」
静かにそう答えると、すこし間をおいてから、国木田くんの手が私の指を探すように絡んできた。
国木田「……俺も、そうだ。お前が隣にいるだけで、なんか……安心する」
太宰「……うれしいな。昔はあんなに突き放してたのに」
国木田「……昔の俺は、余裕がなかった。お前に甘えることが、弱さだと思ってた。けど、違った」
太宰「うん、違うよ。弱さを見せられるのは、信じてる証拠だよ」
国木田「太宰……」
太宰「ねぇ、これからもこうして、国木田くんの隣にいていい?」
国木田「……許可なんて、いらない。お前がいなくなったら……たぶん、俺が駄目になる」
その言葉は、私にとって何よりの愛の証だった。
太宰「……ねえ、ギュッてしていい?」
国木田「……バカ。もう、勝手にしろ」
でも、腕が自然に私を引き寄せてくる。
そっと抱きしめ合って、互いの心音が重なる。静かで、やさしい夜。
太宰「おやすみ、国木田くん」
国木田「……ああ、おやすみ。太宰……好きだよ」
太宰「……私も。大好きだよ」
そうして、眠りにつくまで、ふたりは何度も名前を呼び合って、
ただただ幸せに包まれていた。
そうして、眠りにつくまで、ふたりは何度も名前を呼び合って、
ただただ幸せに包まれていた。
布団の中、ぬくもりを分け合うようにして寄り添っていた。
部屋はもうすっかり静まり返り、ただ小さな呼吸の音だけが重なっている。
太宰「ねえ、国木田くん」
そっと声をかけると、すぐに小さな「ん」と返事が返ってきた。
太宰「……眠る前に、ひとつだけ欲しいものがあるんだ」
国木田「……なんだよ、またワガママか?」
太宰「違うよ。……キス、してほしいなって」
そう囁くと、国木田くんはほんの一瞬だけ沈黙して、
そのあと、照れくさそうな声で言った。
国木田「……お前はほんとに、そういうところだけ素直だな」
太宰「国木田くんの前だからだよ。甘えたいんだもん」
そう言うと、国木田くんは静かに身を起こして、私の頬に手を添えた。
その手はあたたかくて、少しだけ指が震えていた。
国木田「……じゃあ、俺から。目、閉じて」
太宰「うん……」
目を閉じると、すぐに国木田くんの気配が近づいてきて――
そっと、やさしく唇が触れた。
触れるだけの、短くて、けれどとても深いキス。
愛情と信頼が静かに染み渡っていくようだった。
キスの余韻がまだ残るうちに、国木田くんが低く、やさしい声で囁いた。
国木田「……おやすみ、太宰。明日も一緒に、起きような」
太宰「うん……おやすみ、国木田くん」
そう言って目を閉じた瞬間、心の中までふわりとあたたかくなった。
キスより深く、言葉より確かに、
私は国木田くんの愛を感じていた。
深夜。
静まり返った寝室の中で、ふと、隣の気配に違和感を覚えて私は目を覚ました。
太宰「……国木田くん?」
隣で寝ているはずの彼が、小さく息を荒げていた。
額にはうっすら汗、顔はほんのり赤く、眉間には苦しげな皺が寄っている。
太宰「……まさか」
私はそっと手を伸ばして、彼の額に触れた。
太宰「……熱い」
体温が、明らかに高い。いつも整った呼吸も、今はどこか浅くて不安定だ。
太宰「……国木田くん、起きて。大丈夫……?」
軽く揺すると、彼はぼんやりと目を開けた。
国木田「……太宰……? なんで……起きて……」
太宰「こっちが聞きたいよ。しんどそうじゃないか、熱あるよ……!」
国木田「……大丈夫、少し……熱があるだけ……明日には……」
太宰「そうやって無理するから悪化するんだよ……もう、バカ……!」
そう言いながらも、私は急いで冷えピタと体温計を取りに行き、水とタオルも用意した。
額に冷えピタを貼って、少し汗を拭ってあげると、彼の表情がほんの少し和らいだ。
太宰「体温、38.6度……完全にアウト。動かなくていいから、任せて。私、看病得意だから」
国木田「……お前が、優しすぎると……調子狂う」
太宰「ふふ、それはお互い様。こんなときくらい、私のことに頼ってよ」
そう言うと、彼は静かに目を閉じた。少しして、小さな声で――
国木田「……太宰が……いてくれて、よかった」
太宰「うん、私はいつでも、国木田くんのそばにいるよ。だって――好きだから」
彼の手をそっと握ると、ほんの少し力が返ってくる。
国木田「……お前の手、あったかい……」
太宰「当たり前でしょ、心から想ってるから」
優しく手を握った
――そして、朝が来た。
窓から射し込むやわらかな陽光に包まれて、私は目を覚ました。ふと隣を見ると、国木田くんはまだ眠っていた。昨日よりは顔色もよく、熱も少し下がっているようだった。
太宰「……よかった」
そっと起き上がってキッチンへ向かい、お粥を作る準備を始める。味付けは、優しめに。柔らかく炊いたお米に、ほぐした鶏肉を少し。刻んだネギを散らして、仕上げにほんの少しだけ、出汁の香りを効かせる。
コトコトと煮える音の中で、私は少し前のことを思い返していた。
追い出されたあの日、ひとりで感じた寒さ。国木田くんと過ごす今の、あたたかさ。あの頃の私は、誰かに必要とされることを、どこかで諦めていた。
でも今は違う。
私は、国木田くんに必要とされている。
そして、国木田くんを必要としている。
小さなお粥の鍋を手に、そっと寝室へ戻ると、彼がちょうど目を覚ましたところだった。
国木田「……太宰?」
太宰「おはよう。熱、どう?」
国木田「……ん、だいぶ楽になった。頭も、少しだけ軽い」
太宰「それはよかった。ほら、お粥作ったよ。食べられそう?」
国木田「……作ったのか、お前が……」
太宰「まさか毒でも入ってると思った?」
国木田「いや……美味そうだ、って思った」
珍しく、素直な笑顔を浮かべてそう言う国木田くんに、胸がきゅんとした。
太宰「はい、あーん」
国木田「……お前、ふざけてるのか?」
太宰「本気だよ。熱出してる恋人には、これくらいの特権があって然るべきでしょ」
そう言ってスプーンを差し出すと、彼はほんの少し照れながらも口を開けてくれた。
国木田「……ん、美味い」
太宰「ふふ、でしょ? 私、やればできるんだよ」
ゆっくりと食事を進めていくうちに、少しずついつもの調子が戻ってくるのがわかった。
国木田「なあ……太宰」
太宰「ん?」
国木田「昨日、熱で朦朧としてたから……うまく言えなかったけど……ありがとう。そばにいてくれて」
太宰「……私は、ずっとここにいるよ。どんなときも、国木田くんの隣に」
その言葉に、彼はもう一度微笑んで、私の手をそっと握り返した。
国木田「お前といると、少しだけ……未来のことを考えたくなるんだ」
太宰「それは……プロポーズみたいなものかな?」
国木田「……お前は、ほんと図々しいな」
太宰「でも……答えは?」
国木田「……そうだな。いつか、お前と一緒に……先の未来を歩いてみたいって、思ってる」
その言葉が、今までのどんな言葉よりも嬉しくて、私はぎゅっと国木田くんの手を握りしめた。
太宰「じゃあ、まずは今日を一緒に生きよう。未来は、その積み重ねだよ」
国木田「ああ、そうだな……太宰、ありがとう」
優しい朝だった。
ひとつの喧嘩から始まった関係が、少しずつ、確かに育っていく。
痛みもすれ違いも乗り越えて、今ここにある、ふたりだけの穏やかな朝。
私は思った――
**生きていて、よかった。**
そしてきっと明日も、隣には国木田くんがいてくれる。
それが、何よりの希望だった。
――終わり、ではなく、ふたりの新しい始まり。
数日が過ぎ、国木田くんの風邪はすっかり良くなっていた。
彼はまた、いつものように朝からスーツに腕を通し、ネクタイを締めながら言った。
国木田「……よし、今日から本格的に復帰だな」
太宰「そんな急に張り切らなくても。また倒れたら、今度はおかゆじゃ済まないよ?」
国木田「……まさか、今度は雑炊になるとか?」
太宰「そのときは、胃に優しいシチューかな」
ふっと、国木田くんが笑った。
そんな日常のやり取りが、私にとって何よりの幸せだった。
――探偵社に久しぶりに二人で顔を出すと、いつも通りの賑やかさがそこにあった。
敦「あっ、国木田さん、太宰さん!」
谷崎「ほんとに戻ってきたんだ……心配したんですよ?」
太宰「ええ、ご心配おかけしました。国木田くんが風邪を引いちゃってね、しばらく看病してたんですよ」
国木田「……余計なことを言うな」
与謝野「ふふ、でもなんだか太宰、顔が柔らかくなったわね」
太宰「そうですか? 国木田くんの愛の力かもしれませんねぇ」
国木田「……お前、あとで話がある」
乱歩「やれやれ、相変わらずラブラブじゃないか」
社内に微妙な笑いが広がり、私はそっと国木田くんの袖をつまんだ。
太宰「ごめん、怒らないで」
国木田「……怒ってない。ただ、照れてるだけだ」
それは、彼なりの不器用な告白だったのかもしれない。
***
仕事が終わり、帰り道――
夏の夜風が少しだけ涼しくなっていて、季節が確かに進んでいるのを感じた。
国木田「……なあ、太宰」
太宰「ん?」
国木田「この前の、お前の言葉。未来を一緒に――ってやつ」
太宰「ふふ、覚えててくれたんだ」
国木田「……忘れるわけない。俺は、ちゃんと考えてたよ。ずっと」
歩きながら、彼は珍しく真剣な目でこちらを見た。
国木田「その……正式に、同棲しないか?」
太宰「えっ……」
国木田「今は、なんとなく一緒に暮らしてる感じだろ。でも、もう“なんとなく”じゃなくて、“ちゃんと”一緒に暮らしたい。責任持って。お前と」
太宰「……うん」
涙が出そうだった。
過去に置き去りにしてきた孤独や、拒絶された記憶が、静かに溶けていくのがわかった。
太宰「じゃあ、今度、家具とか……一緒に選びに行こうか?」
国木田「……ああ。ベッドも、ちゃんとしたのを買おう」
太宰「えっ……それってつまり……」
国木田「……バカ。察しろ」
顔を赤くして少しそっぽを向いた彼の手に、私はそっと自分の指を重ねた。
太宰「うん、よろしくね、国木田くん」
国木田「こちらこそ……よろしく、太宰」
夜の街灯に照らされながら、ふたりの影がひとつに重なる。
未来はまだ不確かで、きっとこれからも衝突や迷いはあるだろう。
それでも――
私たちはもう、ひとりじゃない。
どんな夜も、どんな朝も、共に歩いていける。
そう信じられる日々が、今、静かに始まって。
それから数日後の休日。
二人は約束通り、新居の家具を見に出かけることになった。
太宰「さて、国木田くん。家具選びって言ってたけど、どこから見て回る?」
国木田「まずはベッド、だろ。お前、ずっと『腰が痛い』とか言ってたしな」
太宰「それ、国木田くんに抱きつきすぎて怒られたときの話では……」
国木田「余計なこと言うな。……ほら、あのベッド、ちょっと座ってみろ」
太宰「はいはい」
言われるままにふわりと腰を下ろすと、しっかりとした反発と柔らかさのバランスが心地よい。
太宰「これ……いいかも。二人で寝ても狭くないし」
国木田「……“二人で寝る前提”で選んでるのお前だけだろ」
太宰「何言ってるの。言い出したの、国木田くんじゃないか」
国木田「……っ、そうだったな。……ああ、もうこれでいい」
顔をそむけながら、早々と決定する国木田くんに、私は思わず吹き出してしまった。
太宰「照れてる国木田くん、最高に可愛いなぁ」
国木田「……黙れ」
そう言いながらも、彼の耳はまた赤く染まっていた。
***
家具屋を数軒巡り、ソファやテーブル、照明器具などを一通り選び終えたあと、二人は静かなカフェに入った。
窓際の席で並んでアイスコーヒーを飲みながら、ふと、太宰が口を開く。
太宰「ねぇ、国木田くん。こういうの、前から夢だったんだ」
国木田「こういうの?」
太宰「……一緒に暮らす人と、家具屋巡って、どっちがいいかなって迷って、疲れたらこうやってコーヒー飲んで。……ね、他愛ないでしょ?」
国木田「……いや、わかるよ」
太宰「え?」
国木田「俺も……こんなふうに落ち着いた時間を、お前と過ごせるとは思ってなかった。あの頃は……怒ってばかりで、お前の言葉を正面から受け止める余裕がなかった」
太宰「私も。わざと挑発してばかりだった。でも、そういう時期があったからこそ、今があるんだよね」
国木田「……ああ。そうだな」
カップを置いた国木田くんの手が、そっとテーブルの下で太宰の手に触れた。
店内の穏やかなBGMの中、二人だけの沈黙が心地よく流れる。
***
そして数週間後。
引っ越しも無事に終わり、新しい部屋には新しい家具、そして新しい暮らしが始まっていた。
休日の午後、窓辺のソファに座って本を読んでいた国木田くんの隣に、太宰がそっと身体を預ける。
太宰「ねぇ、国木田くん。最近……すごく満たされてる気がするよ」
国木田「……お前がそう思えるなら、俺はそれでいい」
太宰「でもちょっと不安にもなる。これが夢なんじゃないかって」
国木田「……夢じゃないさ」
太宰「証拠は?」
国木田「……これだ」
そう言って、国木田くんはそっと太宰の頬にキスを落とした。
太宰「……ふふ、現実、だね」
国木田「お前がここにいて、俺がここにいる。それ以上、何が必要だ?」
太宰「……ほんと、君はズルいな」
そう言いながらも、太宰の目は細くなり、どこか子どものような笑みを浮かべていた。
窓の外では、蝉の声がまだ夏の名残を告げている。
部屋の中はエアコンの静かな音と、二人の呼吸だけが満ちていた。
もう「誰かに必要とされない」と思っていた日々は、遠い記憶になった。
太宰「これから先、何があっても……君と一緒にいたい」
国木田「……一緒にいよう。必ず」
指先を絡めるようにして、二人はゆっくりと見つめ合う。
それは誓いのようで、約束のようで、
そしてなにより、確かな“愛”の証だった。
――終わりではなく、また一歩、ふたりの未来へ。
――そして、朝が来た。
窓から射し込むやわらかな陽光に包まれて、私は目を覚ました。ふと隣を見ると、国木田くんはまだ眠っていた。昨日よりは顔色もよく、熱も少し下がっているようだった。
太宰「……よかった」
そっと起き上がってキッチンへ向かい、お粥を作る準備を始める。味付けは、優しめに。柔らかく炊いたお米に、ほぐした鶏肉を少し。刻んだネギを散らして、仕上げにほんの少しだけ、出汁の香りを効かせる。
コトコトと煮える音の中で、私は少し前のことを思い返していた。
追い出されたあの日、ひとりで感じた寒さ。国木田くんと過ごす今の、あたたかさ。あの頃の私は、誰かに必要とされることを、どこかで諦めていた。
でも今は違う。
私は、国木田くんに必要とさ