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あの日、俺たちは何の気なしに廃墟と化した鈴木ホテルへ向かった。
ネットでは「取り壊し作業をした者が次々に命を落とした」と囁かれ、その原因はアスベストだと言われていたが、俺たちはそんな怖い話を笑い飛ばしていた。
湿った空気が辺りを包み、錆びついた扉を押し開けると、かすかな鈴の音が耳の奥に響いたような気がした。
それが始まりだった。
中で何があったのか、俺の記憶はそこで途切れた。
次に目覚めたのは、古びた寺の畳の上だった。
静かに座る住職は言葉少なに「もうここには来るな」と告げた。
その声には怒りや恐怖ではなく、凍りつくような静かな戒めが込められていた。
俺は言葉を失い、ただ沈黙するしかなかった。
俺以外の仲間たちはあの夜のことを覚えているらしいが、連絡は途絶えた。
消えた彼らはどこへ行ったのか、誰も知らない。
あのホテルの取り壊し現場で次々と命を落とした作業員たちの死因はアスベストとされるが、
それだけでは説明できない何かが確かに存在しているのだ。
*俺はあの夜、*何かに触れてしまった。
鈴木ホテルの影が今も背中にまとわりつき、住職の言葉の意味が重くのしかかる。
もう二度と戻れない場所の扉を開けてしまったのかもしれない。
「もうここには来るな」――その意味がわかる時、お前も気づくだろう。
これはただの廃墟の話ではない、終わらせてはならない何かがそこにあるのだと。
だから俺は、誰にも言わず、忘れようと努める。
しかし、胸の奥で囁く何かが消えない。
俺たちはただの被害者ではない。
*知らぬ間に、何かに「*選ばれて」しまったのかもしれない。
もしこの話を読んでいるお前が、同じ場所へ興味を持ったなら、気をつけろ。
扉はいつでも開く。
*だが、一度開ければ、もう閉じることはできないのだから。*