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あれは 夏のことでした。
毎年じわじわと気温が上がり、額に汗がなぞる日が増えた。
体育、憂鬱。
涼しいクーラーのある教室だけが安地で。
出来ればそこから動きたくなくて。
休み時間。
遠くの席からこんな声が聞こえる。
「__くんって、かっこいいよねぇ。」
「私は__くんかな。」
「この前、話せちゃったの!__くんと!」
女の子がそう話しているのを聞いていた。
好きな人なんて、居ない。
「好き」というものが分からない。
恋愛が分からない。
理解が出来ない。
私がかっこいいと思うもの、2次元。
イケメンなキャラクターだけが私の恋人。
私の好きな人は画面から出てこない。
多分、2次元が好きなのは自分に自信が無いから。
こんな自分に恋人ができるとか、思えないから。
ずっとそうだった。
私は保健委員会に所属している。
1番楽そうだったから。
出来れば図書委員会をしたかったけど、志望する人が多くて、諦めて保健委員にした。
そんな私と同じく保健委員会のさくらくん。
私と同じ中学1年生なのに、私よりもずっと背の高くて、優しい男の子。
メガネをかけた、顔にホクロが多い男の子。
私が保健委員の仕事をしていると、すかさず
「俺もやるよ。」
と声を掛けてくれる。
夏休みも近くて、早く二学期が終わらないかな、と学校が憂鬱な日々。
体育ではバレーをしていて、チームに別れて試合をしたり。
そんな時、ふと思った。
私は、さくらくんばかり見ている。
気づけばさくらくんのことを見ている気がして、少し変だな。
そう思った。
気の所為だ。
私の周りの女の子が好きな人の話をしていたから、意識的になっているだけ。
でも、さくらくんと話していると、少ない言葉だけでも、どきどきしてしまう。
この感情に名前をつけるのが少し怖い。
だけど、分かってしまう。
私は、さくらくんのことが好きになっている。
そんなことに気付いたのもつかの間。
夏休みは始まった。
夏休みの間、よく考えてみる。
きっと思い上がっているだけだ。
浮かれているだけ。
少し頭を冷やせば、さくらくんの事なんて頭に無くなっているだろう。
そんな結論に陥って、そう信じたくて。
とりあえず、好きなゲームでもして夏休みを埋めた。
夏休みのある日
買い物に出掛けようとして、準備をする。
着替えて髪の毛を整えて。
もし、買い物をするお店でさくらくんと会ったら…。
そんな想像が頭をよぎる。
いやいや、何考えてるんだ。
今さくらくんは関係ないでしょ。
でも、ちょっとだけ。
期待をしてしまった。
もちろんお店にはさくらくんなんて居ない。
だろうなぁ。と思いながら欲しいものを買った。
あぁ。結局またさくらくんのことを考えてる。
私、馬鹿みたい。
浮かれたまま、夏休みを過ごした。