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スネージナヤ・医療研究区画 深層診療室
副作用は、確実に長引いていた。
常時微熱。
神経過敏。
触覚増幅。
そして何より――戦闘時の過剰反応。
観察データを見下ろしながら、博士は静かに呟く。
ド「……興味深いを通り越しているな」
診療台に座る隊長は腕を組んだまま。
カ「任務に支障はない」
ド「“支障が出る前段階”だ。
神経伝達速度が通常の1.4倍。
このままでは反応過多で身体制御が崩れる」
カ「ならば薬を減らせ」
ド「原因は投与薬単体ではない。
君の体質が薬効を増幅し、
さらに遺跡環境で変質した」
カ「……要するに?」
ド「適合しすぎた」
沈黙。
ド「だから解決法も単純な解毒ではない」
博士は端末を操作し、
新しい薬液を表示する。
淡い青色。
ド「増幅した神経回路を“元の閾値”へ戻す。
副作用を打ち消すのではなく、
過剰適応を再調整する」
カ「危険性は」
ド「ゼロではない。
成功すれば副作用は収束。
失敗すれば――」
一瞬だけ間
ド「神経感度が一時的に極端低下する。
戦闘反応が鈍る」
カ「構わん。やれ」
⸻
博士は手袋をはめ直し、
隊長の腕を取る。
触れた瞬間、
やはり微かな反応。
だが以前ほどではない。
ド「ピークは過ぎているな。
だが残存反応が深い」
カ「長引きすぎだ」
ド「私も同感だ。
――だから終わらせる」
針が皮膚に沈む。
薬液注入。
⸻
最初の変化は、静かだった。
呼吸がゆっくりになる。
体温が下がる。
だが次の瞬間、
神経が逆方向に揺り戻す。
隊長の肩が震える。
カ「……ッ」
ド「来るぞ。再調整の反動だ」
視界の明滅。
感覚が一瞬遠のき、
次に戻る。
ド「意識を保て。
今、神経閾値を書き換えている」
カ「……問題ない」
だが声は低く掠れる。
博士は肩を支え、
転倒を防ぐ。
ド「無理に耐えるな。
身体は今、強制的に均衡点を探っている」
数分。
長い沈黙。
やがて――
震えが止まる。
⸻
ド「……どうだ」
カ「……静かだ」
ド「具体的に」
カ「体温の違和感がない。
触覚も――通常だ」
博士は手袋を外し、
あえて素手で手首に触れる。
反応は、ほぼ無い。
ド「成功だな」
カ「……そうか」
ド「副作用は収束。
神経過敏も興奮作用も残っていない」
端末に安定波形が並ぶ。
ド「長かったな」
カ「お前が引き延ばした」
ド「観察価値が高かっただけだ」
⸻
立ち上がろうとした隊長が、
一瞬だけバランスを崩す。
博士が腕を取る。
今度は――過敏反応はない。
ただ普通に支えられる。
カ「……」
ド「低下反動が少し残っている。
数時間で消える」
カ「任務復帰は」
ド「明日以降だ」
カ「今日でいい」
ド「今日“は”被験体だ。諦めろ」
⸻
沈黙の後。
博士が小さく笑う。
ド「しかし……少し惜しいな」
カ「何がだ」
ド「過敏反応期のデータは非常に――」
カ「却下だ」
ド「最後まで言わせろ」
カ「聞く必要がない」
⸻
だが博士は続ける。
ド「……触れた時の反応、
戦闘時の集中度、
保護行動の増幅――」
カ「記録するな」
ド「もうしている」
カ「消せ」
ド「バックアップがある」
カ「……」
⸻
数秒後。
カ「副作用は終わったのだな」
ド「ああ。完全に」
カ「なら――」
隊長は一歩近づく。
今度は自分から、
博士の手首を掴む。
反応はない。
ただ、静か。
カ「確かに終わったらしい」
ド「確認方法が物理的すぎるな」
カ「お前が始めた」
ド「否定はしない」
⸻
手はすぐ離れる。
だが博士は少しだけ名残惜しそうに見る。
ド「……まあいい。
副作用がないなら、今後は純粋な戦闘データだけ取れる」
カ「余計な実験をするな」
ド「善処しよう」
カ「信用はしていない」
ド「知っている」
ド「だが一つだけ確かだ」
カ「何だ」
ド「君は薬に適合しすぎる。
今後投与する時は――」
カ「最小限にしろ」
ド「いや」
一拍。
ド「私の監督下でのみ使う」
カ「……結局そこか」
ド「当然だ」
⸻
副作用問題――終結。
だが観察対象としての興味は
終わっていなかった。
コメント
1件
こっからは私が好きなシチュを上げてきます!こんな感じのが見たいよーってのがあったら遠慮なくコメントくださいー