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妊娠初期の倦怠感が消えると
自分でも不安になるほどの
すさまじい食欲が襲ってきた
何故かあたしは鶏肉を好んで食べた
安定期が過ぎ
あたしは赤ちゃんだけではなく
爪先から頭の先まで膨らんだ気がする
痛くはないけどパンパンで弾けそうな気分
さらに何度も夜中に目が覚め
トイレに駆け込んだ
妊娠中子宮にスペースを押されて
切羽つまった膀胱を空にすると
安堵のため息が出た
まったく妊娠ってこんなに
しんどいことなんて知らなかった
廊下の窓から冷たい
風が服の隙間を狙って入ってくる
もうすっかり夜は冷え込み
この調子だと今週末は
雪が降ってもおかしくなかった
あたしはファー素材のパジャマの
前合わせをキツクつかみ脚早に部屋へと
もどった
ジャンバーを着てくればよかった
部屋のファンヒーターは
温かい空気を吐きだしベッドが誘っている
あたしは再び
ベッドにもぐり目を閉じおなかに話しかけた
「さぁ どう?少しは居心地がよくなった?」
お腹の中に余分な空間が広がったことに
喜んでいるのか
赤ちゃんがのんびりと宙返りを繰り返し
妊娠用パジャマの下で下腹がかすかに
波打ちまどろみを心地よく感じた
最近は胎動も激しくなってきた
たしかにここにいる・・・
最初はお腹にガスが
溜まったような感覚だった
ポコポコと小さな泡がお腹の中を
めぐるような感じ・・・・
それから次第に日中にもそれを感じ
一度彼?彼女?がお腹の中で
とんぼ返りをしたのがハッキリわかって
思わず座り込んだ
日を増すごとにお腹はどんどんせり出してくる
これほど赤ん坊が大きくてやっかいだとは
思わなかった
今は仰向けで寝ると息苦しくなり
うつ伏せなどもっての他
ゆったりと枕を足の間にはさみ
横向きに寝ても数時間おきに目が覚める
赤ちゃんは一度に数時間眠る・・・・
あまり長い時間胎動を感じなくなると
死んだのではないかと不安になる
でもすぐにお腹を蹴られてほっとする
寝返りも歩くのも
最近では何をするにもゆっくりだ
体中の皮膚が薄くなったような気がする
触れるものが気に障る
着るものがファッション重視ではなく
肌さわりを一番に考える
服が擦れるのでさえも不快に感じ
脇や乳首や足も敏感になる
無意識のうちに
両手でせり出してきたお腹を抱える
特に乳は重たく張って
先端はものすごく敏感になっている
ワイヤー入りのブラジャーなんて
もっての他
妊娠用のブラジャーを沢山買い込んだ
前で開けて授乳出来るものだ
子供を持つということはどういうことか
持つ前には想像もつかなかった
子を産む体験は
どんな理性の力もおよばない
命をひねりだし
心をねじ切る・・・・
一筋涙が出た
もう泣きたくないのに
子供はジョージに似ているだろうか・・・
きっと似ているに違いない
あたしはこの子に彼の面影が見られるたび
きっと幸せな気分になるだろう
予定日がだんだん近くなる・・・・
これからの事を想うと
ああ・・・不安で押しつぶされそう
お腹の赤ちゃんがあんまり動くと
ジョージがあたしの中で激しく
動いているような
あの時の感じがすることがある
中に入って・・・・
彼自身を放出するときのような
それから彼に抱かれて奥深くで
子宮の壁を突かれているあの感覚
あんな感じだけど
でもこれはもっと大きい
子宮の壁全体に伝わり
体中を満たす・・・・・
ウトウトとジョージと愛し合った記憶を
たどっていく・・・
すると初めて彼と出会った時を思い出した
ホストの彼は目が覚めるようなハンサムで
上半身裸で踊っていた
そしてそこの花瓶から引っこ抜いてきたって
あたしに白いユリの花を一輪くれたんだっけ・・・
ユリがあたしっぽいって言って・・・
学園に帰ってきて
枯れるまで大切に育てた
「ユリ・・・・・」
あたしははっとした
産婦人科の先生からお腹の赤ちゃんは
女の子だと告げられた
そうだ・・・・
ジョージがあたしに最初にくれた花・・・
あの時のユリの花のように
見るたびきっとあたしを幸せにしてくれるだろう・・・・
もう一度言った
「ユリ・・・・」
さらにお腹を抱えて囁いた
「決まったわ・・・・・
あなたの名前はユリちゃんね・・・・ 」
そしてそこの花瓶から引っこ抜いてきたって
あたしに白いユリの花を一輪くれたんだっけ・・・
ユリがあたしっぽいって言って・・・
学園に帰ってきて
枯れるまで大切に育てた
「ユリ・・・・・」
あたしははっとした
産婦人科の先生からお腹の赤ちゃんは
女の子だと告げられた
そうだ・・・・
ジョージがあたしに最初にくれた花・・・
あの時のユリの花のように
見るたびきっとあたしを幸せにしてくれるだろう・・・・
もう一度言った
「ユリ・・・・」
さらにお腹を抱えて囁いた
「決まったわ・・・・・
あなたの名前はユリちゃんね・・・・ 」
.:*:‘゜.:*:‘゜.:*:‘゜.:*:・
冬にしては暖かな日だった
朝方あたしは目が覚め少し窓をあけて
外の冷たい空気を吸った
とても心地よかった
それは突然襲ってきた
お腹の収縮による鈍い痛みが背骨へと
駆け上がる
おなかをそっと抑えると
弾力性のある皮膚の下に
赤ん坊の体の丸みを
感じ取ることが出来た
トイレに行くと
パンツに血がついていた
いわゆる「おしるし」というヤツだ
ふれた感じでわかる
位置も正しい
頭が下にきちんと来ている
いよいよ生まれる
あたしは少し怯え
今更ながら驚きに撃たれた
すでに起きたことも
これから起きようとしていることも
すべてが現実とは思えなかった
あたしは学園長と先生を呼び
そのままタクシーでかかりつけの
市民病院に入院した
「陣痛の感覚はどのくらい?」
陣痛室で付き添ってくれている
葉山先生が心配そうに聞いた
「わからない・・・
でも・・・
すごく痛いわ・・・ 」
少し開いている窓から微風が
吹き込んできていたけど
あたしは汗をたくさんかいていた
あらかじめ持ってきていた妊婦用の
パジャマをもう2枚着かえている
もう代えがないので
病院の手術着を借りようと思っていた
「あなたなら無事に産めるわ」
葉山先生が手を握り囁きかける
あたしは懸命に微笑み返そうとしたけど
痛みでそれどころではなかった
ベッドの横にある鏡を覗きこんだら
顔は肌色ではなく真っ白だった
部屋に差し込む光がだんだん
夕焼け色になり
その頃には手術着に着替えたあたしは
汗びっしょりだった
腰が割れるように痛い
助産師さんが腰の痛みをやわらげようと
腰の少し上を親指で押してくれた
不思議と魔法のように痛みはおさまった
でもまたすぐに痛みは嵐のように襲ってくる
「子宮口全開ですね!さあ
となりの分娩台に乗って 」
手術ライトが当てられた金属的な
分娩台に乗せられ
脚を大きく開き
台の上の脚置場に足を載せると
動かないようにベルトで固定された
全身鳥肌が立つほどの痛みは生まれて
初めて経験した
いつの間にかあたしは痛みで叫んでいた
「叫んでも大丈夫ですよ
声を出した方が痛みが引く人もいますから」
助産師の励ましもむなしく
ひたすら叫んだ
女性の産科医が到着し
ゼリーを塗った手であたしの陰部を
マッサージする
自分とジョージ以外に触られた
所がない所だ
いや・・・・
その前は多くの男性に触られた
ミス・ヨーコやセリナさんにも・・・
こんな時に何を考えているのやら
自分がおかしくなった
「まだいきんではダメですよ!
子宮口が裂けてしまいますからね 」
そしてやっといきむのを許されたとき
あたしは一気に痛みと一緒に外に何かを
出すようにいきんだ
そのいきみで子宮口が信じられないくらいに広がり羊水と血液が溢れだした
それはあたしの足の間を流れ
肥沃な川の匂いが部屋を満たした
「ハイ!
いったん休憩しましょう
息を小刻みに吐いて
ハッ!ハッ!ハッ!ハッ! 」
助産師のかけ声と共に必死で
息を吐く
あと1分このままだと死ぬかもしれない
分娩台の持ち手を握りしめる手に
自分の爪がくいこむ
「会陰切開! 」
バチンッバチンッ!
アソコを切られるのは知識で知っていたけど
このタイミングだとは思いもよらなかった
しかし全身毛穴が広がり
背骨がバキバキに何かに
押し広げられている痛みに比べれば
陰影を切られているのなんか
少しも気にならなかった
もうどうでも好きにして
その時ポンと音がした
「はい!頭が出ましたよ!」
あたしは目を見開いた
手術用のライトとひたすらにらめっこする
濡れた大きなものがズルズルと
体から滑り出してきた
その途端痛みは瞬時に引き同時に
爽快感が体に沸いた
朦朧とする意識の中
しゃがれた赤ん坊の泣き声を聴いた
「おめでとう!
女の子ですよ! 」
私は分娩台の枕に頭を押し付け
精一杯呼吸を整えた
安堵と歓喜の大きな笑みを浮かべて
こめかみに濡れた髪がへばりつく
力いっぱい分娩台を握りしめていた
手のひらは赤くジンジンしている
部屋中に赤ん坊の泣き声が響く
へその緒を切られとなりで新生児の
処理をしてもらっている
「さぁ!お母さん
もう一度だけ 少しいきんで」
助産師が優しく語りかけ
あたしの撓んだおなかを優しく押した
うっ・・・・・・
不意に弛緩したおなかの奥の方で
胎盤が剥がれ落ちるのがわかった
最後のいきみにおなかが震え
後産が滑り出た
長い月日娘との肉体的絆をあたしの体が
ついに放棄したのだ
感動でもう泣くしかなかった
しばらく分娩台に寝かされ休憩すると
子宮の収縮を施して出血を抑える
錠剤を飲まされた
大きなナプキンを当てられ
汚れた手術着を着替えさせられて
綺麗にしてもらった頃には
すっかり助産師さんと医師に感謝の
思いしか現れなく再び感動で涙していた
本当に助産師ってすごい仕事だ
一人ではとても乗り切れなかった
「とても美しい子ですよ」
ピンクのおくるみにくるまれた
初めて見る我が子は
助産師さんが言った通り輝いていた
「おなかをすかせているのかしら?」
叫びすぎてクタクタだったけど
不思議と母親の使命感のようなものが
あたしを急き立てる
「お乳をあげてもいい?」
助産師さんはにっこりほほ笑んだ
「まぁ 優秀なお母さんね
あげてみて
生まれたばかりは眠る子とすぐにお乳を
飲みたがる子がいるから」
あたしは新しい妊婦用のパジャマの前を
はだけた
このパジャマは授乳が出来るようになっていた
大きく張った乳房をむき出しにして
ぎこちない手つきで赤ん坊を
自分の方にむかせると
乳首を赤ん坊の口に持って行った
乳飲み子は大きくグワッという音を立てて
すごい勢いで乳首に吸い付いたものだから
あたしは驚きに目をみはった
「吸い付く力がとても強いでしょ?
そのまま乳首を引くと裂けるから
気を付けてね 」
助産師がニコニコしながら言った
ぐいぐい吸い付いている我が子を
見ていると胸がいっぱいになった
「ゆり・・・ちゃーん・・」
笑っているあたしの口元に涙が流れ込み
すこししょっぱかった
そしてあたしはものすごく泣いていることにはじめて気づいた
ジョージ・・・・
ジョージ・・・・
産まれたよ
あたし達の子よ
:*゚..:。:. .:*゚:.。:
10年後
大和川を見下ろす丘のいただきに
【児童福祉養護施設太陽学園 】
はあった
新品の校舎のようではなく
かといってみすぼらしい建物でもなく
壁のペンキがはがれ
落ちているのをのぞけば
ちょっとした教会のような施設が草原に
ポツリとたたずんでいた
よく磨かれた床を歩くと
大勢の人が一つ屋根の下で
暮らしている匂いが鼻についた・・・
それは けっして一般家庭には
漂っていない施設独特の
匂いで・・・・・
そしてその学園長室には
マホガニー製の大きな事務机があり
その後ろには東洋製の天井につきそうな
ほどの大きな本棚があった
ユリは本の多さに圧倒されそうになったが
なんとなくここの雰囲気は好きになれそうだと思っていた
胃を捩られるような
緊張が全身に降りかかっている
学園長はユリを部屋に呼び出して
何かもの想いにふけっていた
ユリは学園長の後ろにある
窓の外で自由にイヌワシが
空を低く旋回して飛んでいるのを
ボーっと見つめていた・・・・・・
葉山学園長は前学園長から
この学園を引き継ぎ
ユリを自分の子供のように
かわいがってくれている
でも今はユリは手を後ろに組み
とても緊張していた
もしかしたら
「あれ」を誰かに見られたかもしれない
葉山学園長は
今は10歳になるユリを
じっと見つめていた
この子が生まれた時
この子の母親のユカにつきそって
病院に行った
生まれたばかりのこの子を
母親以外に最初に抱き上げたのは
他でもないこの自分だ
母親に似てこの子もこんな小さいのに
もう美しさの片鱗が現れている
葉山学園長はずれたメガネを少しあげ
気が重いがこの子のためを思って
今から大事な事を教える決意をした
そう・・・・・
二度と母親と同じ過ちを繰り返さないために・・・
他の学園生の報告を聞いた
最近この子が近所の中学生の
男子生徒の家を出入りしている事を・・・
葉山学園長はその話を聞いて
いやな予感がした
前学園長からこの子の母親の事は
聞いていた
迫りくる危険から身を守るためには
正しい知識と警告が必要だ
複雑に考えていた思考を
今一度つなぎ合わせ
遥か昔から培われてきた
男女の営みとそれに伴う代償を
このわずか10歳の少女にわかりやすく
説明しなければいけない
学園長は大きくため息をついた
なんとも神は酷な試練を与えたもうたものよ・・・・
ああ・・・
マリア様
この子を守りたまえ
学園長は彼女の目を見つめた
彼女は迫りくる車のライトに射すくめられた鹿のように大きく見開いた
しかしその眼は学園長を見ていなかった
言わなければならない
ますます気が進まなくなった
それを言うのに自分の言葉が見つからない
学園長は聖書を開き救いを求めるように
パラパラめくり話しはじめた
「いいですかユリ・・・・・
あなたはSEXという言葉を知っていますか?」
.:*:‘゜.:*:‘゜.:*:‘゜.:*:・
.:*:‘゜.:*:・
:*:・
【完】