テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
キャラ崩壊あり
パクリなし
性格結構違う
解釈違いごめんなさい
ドズル社がもしもない世界だったのなら
カチ、カチ、と時計の針が静かに進む。
部屋の中に響くその音は、人生の一瞬一瞬を刻むものだった。
ドズル
医師としての生活は、ほとんど休みのない日々だった。若い頃、病院の研修で一晩中付き添った患者の容態が急変し、何もできずに見送った夜の記憶が、今も胸に刺さっている。
その夜の出来事は、彼を冷静にし、仕事に対して完璧を求めさせた。だが同時に、人との距離を遠ざけるものだった。
朝の病院は、まだ街が目覚める前から騒がしい。白衣のポケットには処方箋とメモの山。
「次の患者……間に合うか」
廊下を駆け抜ける足音、モニターのアラーム、患者の声が絶え間なく重なる。
忙殺される毎日。医者としての使命感は重い。救える命もあれば、救えない命もある。胸の奥に時折、孤独が差し込む。
診察室の扉を開けた瞬間、ふと目に入った高校生の姿——肩を少し丸め、怯えたように座っている。顔は見えないが、なんとなく懐かしい匂い。
ドズルは淡々と診察を進め、処方箋を手渡す。高校生は何も言わず、ただ手渡された紙に触れ、その温かさを心の奥で感じるだけだった。
その高校生は振り返らず、静かに病院を去る。ドズルも誰なのか気づかないまま、次の患者へ向かう。
夜になれば、自宅の小さな机の上で資料を整理する。窓の外は暗く、街の光は遠く淡い。ふと学生時代の思い出が頭をよぎる――笑い合った仲間たち、夢を語り合った夜、でも今の彼にはそれを共有する時間も、余裕もない。
誰とも交わることのない孤独が、時間とともに重く胸にのしかかる。
ぼんじゅうる
小さな舞台の袖で、セリフを噛んだ自分に笑いながらも、心の中では焦燥が渦巻く。
「もっと上手くなれなきゃ、認められなきゃ」
何度もオーディションに落ち、疲れ切った体を抱えて帰る夜道。自分の声が響く劇場は、もはや夢を映す鏡ではなく、失敗の記録になっていた。
小さな舞台の袖で、セリフを噛むたびに心の奥が締め付けられる。観客のまばらな視線。誰も彼の努力を褒めてくれない。
子どもの頃、父親の暴言で自分の声を押し殺していた。舞台の上で笑うことができたのは、ほんの一瞬、自分を解放できた時間だけだった。
帰り道、雨に濡れた路地で足を滑らせた。
家に帰り、久しぶりに出したギターを弾いた。
それはとても下手なものだった。
ギターの弦が切れた。悲鳴も出ない、ただ疲労だけが体を押し潰す。
「俺は……何のためにやってるんだろう」
それでも、舞台で得たわずかな拍手が、彼の心の奥で小さく光を灯す。知らぬ間に、誰かの希望や思いと交差していることに気づくのは、まだ先の話だ。
ふと、スマホで流していた動画を見ると丁寧な、見て欲しいと叫ぶような編集をしているものを見つけた。
その編集をした人の名前も顔もわからないけど、その人の心の温かさを感じた。
おんりー
周りの人間の期待に押しつぶされる高校生。
親からの期待、周囲の評価、自己犠牲の重圧——すべてが重くのしかかる。
小学生の頃、友達に裏切られたことがあった。信じていたのに、笑い者にされ、心は深く裂けた。それ以来、人を信じることも、甘えることもできなくなった。
高校生になった今、部活や勉強、将来への期待に押しつぶされ、夜ごと枕に顔を埋めて泣く日々。
周囲は天才扱いをやめない。できるはずのことを期待されるたび、心の中は叫びでいっぱいになる。
「もう、限界……」
でも誰にも見せられない。笑顔の裏に、泣きたい気持ちだけが溜まっていく。教室で友達が笑う声も、自分には届かない。孤独だけが肩を押しつぶす。
誰かからの期待に押しつぶされ、毎日が重圧の連続。
「また、やらなきゃ……」
体も心も限界に近い。誰にも頼れず、笑顔の裏に隠れた涙は毎日少しずつ乾くことはない。
放課後、熱を抱えて病院へ向かう。診察室で受け取ったのは、医者の淡々とした診察。
しかし、その手の温もり、声の落ち着きは、何か不思議な安心感を与える。
おんりーは小さく息を吐き、何も言わずに病院を後にする。助けを求めたわけではない。ただ、ほんの少しだけ「生きる力」をもらった気がした。
夜、布団に潜り込むと、孤独はさらに濃くなる。
誰も知らない苦しみ、誰も届かない涙。
おんりーは初めて「生きる意味」を問いかける夜を迎える。
しかしその問いに答えはなく、ただ時間だけがカチ、カチ、と冷たく過ぎていく。
おらふくん
かつてはトップを走ったプロゲーマー。しかし今は勝てない。試合の結果は冷酷で、視聴者もチームメイトも厳しい目を向ける。
「どうして…前みたいにできないんだろ……」
夜な夜な画面を見つめ、昔の自分のプレイ動画を反芻する。ゲームの光は虚しく、孤独が背後から笑う。
画面の向こうの観客の声は、かつての輝きを映さない。勝てない自分に苛立ち、孤独な夜が続く。
かつて親友だったライバルに勝てず、嫉妬や焦燥、孤独に押し潰された夜を思い出す。
そして、ある雑誌の隅っこに、偶然ある小さな俳優の舞台情報が載っているのを見つける。
「こんなに、小さな努力が報われる日はくるのかなぁ…」
そんな少しの希望を抱きながら眠りにつく。
おおはらMEN
友達のYouTubeの手伝いをする毎日。カメラの前で笑顔を作るが、誰も彼の存在を真剣には見ていない。
「俺は……何やってんだろな」
編集や企画に追われ、夢は他人の影に隠れたまま。過去の自分の理想は遠く、現実は色を失っている。
幼い頃、家族の事情で孤独を覚えた。兄弟も少なく、友達も少ない環境で、常に誰かの影に隠れるしかなかった。
今もYouTubeの手伝いをして、笑顔を作り、編集や企画に追われる日々。
そして偶然、過去に夢中になったゲーム動画を見つける。
その動画は、あるプロゲーマーのものだった。
久しぶりに見て、努力が見えて、いつのまにか手がコメントを打つ。
気づかないまま、存在を交差させる。
「……こんなに必死にやってる人もいるのか」
手を止め、ほんの少し胸が温かくなる。
時間の中で、知らぬ間に線が交差している———それだけが、孤独の中の小さな光だった。
街の時計は止まらない。カチ、カチ、と無情に刻まれる時間。
五人の孤独、悲惨な過去、そして今の現実は、それぞれに重く、痛く、切ない。
だが、誰も気づかぬところで、ほんのわずかな交差がある。
見て欲しいと感じるもの、コメント欄の一言、雑誌から感じる小さな努力——すべてが時間の中で微かに響き、彼らの心に静かな光を残す。
出会うことはない。助け合いもない。
それでも、時間の中に埋もれた小さな瞬間が、五人の人生に静かに息づいている。
カチ、カチ、と。時計の音は今日も進む。
誰にも知られず、しかし確かに、交差した人生を見守りながら。
タイトル:カチ、カチ、と刻まれる時間 ―海辺の交差―
カチ、カチ、と時計の音が響く。
止まらない時間に、五人はそれぞれ逃げ場を探していた。
ドズル
白衣を脱いだ。
「今日は……もう無理だ」
机に積まれたカルテを置き去りにして、病院を出る。逃げるように歩きながら、心臓の鼓動と時計の針が重なる。
ぼんじゅうる
電話を切った。舞台監督の苛立つ声が耳に残る。
「今日は休みます」
それだけ言って、携帯を閉じた。責任からも失敗からも、ほんの一瞬離れたかった。
おらふくん
パソコンを閉じた。
「ちょっとだけ、息抜きしよう」
視聴者の期待やコメントから離れ、誰にも気づかれない時間を求めて外に出た。
おおはらMEN
編集ソフトを閉じて、椅子から立ち上がる。
「散歩でもするか」
日常の重圧から、少しだけ解放されるために。
四人が偶然、同じ海に辿り着いた。
空は晴れ、日の光が波間に揺れる。互いに知らないはずの顔を、ただすれ違う人間として横目に見る。
そこに制服姿の少年——おんりーがいた。
一人で、海に向かって歩いていく。
「……学生?」
四人は心の中で同じ疑問を抱く。
おんりーは海に腰まで浸かっても歩みを止めない。制服は濡れ、冷たい波が膝を打つ。
四人は顔を見合わせ、同時に走り出した。
膝を超え、腰まで濡れても歩みを止めない。
白いシャツが重たく張り付く。
「おい! やめろ!」
ドズルが一番早く、海に飛び込む。続いて三人も濡れるのも構わず走り込む。
おんりーは掴まれた腕を必死に振りほどこうとする。
「やめて! 離してよ! 俺はもう、いいんだよ!」
涙と波しぶきで顔はぐしゃぐしゃになり、声は嗚咽で途切れる。
「お願いだから……もう、放っておいてよ……」
必死に叫び、暴れるおんりーを、四人は押さえることしかできない。
彼の小さな体は震え、泣きじゃくる声が海辺に響く。
その声に、四人の胸の奥に沈めていたものが揺さぶられていた。
「大丈夫だ、大丈夫だから」
ドズルがただ繰り返す。
腕を掴む力に迷いが混じる。それでも、放せなかった。
海から離れ、少し歩いた小さな公園。
朝日が差し込み、ブランコや滑り台が柔らかく光に包まれていた。
五人はベンチに腰を下ろし、まだ濡れた服から滴が落ちる。
しばらく誰も口を開かない。おんりーは顔を伏せ、しゃくりあげながら泣き続けていた。
最初に口を開いたのはぼんじゅうるだった。
「……俺もさ、逃げてきたんだ。舞台に立っても拍手は少なくて、失敗ばっかり。昨日だって怒鳴られて……もう嫌になって休んだ。
でも、観客の中でたった一人でも笑ってくれる人がいた時は……ちょっとだけ、嬉しかった」
おんりーは涙で濡れた顔を上げる。
ぼんじゅうるの声は震えていて、けれど真剣だった。
おらふくんが続ける。
「僕はゲーム。ずっと勝ってたのに、最近は負け続けて……ファンも減って。
自分なんてもう誰も見てないんじゃないかって思う。……けどさ、昔一緒にプレイした仲間と笑った夜は、まだ覚えてるんだ」
おおはらMENは砂を蹴って小さく笑った。
「俺も人のYouTube手伝ってるだけで、何の役にも立ててないって思う。
でも、編集してる時に偶然笑っちゃう瞬間があるんだよな。どうでもいいくだらないミスとかで。……そういうのがなかったら、多分もうやめてた」
ドズルは黙って空を仰いでいたが、やがてゆっくり口を開いた。
「……僕は医者でね。人を救うはずなのに、患者を救えなくて逃げてきた。
朝日を浴びながら泣いたこともある。……でも、それでも、子どもが『ありがとう』って笑った顔だけは、まだ忘れられない」
ぼんじゅうるは震える声で言う。
「俺も……何度も何度ももう嫌だって思った。夢が全部、笑われて消えてくんだ」
おらふくんは唇を噛みながら続ける。
「勝てなくなった俺なんて、存在する意味ないって思ってた。でも、まだここにいる」
おおはらMENは波を掻き分けて声を張り上げた。
「俺だってさ、誰かの手伝いでしか生きられないって思ってる。でも、それでも……まだ、時間はある」
そしてドズルが絞り出すように言う。
「生きろ。医者なのに逃げてきた俺が言うのはおかしいけど……未来は、長いんだ」
おんりーは涙に濡れた顔で、彼らを見つめた。
「……本当に?」
「うん」
四人の声が重なり、公園の朝は少しずつ満ちていく。
おんりーは拳を握りしめ、涙を拭った。
「……俺も、学校で期待されすぎて、笑ってごまかして。
……しんどくて、苦しくて、全部なくしたかった。でも……」
嗚咽混じりに続ける。
「でも……誰かに、支えられて生きてたのも、確かで…、少しでも、人に少し、褒められただけでも、やっぱり嬉しかったんだ…」
沈黙が降りる。だがその沈黙は、海での孤独とは違っていた。
四人はただ黙って、頷いた。
太陽はすでに高く昇り、時計の針は変わらず進む。
時を刻む音は止まらない。
逃げた先で、彼らは一瞬だけ交差した。
未来がどうなるかは誰も知らない。
だが、泣きじゃくる少年を囲んで座った五人の影は、確かに同じ時間を共有していた。
カチ、カチ——-。
切なさと、わずかな温かさを残しながら、時計の音が公園に響いていた。
おんりーの頬はまだ涙の跡で濡れている。
それでも、声を震わせながら吐き出した言葉は、誰の胸にも届いていた。
「……ありがとう」
小さく、かすれた声。
四人はそれ以上何も言わなかった。
ただ黙って、同じ時間を共有するように座っていた。
やがて、街の音が戻り始める。
通学の子どもたちの笑い声。通勤のサラリーマンの足音。車のクラクション。
公園は、再び日常に飲み込まれていく。
最初に立ち上がったのはドズルだった。
「……行かなきゃ」
白衣を手に取り、背中を伸ばして歩き出す。
次にぼんじゅうるが立ち、軽く伸びをして空を見上げる。
「休みは休みで、戻る場所があるってことか……」
自分に言い聞かせるように呟き、舞台へ戻る道を歩いていった。
おらふくんはスマホを取り出し、画面を点けて少し笑った。
「……ゲーム、また本気でやってみようかな」
そう言い残し、駅の方向へと足を運ぶ。
おおはらMENはゆっくり立ち上がり、ポケットに手を突っ込んで歩き出した。
「散歩のついでに、戻るか」
独り言のように呟き、街の雑踏に消えていく。
残されたおんりーは、まだ動けなかった。
制服の裾は乾き始めていたが、胸の奥の重さは消えない。
それでも——ほんの少しだけ、呼吸が楽になっている気がした。
朝日が完全に昇り、公園を白く染め上げる。
おんりーは深く息を吸い込み、立ち上がった。
それぞれの足音は、もう重なることはない。
名前を名乗ることもなく、互いの素性を知ることもない。
だが、確かに交差した一瞬があった。
その事実だけが、胸に残り続ける。
星空の下で
夜。
街の喧騒が静まり、遠くから虫の声が聞こえてくる。
空には星が滲むように広がっていた。
おんりーは布団の中で眠れず、窓を開けた。
冷たい風が頬を撫で、星空が視界に広がる。
———海に歩いていったこと。
———必死に引き止められたこと。
———公園で涙ながらに語り合ったこと。
思い出すたび、胸が締めつけられる。
でも、あのときの言葉たちが、心の奥でまだ温かく灯っていた。
「……未来は、長い」
誰が言ったか、もうはっきりとは思い出せない。
けれど、確かにその言葉は残っている。
星空の下で、おんりーはゆっくり目を閉じた。
同じ夜、ドズルも、ぼんじゅうるも、おらふくんも、おおはらMENも——
それぞれ違う場所で、同じように星を見上げていた。
名前も知らない。再会もない。
けれど、ふと浮かんでしまう朝の出来事。
誰にも言えない孤独の中で、あの一瞬だけは確かに温かかった。
カチ、カチ、と時計は夜を進める。
星々は瞬きながら、五人の小さな記憶を空に刻んでいく。
切なく、儚く、しかし消えないまま。
コメント
4件
さ、最高!!!!
やっぱり、こむさんは神ですよね?
やばあ神作✨ おんりー、それ、じさつ?やめろ?