気づけば、私は自分の部屋のベッドに仰向けに寝ていた。
私は今まで長い夢を見ていたような、いや、短い夢を何度も何度も見せられていたような疲労感があった。
もしかして、これも夢なのかもしれない。
今日も世界は突如現れた怪物に支配されている。怪物は全長10m以上はある。
テレビを付ければ、外に出るなだとか、安全な服装で外に出ろだとか(例えるなら宇宙服)、つまらないニュースが一日中放送されている。
私もしょうがないと思う。なぜなら、世界では一日にたくさんの犠牲が出ているから。しかし私は怪物に抵抗することは出来ないのか、それがずっと気になっていた。
対抗しなければ、終わらない悲劇を永遠に見続けることになるだろう。
そんなことは、誰にでもわかっていた。
しかし、皆が皆心の奥底で怪物による「恐怖」「支配」に囚われていた。
怪物は私たち人間をゴキブリのように扱う。
見つければ誰であろうと手に持っている鈍器で潰す。潰す。ぐちゃぐちゃになるまで。
集団で見つければ、口からゴキブリ駆除スプレーのように炎を吐き出す。全員の息の根が止まるまで。
その時、警報がなった。スマホからも、テレビからも、 市内放送からも。
『怪物が○○市に5体現れました。外に出歩かず、家で静かに隠れてください。』
地震速報がなった時のような気持ち。誰もがパニックに陥る音、声。
しかし、音と声だけでパニックに陥った訳では無い。
初めてだった。この地域に怪物は現れたことがなかったのだ。
ここは、唯一怪物が1度も発見されてない県だった。
そのため、色々な場所から怪物から逃れるためにここに引っ越していた。ここにいれば怪物から逃れられるという希望を抱いて。
これで、その希望はこの警報で打ち砕かれた。
あともう一つ理由がある。
私は少し前に言っただろう。
『怪物は集団で人を見つければ口からゴキブリ駆除スプレーのように炎を吐き出す。息の根が止まるまで。』
そう。だから、人が集まっているこの地域は他のどんな地域より危ない。
それも5体も。怪物は普段群れでは行動しないため、5体同時に現れることはほぼない。
危険に危険が重なった今。パニック×100くらいのパニックに陥った人がいてもおかしくないだろう。
私もそうだった。
今まで私は、「なんで皆怪物を駆除しないんだろう」と考えていた。
人の気持ちとはその人と同じ立場になった時しか分からない。
そう思った。
私も怪物による「恐怖」と「支配」に囚われていたのだ。
私は隠れるためにクローゼットに入った。
「お願い、誰か、助けて……」
私の震えながら放った言葉は誰にも届かず闇に消えてしまった。
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