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#モブさく
時雨 雫
61
ただのオタクです(腐女子)
11,993
_放課後_
桜と蘇枋は、空き教室で演技の練習をしていた。
「王子、俺はッ…」
「桜くん、またセリフ間違えちゃったね」
「だぁぁぁっ!!うるせぇッ!//」
カーテンの隙間から夕日が差し込み、誰もいない教室は静かだった。
「練習、続けようか。」
蘇枋がゆっくりと台本を開く。
桜は腕を組んだまま、不機嫌そうに立っていた。
「まずは、台本をしっかりと読もう。」
蘇枋が台本に目をおとす。
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「……無理だ。」
桜が台本に突っ伏した。
「全然覚えられねぇ……。」
蘇枋は向かいの席で、くすりと笑う。
「まだ三ページだよ?」
「三ページだからだ。」
「それ、どういう理屈?」
「知らねぇ。」
桜は髪をぐしゃぐしゃとかく。
「戦うなら覚えられるのに。」
「喧嘩の動きは覚えられるの?」
「体で覚えるから。」
「なるほど。」
蘇枋は少し考えてから台本を閉じた。
「じゃあ、読むだけじゃなくて実際にやろう。」
「え?」
「向かい合って。」
「……向かい?」
「うん。」
桜は首を傾げながら立ち上がる。
二人は教室の真ん中で向かい合った。
「まずは最初。」
蘇枋が柔らかく笑う。
「俺が王子で、桜くんが白雪姫。」
「その確認いらねぇ。」
耳が赤い。
「はい、一行目。」
桜は台本を見ながら、
「えっと……『アナタハドナタデスカ?』」
棒読みだった。
「もう一回。」
「『あなたはどなたですか?』」
「もう少し感情を込めて。」
「感情?」
「初めて会う王子だよ。」
「知らねぇよ。」
「じゃあ俺を見る。」
「……は?」
「台本じゃなくて。」
「なんで。」
「相手の顔を見た方が覚えやすいから。」
「……。」
桜はしぶしぶ顔を上げる。
目が合う。
にこり。
いつもの穏やかな笑顔。
「……。」
桜は数秒で視線を逸らした。
「見れねぇ。」
「どうして?」
「なんでもねぇ。」
桜は、何故か変に意識して、顔が真っ赤になってしまっていた。
「もう一回。」
桜は、意を決したように呼吸を整えて言い放った。
『……あなたは、どなたですか。』
今度は蘇枋の顔を見ながら言えた。
「うん、いい。」
「……ほんとか?」
「すごく自然。」
褒められた桜は少し照れくさそうに鼻をかいた。
「そ、そうか。」
「次。」
「今言えっと……。」
桜は固まる。
「忘れた。」
「今言ったばかりなのに?」
「〜ッ//」
蘇枋は思わず吹き出す。
「桜くん。」
「笑うな。」
「ごめん、ごめん。」
肩を震わせながら笑っている。
「じゃあ、もう最後のシーンだけでも練習しちゃおう」
「おう…ん?…」
桜は次の文を見て固まった。
「…………。」
「どうしたの?」
「いや、これ。」
指が震えている。
「……ちゅ、ちゅちゅっ…ちゅーじゃねぇか。」
「そうだね。」
「はぁっ!?無理に決まってんだろッ/// 」
桜は、赤くなって叫んだ。
「実際にはしないよ。」
「……え?」
「顔を近づかせて口付けしてるフリだけすればいいから。」
桜は目に見えて安心した。
「よかった……。」
「じゃあ、立ち位置だけ確認しよう。」
「お、おう。」
二人は床に貼られた目印のテープへ移動する。
「桜くんはここ。」
「……。」
「俺はここ。」
「……近くねぇか?」
「舞台だと、このくらいじゃないと客席から分からないらしいよ。」
「う……。」
桜はぎこちなく立ったまま固まる。
「力、入りすぎ。」
「入るだろ。」
「深呼吸。」
「なんでお前はそんな平気なんだよ。」
「慣れてるわけじゃないよ。(平常心、平常心…)」
穏やかな笑顔で返され、桜は少しだけ落ち着きを取り戻す。
「じゃあ、最後の場面。」
蘇枋が一歩前へ。
桜は、眠っているフリをするため、目を閉じる。
二人の距離が縮まる。
「……。」
「……。」
桜は思わず視線を泳がせた。何故か蘇枋が本物の王子様のようにキラキラと輝いて見えるからだ。それどころか蘇枋の周りにバラの花が舞い散るような幻覚まで現れる。
「目、合わせられない?」
「うるせぇ。」
「客席には顔が見えるようにしたいから、少しだけ前を向こう。」
「……こうか。」
「うん、その方が自然。」
『あぁ、愛しき姫。僕の君への愛の力で…』
そう言って蘇枋が顔を近づける。
桜は、あまりの緊張で頭が真っ白になっていた。
「う、うわぁぁぁっ!!」
とうとう恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、迫ってくる蘇枋を押し返した。
「( ゚д゚)ハッ!ごめん蘇枋…」
「いいよ別に、やっぱりこんなの嫌だよね…桜くんは、恥ずかしいよね…」
蘇枋が少し切ない表情をする。
「今すぐにでも役を交代して…」
「やるよ!」
「!!桜くん…」
「バカにすんな蘇枋!本番はちゃんとやれるっつの」
「練習なんかくだらなくって気が乗らないだけだし!」
「さっさと次のシーンの練習すんぞ。」
コメント
1件
うわ、第2話も可愛いすぎる……! 文化祭の劇練習ってだけで胸が温かくなるのに、桜くんの照れ方が本当に愛おしいです。台本を読むだけで真っ赤になって、蘇枋くんの「平常心」の心の声が逆にギャップ萌え——。顔を合わせられない距離感がじれったくて、でも眩しい。おとぎ話の王子と姫を自分たちの形で演じようとする空気が、夕日の教室にすごく似合っていて、ロマンスファンタジーとしての片鱗も感じます。次の展開が気になります!