「今日も天気が良いな。橘樹権宮司よ」
「はい。今日は晴天で、比較的過ごしやすいでしょう」
淡々と語るこの者は橘樹翼彩。神宮内では女性と見られるように髪飾りとして大きな紅のリボンをつけている。本人曰く邪魔。の一言だが。
「それより…橘宮司はいるか?」
「ええ。本日は水城屋敷の方に。…案内しましょう」
「助かる」
***
「橘宮司。立花家当主様がおいでです」
「……通しなさい」
その一言を聞き、煌神をエスコートしてその場を去った。
「本日もお疲れ様でございます。今夜の怪異の出現予告はありませんので久々の休息になるかと。ですが、急遽応援の方に行ってもらう可能性もあるのでよろしくお願いします」
「心得た。その言葉、忘れないでおこう」
「はい。では……」
と、終わろうとしたところ何やら慌ただしくなっていた。
「橘樹宮司!伝令です」
「……一体何かしら」
「両家の担当区画から、異質怪異の出現があったそうです。神楽坂家では数が多く苦戦しているとの…」
「まずいわね…ねえ、立花さん、貴女は神楽坂さんの支援に回っていただけるかしら。翼彩、貴女は源家よ」
「承知しました」
煌神は疑問に思った。何故彼女に祓いをやらせるのだろうと。もちろん神職に就いている都合上、霊力は人並みよりあったり扱いも多少知っているはずだが…祓い屋を主としているわけではない。では何故…
と考えているうちに翼彩はリボンを外してたすき掛けをし動きやすくしていた。
「私はもう行く。当主もお早めに」
「ああ…承知した…」
そう確認とるやいなや颯爽と駆け去って行ってしまった。仕方がないので自分も行くことにした。
***
「―――状況は」
「ほぼ討伐仕切ったけど…問題はあの異質怪異です」
「……ここは任せて。後始末が終わったら応戦よろしく」
その言葉を残し、煌神はその異質怪異と交戦する。しかし、意外に強力だった。
「チッ……」
ずっと小賢しい真似をしてくるので堪忍袋の緒が切れ、数本水から氷に変えた槍を投げつけて固定し、大きな札で抑え込んだ。そして、祓った。が、祓ったはいいものの、次々に湧いて出てくるのだ。
「ああ、もう!まだ来るの?!永環!」
「そんなに呼ばれなくても分かりますよ。もう、せっかちなんですから」
と、何とも痛いところを付いてくる。これを言われればぐうの音も出ないから困ったものだ。
「もう、一発で決めようか」
「……こればかりには同意見です」
そう、意見が揃ったところで二人は準備を始めた……
***
「―――どうも、ごきげんよう。……さすが源家長男、ほぼ祓いきっているようですね。それから、兄のことをよく理解した源家次男までも」
「……来るのが遅いよね!橘樹翼彩権宮司様は」
「何言っているんですか?貴方達のことだからとっくのとうに終わっていると思っていたのですが。どうやらそれは見当違いだったようですね」
「何?喧嘩売ってんの?」
「わわ!兄ちゃん、喧嘩は良くねぇって! 」
「あはは。そんなことないよ光」
……やはりこの兄、弟には相変わらず甘いようだ。
「嫌ですね。喧嘩だなんてとんでもない。私はあくまで事実を述べているだけですよ。ほら、あそこ。異質怪異がうじゃうじゃと湧いているではありませんか」
そう指を指した先には確かに怪異が湧いている。
「……はあ。まだいたんだねここは……」
「…少しは私に頼ってみては?そのためにここへ来たのですから」
言いながら光の速さでかけていく。そしてあっという間に怪異を一掃した。その一掃した道具は、かつての立花家当主が使っていたものと瓜二つ。
「……やっぱり、腐っても立花家ってことね…」
「…バレていましたか」
「もちろんだよ。だって―――」
こう語り、知るものはこの二人のみである―――
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