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それは、初めてミスティが子供を産み、アリコが乳母として授乳してやった時のこと。
アリコの血のつながった我が子のラキが乳離れが済んだある日。縄張り争いが勃発しました。レッド・サークル対ライトブルー・サークルの争いです。アリコもミスティもレッド・サークルの一員として精一杯戦いました。
しかし、アリコとアリコの娘、ラキは側で離れずに戦っていました。しかし、アリコが敵に囲まれ、ラキのことに構ってられなくなって、しばらく相手との戦いに集中していました。少しでも自分と、ミスティと、ラキと、縄張りのために戦いました。鋭い犬歯を見せつけながら突進して、ようやく蹴散らすことができたとき、アリコの体は傷だらけでところどころハゲている部分もあり、ハッハッ‥というように体力的にもだんだんつらくなっていく様子でした。しかし仲間の中には、血が出ていたり、この前のアリコのように体の一部がちぎれていたりと散々な子もいました。それに比べ、ライトブルー・サークルは傷こそあってもピンピンしているようでした。このままではレッド・サークルが乗っ取られ、全員放浪ワオキツネザルになりかねません。死に物狂いでみんな戦います。
そしてアリコがようやく一息ついた後、ようやく娘のラキがいないことに気が付きました。慌てて周りを見渡すアリコ。そして少しだけ離れた木の中心部のあたりにラキはいました。周りは敵でいっぱい。小さな口を開けて威嚇していますが、じりじりと迫って攻撃をしかけけてきます。木の上にいるラキは逃げたり避けたりで手一杯。アリコは木に駆け寄りました。そして、そろそろと木に登り、手を差し伸べた時。
ラキの左上にいたライトブルー・サークルのメスが大きく口を開け、飛びかかろうとしてきました。慌てたラキはバランスを崩し、左上のメスに気を集中させてしまいました。
すると、それを狙ったラキの右上のメスが一気にジャンプしてバランスを戻しかけたラキに飛びかかってきたのです。距離が一気に近くなりました。
ラキは仰向けになりながらさらにバランスを崩し、手を踏み外してしまいました。アリコが助けに行こうにも邪魔されてどうしてもいけません。
木にしっかり抱きついて睨みをきかせるラキ。しかし、効果は思うように行きません。
ライトブルー・サークルのメスたちは、嘲るようにして仲間に目配せをし、あの時飛びかかった右上のメスが、枝をしならせ、勢いよく飛び出してきました。
逃げようとするラキの背中にメスの爪がシャッとかすりました。気を取られたラキが振り返りかけると、ラキはバランスを崩しました。このままではラキは木の下に落ちてしまいます。間違えれば死んでしまうこともあります。安全に降りれたとしても、地上の方が相手に有利になってしまいます。
その時。
パシンッ
ムチのような音がして、今にもラキを引き裂こうとするメスとラキの間に大きな灰色の者が飛んできた。
ちろっ。
飛んできた灰色の者が一瞬、ラキのことを見つめた。
飛んできたのは、ミスティだった。あっという間にラキを囲む敵を追い払い、ラキを守った。
ミスティは、あの時の温もりをまだ、忘れてはいなかった。自分の子を活かしてくれた恩を。
ミスティは、周りに敵がまた寄ってきているのに動きを止めた。何かが、カチッと外れたような音がしたような気がした。
次の瞬間、驚く速さでまたよって来た敵をちりぢりに追いやった。その隙に、アリコはラキを助けることができた。
ラキを抱え、思いっきりジャンプをして、その場を切り抜けることができた。
アリコがあの時出した思いやりは、ミスティが体を張って返してくれたのだ。