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時は江戸時代、場所も江戸。新たに任命された改革派大名、佐藤重蔵は、従来のしきたりを打破し、江戸を変えるべく、着々と改革を進めていた。しかし、彼の改革案は、不安と困惑を呼ぶものばかりだった。
ある日、佐藤重蔵は江戸の町で流行している「五七五茶屋」に目をつけた。この店は、茶屋の店員が五七五の歌で注文を受け、客がその歌に合わせて注文を返すという独特な風習があった。佐藤はこれを「江戸の無駄な遊び」として廃止を決意。
「これは無駄な演出だ!」
改革を進める重蔵は、その日のうちに通達を出し、江戸内全ての茶屋に対して「五七五」を禁止する命令を下した。しかし、この命令は一部の江戸の人々に大きな混乱を招いた。
茶屋の店主、石田は驚き、すぐに「五七五」を従業員に告げるも、誰も納得しない。
「おい、五七五をやめろと言われても、どうやって商売を続けろっていうんだ?」
「簡単な話だろう」と石田は答える。「注文の返事を四七六にすればいいんだ。」
別の茶屋の店主、吉田はしばし黙っていた後、答えた。「お上の思う通りには行かないんじゃないか?」
その晩、佐藤重蔵は元老たちと集まり、新たな改革案を発表した。それは江戸全員に「黒い服」を着ることを義務化するものだった。理由は「江戸の街を引き締めるため」だという。 しかし、彼がその案を発表した瞬間、元老たちは顔を見合わせ、互いに小声で言った。
「黒い服って、あれだな…。葬式の服にしか見えないが…」
佐藤はこの改革が市民にとって「命の象徴」であると信じ込んでいたが、予想通り、町には葬式のような雰囲気が漂うことに。さらに、黒服が普及するにつれ、「葬式屋」や「墓石屋」などが急激に商売を伸ばし、逆に江戸の経済は活況を呈した。
その結果、佐藤重蔵は、周囲から「おかげで町が明るくなった」と皮肉交じりの評価を受け、改革が失敗として幕を閉じた。しかし、彼は全く気にせず、次の改革案として「牛の鳴き声禁止」を発表した。理由は、「江戸の昼間に牛が鳴く音が、人々を不安にさせるから」だった。
またしても、町は混乱に包まれた。
そして、佐藤重蔵は、満足そうに言った。
「さあ、次はどんな改革をしようか。江戸を根本から変えるんだ。」
この瞬間、彼が最後に思い描いていたのは「平和な江戸」とは程遠い、無駄な変化ばかりの世界だった。