テラーノベル
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オレが殺されてから、一体どれぐらいの時が経ったのだろうか。
身体はもう動かない。
いや、もう動かないと言ったほうが
近いだろう。痛みも苦しさも、何も…何も
オレには残ってはいない。
ただ単に、ぼんやりとした意識だけがその場に残っている。まるで、オレの魂が
「この世界にまだ留まっていたい」と
訴えているように。
このオレ、シャルナーク=リュウセイは、幻影旅団のNo.6として生きてきた。
だけど、終わり方《シニカタ》なんて予想できなかった。
ヒソカに殺られたんだっけ…?
あれ、思い出せない。記憶が曖昧だ。
けれど、死んだことだけは確かに理解は
している。
公園は怖くなるほど静かでオレの身体はらブランコにまるで
操り人形《マリオネット》のように歪で
そして美しく飾られている。
すると突然、足音が近づいてきた。あまりにも静かで威圧感だけがそこにある歩み。
姿が見える。……いや、感じてると言ったほうが近いだろうか。
黒のコート。
黒の髪。
額にある十字のタトゥー。
クロロだ。
クロロの匂いがする。いつもより濃く、
そしてどこか腐ったような匂いが
漂っている。クロロはオレの前に膝をつき、顔を覗き込んだ。
瞳はまるでブラックホールのようで気を抜くと吸い込まれてしまいそう。そんな瞳がオレの死んだ麺をじーっと見つめた。
「……………シャル」
名前を呼ぶ声が、震えた。
クロロの手がオレの顎を掴んで、顔を
起こさせる。死体は抵抗なんかできない。
ただ、ぐにゃりと首が曲がるだけだ。
クロロはオレの唇に、自分の唇を重ねた。
それは欲に身を任せたレイプのようなキスで、冷たい死体の唇に、熱い舌を ねじ込まれる。舌は深く、深く……喉の奥にまで
侵入してきた。クロロの死体がオレの舌を絡め取って、乱暴に吸い上げる。唾液が
オレの口の中に流れ込んで、オレの喉を
伝って食道に落ちていく。
クロロはラブドールにするようなキスをしながら、オレの腹の中に指を突っ込み、
血の塊を掻き出し、指ごとオレの口に突っ込む。
「…………もっと、味わせてくれ」
クロロの声が低く掠めた。
すると、突然クロロの身体が震え始めた。
喉から……いや胃の奥から、『ぐう』っと
音がして、それから…次の瞬間熱いものが
オレの口の中に噴き出した…。『嘔吐』だ。
クロロが死んだオレの口の中に
吐いたのだ。いやな酸っぱさと苦さ。ほぼ胃液だけのゲロがどろりと溢れる。
オレの口からゲロの逆流して頬を伝って
落ちる。それでも、クロロは決して唇を離さなかった。むしろ、オレの口に自分の吐瀉物を押し戻すように、舌でかき回す。
それはいわゆる、ゲロチューであった。
オレの口とクロロの口が、ゲロで繋がっていて、ぬるぬるとした血の塊が、オレ達の舌の間を往復する。クロロは嗚咽のような息を漏らしながら、オレを強く乱暴に抱きしめて自分から出てきたものを、まるで、親鳥が自分の雛に餌を与えるように口移しをする。
「シャル………お前はオレのもんだ……全て、オレの」
ゲロがオレの喉を通って、死んだ食道を滑り落ちていく。胃袋に溜まっていく感覚はないのに、意識だけがその穢れを感じ取っている。
吐瀉物の臭いが、死体の鼻腔に充満して不愉快極まりなかった。クロロはようやく
唇を離し、オレの顔をそっと見下ろした。
オレは口の周りも顎も…ゲロでべっとり汚れている。まるで顔射でもされたように。
クロロの眼には涙が浮かんでいて、けれど歪に笑っている。
「…綺麗だな、シャルは……」
そう呟いて、もう一度、汚れた唇を重ねていく。今度は優しく、ゆっくりと…。
恋人同士のようなキスであった。
ゲロまみれの舌が、死んで感覚もない舌を優しく撫でた。
─────
そこには、もうほとんど
残されていなかった。ただ、最後に残っていたのは吐瀉物まみれの穢れた死体と狂った欲望の黒髪の男だけが取り残されていた。
残酷だが、それだけが真実であった。
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