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第十三章 反攻
《2025年9月8日》
「これより対ナシル反攻作戦…作戦名ファイヤアローのブリーフィングを開始する」
スクリーンに傾斜した空母の画像が映る
「まず…第2空母打撃群の《CVN-69ドワイト・D・アイゼンハワー》だ
かつて巨大な飛行甲板を誇った艦は、現在は損傷箇所を隠すことなく映し出されている。
「敵の高高度攻撃により飛行甲板の一部を損傷。現在、航空機運用能力は停止しています」
会議室には沈黙が落ちる。
「しかし……」
士官が次のスライドを表示する。
そこには別のデータ。
「アイゼンハワーは沈んでいません」
「そして護衛艦隊も完全には崩壊していない」
「そこで我々は相手の意表を突きにいく」
「具体的な作戦はこうだ
第10空母打撃群を囮に使い高度26000にいるであろうナシルの早期警戒管制機EB3を落とす」
ブリーフィング会場にざわめきが広がる…
「そんな…現状の我々の装備では高度26000に届きません!!」
士官が言った
「そうだな…だから我々は空軍に協力を仰いだ…
突貫改修だが空軍のF22に空母設備を取り付けた…これを後方の第11空母打撃群から…発艦させEB3を…できたらFG.2を落とす」
「空軍は了承したんですか!?」
F/A18Eのパイロットが叫ぶ
「ああ…空軍にも許可は取ってある…だが…下手をすれば一度飛んだら最後…二度と帰ってこれなくなるがな…」
「そんな…F22は艦載機じゃないんですよ!!アンタ…正気か!?」
「いたってまじめだ…ここで…機体を潰す覚悟で敵の目(芽)を潰さないといけないんだからな…」
F/A18Eのパイロットが机を叩き叫ぶ
「どうして!そこまでするんですか!!海軍だけでやれます!!SM3でもなんでもやり方はあるでしょう!!」
「なんで…現場改修の!4機しかないF22を使う必要があるんですか!?」
会議室は静まり返った。
司令官はすぐには答えなかった。
数秒後、ゆっくり口を開く。
「……君の言う通りだ」
「この作戦は無茶だ」
「F-22は艦載機ではない。空母から飛ばすこと自体が賭けだ」
「4機しかない機体を失う可能性もある」
司令官はスクリーンを見る。
そこに映るのは、ナシルのEB3。
「コイツには…空軍のB52Hを落としたとされるレーザー兵器を積んでいるとのことだ…」
「一撃で、警報もなしにB52Hを溶かしたんだ…艦艇に当たれば…両断か、薙ぎ払われるか…その2択になるだろうからな…」
司令官は続けて言った
「だから通常の航空機では接近した瞬間に終わる」
「F/A-18では高度が足りない」
「F-35でも速度と上昇能力が不足する」
「ミサイルを撃つ前に撃ち落とされる可能性がある」
士官が息を呑む。
「……だからF-22ですか」
司令官は頷く。
「そうだ」
「高度、速度、ステルス性」
「現時点で、この条件を満たせる可能性がある機体は……あれしかない」
「ただし問題がある」
司令官は一拍置く。
「F-22は空母から飛ぶために作られていない」
「着艦も想定されていない」
「つまり――」
「帰還できる保証はない」
「空軍のファイターパイロットには迷惑をかれるな…」
「そして…あの新型レーザー兵器の弱点も…我々はまだ理解できていないんだ…」
「出力も…射程も…照射時間も…冷却能力も…防御システムも…」
「現時点では、何も分かっていないんだ…」
「だが…現場改修だが…F22に新開発の耐熱塗料を塗布してある…重量が少し増えたが…少しは耐えれるはずだ…」
「コイツなら…奴の懐に入って戻れる《可能性》が一番高い…他の機体をだして…いたずらに機体を失うよりはずっとマシだ」
ブリーフィング会場は重い沈黙に包まれた…
「たしかにいたずらに失うよりはマシですけど!!」
その沈黙をF/A18Eのパイロットが破る
「……それでも……F-22は陸上機です!!」
その言葉が、静まり返った会議室に響いた。
F/A-18Eのパイロットは、感情を抑えきれないように続ける。
「空母から飛ぶことが前提の機体じゃない!!」
「運用方法も、整備体系も違う!!」
「アレスティングフックがあっても圧倒的に強度が足りない!!」
彼はスクリーンに映るF-22を見る。
「そんな機体を……」
「たった4機だけ改修して……」
「敵の最も危険な場所に送り込むなんて……」
拳を握る。
「やっぱり上層部は狂ってる!!」
会議室に再び沈黙が落ちた。
誰も彼を責めなかった。
責めれなかった
なぜなら、彼の言っていることは正しかったからだ。
F-22は世界最高峰の戦闘機の一つ。
しかし、それはあくまで「空」で戦うために作られた機体だった。
海の上。
空母の甲板。
荒れる洋上。
そんな環境で運用するためには、別の設計思想が必要になる。
艦載機とは、ただ翼を折り畳めばいいものではない。
着艦時の衝撃。
腐食する海水。
限られた整備環境。
空母という特殊な戦場で生き残るための強さが必要なのだ。
司令官は静かに口を開いた。
「……君の言う通りだ」
F/A-18Eのパイロットが顔を上げる。
「F-22は艦載機ではない」
「本来なら、空母に載せることすら間違っている」
「そんな機体を4機だけ改修して飛ばす」
「軍の教科書に書けば、失敗例として載るだろう」
会議室の士官たちは黙って聞いていた。
「だが……」
司令官はスクリーンを見る。
そこにはナシルのEB3。
そして、その周囲を守るFG.2。
「敵は、我々が教科書通りに戦うことを前提にしている」
「彼らは我々の戦術を分析した」
「空母打撃群の配置」
「航空機の運用」
「迎撃システム」
「全てだ」
司令官は一歩前に出る。
「ならばこちらも、敵の計算を狂わせる」
F/A-18Eのパイロットは黙ったままだった。
「我々は第2空母打撃群を失いかけた」
「アイゼンハワーは傷ついた」
「フィリピン・シーは沈んだ」
一瞬、空気が重くなる。
「そして敵はまだ、自分たちが優位だと思っている」
「その理由は一つ」
「我々には届かないと思っている高度に、自分たちの目があるからだ」
司令官はF-22を見る。
「だから……その目を潰す」
「この4機に、それを託す」
F/A-18Eのパイロットが低い声で言う。
「……もし帰ってこなかったら」
司令官は少し間を置いた。
「その可能性は高い」
「ですが」
「彼らが飛ばなければ、次に沈む艦が増える」
場が沈黙する
「我々は4機を危険に晒す」
「だが、その4機で……」
司令官は拳を握る。
「戦場そのものを変える」
「それが…作戦名ファイヤアローだ」
「だが…これも昔のステルス艦載機計画が掘り出されるまでの時間稼ぎと…その場しのぎにしかならないがな…」
コメント
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読了しました。第十三章、すごく熱かったです……!F-22を空母から飛ばすという無謀な作戦に、現場のパイロットが「狂ってる」と叫ぶシーンがリアルで、でも司令官の「敵の計算を狂わせる」という言葉が胸に刺さりました。最後の「時間稼ぎにしかならない」という諦観も含めて、この局面の重たさが伝わってきました。続きが気になります!