テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
_____過去
「しおんちゃんーー」
寒色に染められた世界に浸っていた
手足が冷たくかじかんでいた
そんな中、聞き慣れた声が聞こえてピクっと手が動き血液が巡る
「またそんな縮こまっちゃって」
「ほらほら好きなご飯買ってきましたよー」
見慣れたコンビニ弁当
映像を見てる気分から抜け出せない
「ねえしおんちゃん」
「なにをそんなに悩んでるの?」
「最近思うことがあるの」
「多分私達は悪い人なんだなって」
「でも悪い生き方しか私知らないから
どうすればいいか分からないんだ」
そんな私の言葉を聞いて瞳孔を開かせる
白くて長細い手が伸びて
私の頬を優しく包み込む
黒い瞳は哀れんでいるように見えて
私は戸惑ってしまう
「どうしてそんなこと思ったの?」
「親子が笑いあってたの
幸せそうで、幸せって正しい事だなって」
「正しい物を
私たちは壊してるのかなって思ったの」
「そうなんだ」
「そんな事があったんだね」
頬に伸びていた手は再び伸びて
身体を包み込む
体温が私に移っていく感覚がわかる
「しおんちゃん」
「君は僕のすべてだ
だから君も僕がすべてじゃないといけない」
「だから君の心は全て僕に向いているはずなんだ他人の幸せなんて正しいなんてどうでもいいと思わない?」
鼓膜に直接降りかかる優しくて甘い言葉
自分と同じはずのシャンプーと柔軟剤の匂いが鼻に残って溶けてしまいそうになる
「ふ、お話はここまでにして」
「ご飯にしよっか」
体温と香りは私を置き去りにしていく
「やっやめてくれ」
「俺には愛しの妻と生まれたばかりの娘がいるんだっ」
テレビで聞いた事のありそうなセリフ
この言葉を聞いてどんな反応をするのが正しいんだろう
そんなことを思いながら私は引き金を引いた
「しおんちゃんー!」
「終わったーーー?」
「うん」
「しおんちゃんは偉いね」
そういって私の頭を撫でる
そして横で倒れている人を横目で蔑む
彼の笑顔はとても鋭くて向けられたら抗えない
彼の手はいつも痛くて同時に尊いもので
彼が言うように私の世界には彼しかいない
何が正しいのか間違っているのか
私は彼に教えてもらうしかない
そんな私はとても惨めで逆走している気持ちになって世界に置いてかれているきがする
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!