TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
シェアするシェアする
報告する




大きな桜の木の下で様々な声や響きが遠く近くで交差する。

自分と同じく校舎へ向かおうとする生徒に目を配る。憧れていた制服を身に纏うことができ、若干浮かれている者も居れば、高校生活という新しい人生をスタートさせようと張り切っている者もいる。

集まった生徒のほとんどは、2人や3人など固まって来ていて、オーストラリアから韓国に来たばかりの為1人で行動していた自分は少し目立っていた。

特に自分の興味を引き立たせるようなものはなく、他の生徒達とは対象的に1人黙々と校舎へと向かう。



大きな桜の木が揺れた。

なんとなく散った花弁を目で追うと一際目立つ人物が居た。


切れ目な目、分厚い唇、筋の通った鼻、鋭い輪郭、モデルのようなスタイル、少し派手な長い金髪。

全てが綺麗で、まるで絵画からそのまま出てきたようだと思った。


ファン・ヒョンジン


隣で僕と同じく彼に見とれていた女子生徒の口からその言葉が出た。彼は沢山の人に囲まれていた。色んな音が交わっていてよく聞こえないけど、きっと彼への黄色い声もこの中に含まれているだろう。

周りがこんなにもうるさいのに当の本人は涼しい顔をしている。

その姿に憧れ、驚き、そして少しの好意を覚える。



今まで感じたことがなかった。




恋心の自覚。









「ヨンボガ〜」

友人のハンが縋るように抱きつく


あれからもう1年が経ち、僕は2年生になった。

異国の地ということもあって、最初は学校生活に上手く馴染めず、友達らしい友達を作ることは勿論、ストレスで体調を崩すことも多々あった。

そんな僕に気を配ってか、1年の頃クラスのムードメーカーであったハンが話しかけてくれた。そこから彼の助けをかりながらもクラスのみんなと話すことが出来た。

2年生に上がっても奇跡的にハンと同じクラスであったため中々充実した学校生活を送っている。


ほんとハンには感謝してもしきれない。

そう。ハンには感謝しているのだ。

ただ…



「絶対嫌だ!!」

「何で?!!!」

「そんなの嫌に決まってるよ!」

本校の歴史ある文化の1つであるパーティーに参加するなんて!!

「僕がこういう集まり苦手なのハニなら知ってるでしょ?」

「そうだけど…!俺はこういうパーティでヨンボガに人脈を広げて欲しいんだよ!」

「僕は大丈夫だって!」

ハンの気持ちは嬉しい。ハンがずっと前から僕に他の生徒ともっと仲良くして欲しいという想いは知ってたし、このパーティーを機に沢山友達を作って欲しいのは分かるけど、余計なお世話というやつだ。


「参加してもいいんじゃない〜?」

折れる気のないハンをどうやって納得させようかと考えていたら、さっきまで何も喋らなかった友人のスンミンが口を開いた。

スンミンは2年生で同じクラスになったことをきっかけにハン繋がりで仲良くなった。初めは慣れない韓国語で仲良くなろうと頑張った。しかし、そんな僕に気を使ってか、スンミンは、韓国語ではなく英語で話始めた。

スンミンが英語が得意なことに驚いたけど、それよりもわざわざ僕のために英語を使ってくれた事が凄く嬉しかった。

今では僕の大切な友人の内の1人だ。


「スンミナ…!」

「ほら、ヨンボガ!スンミナも言ってるしさ?」

「うぅ…」



「それにさ、このパーティーにファン・ヒョンジンも参加するんだって。仲良くなるチャンスじゃない?」

「スンミナ!!」


周りにこのことはが聞かれてないか慌てて辺りを見回す。幸い休み時間中な為クラスは、賑やかで誰も先程の会話を聞いているようには思えなかった。



ファン・ヒョンジン


あの入学式のあと瞬く間に有名人と化した人物。

彼とはクラスが別れてしまって話したことはないが、彼のことが知りたくて、僕の周りの友達に彼のことについて色々嗅ぎ回っていた。


バスケ部に所属していて、女子生徒からの支持は勿論、明るい性格で男子生徒からも人気が高い。


そして女癖が悪い。


彼女と別れたらまた違う彼女へと。彼に彼女が経つことはなかった。

それだけならまだしも、彼は恋人がいるにも関わらず他の生徒とも関係を持っていた。





性別問わず




入学した日は一緒の彼は、いつの間に遠くに行ってしまった。






初めてその噂を聞いた時は凄くショックだったし、そんな人だったんだと彼に少し失望した。

だけど廊下ですれ違う時に彼の人離れした容姿を見るとやっぱり彼への恋心を捨てきれなかった。

自分もそこら辺の生徒と同じで見た目が理由で好きという事実に嫌気が差した。でも見た目だけで好きになったんじゃない。

すれ違うほんの数秒。たった数秒でも、彼の優しい眼差し、穏やかな仕草から彼の性格の良さが感じられた。この世界は彼の為に作られたんだと錯覚されるようなオーラに鼓動が速まる。

だから、彼の悪い噂を聞いても彼への想いは冷めるどころか積もるばかりだった。


初めこの2人にヒョンジンが好きと話したら「やめた方がいい」と全力で否定された。初めは同性だからという理由だと思っていたが、彼の女癖の悪さが理由らしい。そりゃあ、仮に付き合えたとしても辛くなるだけの恋を誰が応援するのだろうか。いや、友達想いな彼らだからこそ親友にそんな想いして欲しくないと思っているのだろうか。

それでも僕は諦めなかった。



彼は2人が思っているような人じゃないと。





自分にも言い聞かせた。


すると諦めたらしい彼らは「ヨンボガって1度思ったことは絶対変えないよね」と言いながら僕の不憫すぎる恋を応援してくれた。





「無理だよ。どうせパーティーに行っても何も発展がないのが目に見えてるでしょ。」

「そんなの分からないだろ」

「無理って決め付けるんじゃなくて、自分から作らないと」

「あら!キムスンミン!!いい事言うね!!」

「でしょん」

「勝手なこと言わないでよ…」


反論しようとしたが運悪くチャイムに遮られてしまった。「それじゃぁ、ヨンボガファイティン」なんて言いながら慌てて自分の席につく親友に呆れる。


僕、行くなんて言ってないけど。


それでも元々断れない性格な為結局今度のパーティーに参加することになった。



あの後まだまだ先のパーティーが既に憂鬱になっていて午後の授業は全く集中出来なかった。

僕の様子がおかしいことに気づいた数名の生徒が 、放課後、体調が悪いのかと訪ねてきた。本当のことを言うことに抵抗があったものの心配をかけたくなかったため「大丈夫。わざわざありがとう」とだけ返しておいた。








今日は部活がある日だったことに気づき、ハン達に別れを告げ足早に教室を出た。

家庭科室に行く途中ヒョンジンを見かけた。容姿端麗な彼の周りには沢山の人に囲まれていて、大変そうだなとうっすら思った。

そういえばヒョンジンが1人でいる所を1回も見ていないことに気づいた。

勿論同じクラスになったことないから仕方ないかもしれないが…。それでも胸を締め付けられる感覚は治まらなかった。


こんなんじゃダメだ。


早く2年生のエリアを抜けたくて歩くスピードを早める。

さっきまでの騒がしさとは対照に家庭科室のあるエリアは使われていない空き部屋が多く、静かだ。

家庭科部の人は通らないといけないもののそれ以外の人はほとんど通ることがない。


ただ、1人を除いて。





「おぉ〜!ヨンボガ」

手を振りながら上機嫌の様子でこっちに向かってくる。




この学校で1番の正統派イケメン


そしてこの学校で1番な変人






「リノヒョン…」



リノヒョンもハンを通じて仲良くなった内の1人だ。初めて見た時は整いすぎた顔に少し緊張し、リノヒョンに対して不自然に接してしまった。だけど彼と共にすごしていく内にリノヒョンは顔面偏差値がバグを起こしたぐらい高いだけの気まぐれな猫であることが分かった。

今ではすっかり仲が良く周りから本当の兄弟みたいと言われる。



明らかに落ち込んでいる僕の様子を怪訝そうに伺う。

「どうしたんだ?」

心配そうに覗いてくるヒョンの目があまりに優しくて目頭がジッと熱くなった。


「今度のパーティーに参加することになったんだ。」

「はぁ?!!」

僕がそういう集まりが苦手なことをよく知っているヒョンは、目をカッと見開き、口を大きく開けた。あまりの滑稽な表情に普段なら絶対笑うと思うが、今日は笑う気分になれず代わりに唇の両端をキュッと引き締める。

数秒の沈黙が気まずくなって、「やっぱ、なんでもない。」と言おうとしたが、先に口を開いたのはヒョンの方だった。






「俺もパーティーに参加する」







「はぁ?!!」

今度は僕が大声を出す番だった。

「何で?」とか「珍しいね」とか聞きたいことは沢山あったけど驚き過ぎて思うように口を動かすことが出来ずそれらの言葉は音となることはなかった。


だってあのリノヒョンだよ?

パーティーという言葉に1番無縁なリノヒョンがパーティーに参加するとは何事だ。




そういえば、前にハンに「リノヒョンってヨンボガに甘いよね」と言われたことがあった。

「そんなことない」とは言いきれなかった。だって明らかにみんなと態度が違うんだもの。少なくともスンミンよりは。ただ、あのヒョンのことだ。僕を甘やかすことに特に意味はないのだろう。


それに僕は甘やかされるという行為に対して今まで不愉快だと感じたことはない。むしろ心地よく、いつの間にかリノヒョンは僕にとって大切な人となっていた。

だから甘やかされること自体嫌ってないんだ。



でも、流石にパーティーに参加するのは過保護過ぎない?!!



「いいよ…別に」


頑張って絞り出した言葉がこれだった。

言葉にした後、自分が素っ気なく返してしまったことに気づき、ヒョンが気を悪くしていないか不安になった。

「や、…その、」なんて必死に弁明しようと慌ててリノヒョンの方を見る。

やはり少し気に障ったのか、彼は口をへの字に下げ、何を考えているのかよく分からない瞳で僕を見つめた。

場違いだということは重々承知しているけど、やはりこのヒョンかっこいい。








「俺も行くから」


はっきりとまるで意見は変えないと訴えかけるような喋り方にヒョンの強い意志を感じた。

「ヨンボガって1度思ったことは絶対変えないよね」という彼らの言葉を思い出した。こういうところがリノヒョンと本当の兄弟みたいと言われるのだろう。

変えるつもりのない意志に僕は折れるしかなかった。

はぁ、と軽いため息をつき肩をすくめる。


「パーティー間近になったらまた連絡するね」

「ん」

一言彼はそういうとそのまま帰ってしまった。


なんだったんだあのヒョン…。

まるで嵐が過ぎ去ったあとのような疲労感に苦笑する。

まぁ、でもパーティーに友人がいるという点では少し安心した。


部室へと向かう足取りはリノヒョンと会う前よりも軽いものとなっていた。





その後リノヒョンと長話していたせいで遅刻し、顧問に体調が悪いのかと心配されたのはまた別のお話。

















2つの線が交わりあうカウントはもう進み始めている。









┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


最後までお読み頂きありがとうございます🙇‍♂️

久しぶりに書いたので少し至らないところがあると思いますが大目にみてください😢😢


補足なのですが、🐤の友人関係についてです。本編では少しややこしくなったので改めて詳しく説明させて頂きます。

🐤に友達はいないということではなく、ものすごく仲良い友達はいないということを表現したかったのですが…少しややこしくなりました😞🌀

簡単に言うと広く浅くという感じです!

それを踏まえただけでもだいぶ変わってくると思います😳💗


受験生な為次の投稿は早くても私立入試後となる可能性大です!😣💦

次にようやく全員出ると思います。



coming soon‪𓂃 𓈒𓏸

この作品はいかがでしたか?

441

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚