テラーノベル
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六駆が待つこと25分。
チーム莉子が倭隈ダンジョン第14層に再集結していた。
「もぉぉ! 六駆くん、早く行き過ぎだよぉ! 待ってくれないんだもん! ひどいよぉ!!」
「いやー! ごめん、ごめん! 莉子の歩く道を先に舗装しておきたかったんだよ!!」
「も、もぉ! そんな事言ったって誤魔化されないもん!」
「ははっ! 莉子は頭が良いなぁ!!」
「椎名さん? ここに来る道中って舗装されていましたかしら? お排泄物みたいにガタガタで、壁やら床やら穴だらけでしたわよね?」
「小鳩さん、チーム莉子に籍を置くなら、この程度の矛盾でツッコミしてるともたないですぞなー」
芽衣が師匠に現状報告をする。
「六駆師匠! 倒れていたアトミルカの人たち、全員生きていたです! さすがは師匠です! ギリギリでいつも生きている師匠です!! みみっ!」
「そう? いやぁ、良かった! 最後の方でテンション上がって煌気刀の二刀流とかしてた時に2人くらいゴボッて変な音がしたから心配してたんだよね!!」
当然、彼の頭のおかしいスキルを喰らったアトミルカ構成員の心配ではない。
責任追及の問題とも少し違う。
より正確な表現をすると、お金の勘定が狂わないかについての心配である。
『皆さん、お疲れさまっすよー。逆神くんには説明済みっすけど、次の階層が最下層で、強敵が3人お待ちかねの様子っす!』
山根は端的に現状を乙女たちと共有した。
本職はオペレーターな山根健斗Aランク探索員。
「とりあえず、3人とも僕が相手をするよ! この先、別のダンジョン制圧に行くことがあるかもしれないし。4人は体力と煌気を温存させておいて!」
「でも、大丈夫かなぁ? 1南雲はともかく、3南雲が2人はちょっぴり心配だよぉ」
「大丈夫ですわよ、小坂さん。逆神さんの実力なら3南雲程度、物の数ではありませんわ!」
「でも、師匠がよく言っているです! 煌気の量が強さに変換される例は意外と少ないって! つまり、1南雲だって油断できないと言う事だと思うです! みっ!」
「全部足したら7南雲かにゃー。六駆くんが苦戦する姿は想像できないけどー。油断してピンチになるパターンはこれまでに何度か見て来たにゃー」
飛び交う新単位、その名は「南雲」。
六駆は4人の心配をまずありがたく受け取った。
その上で、ドンと胸を張る。
「安心して! 僕がお金のかかった状態で負けるなんて事があると思う?」
その言葉には微塵の油断も慢心もない。
ただ、事実だけを端的に述べていた。
『そんじゃ、自分がナビするっすねー。一応『サーベイシールド』の用意もしておくっすけど、逆神くんが先頭だとそれも多分取り越し苦労っすね』
チーム莉子は倭隈ダンジョン最下層に到達した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そこに待っていたのは、「10」と記されたアトミルカ構成員。
さらに、長身で金髪の外国人と、同じく大柄で屈強な青い目をした外国人が2人。
「どうも! こんにちは! あれ、日本語通じます? ええと、アイム逆神六駆! コンディションはベリーファイン! キルユー!! ファッキュー!!!」
国際化の時代。英語教育の重要さが実に分かるワンシーンである。
「ハハハッ! まったくクレイジーな男が来たようだな! 安心したまえ。この作戦が決まってから日本語は習得済みだ!」
「ジェパート、あまり敵と慣れ合うのはよせ。お前はすぐに情が移る」
英語が国際的な標準語としての地位を確立している昨今、日本を訪れる外国人が積極的に日本語を覚えてくれていると、なんだか嬉しくなるのは何故か。
「山根さーん。この3人で合ってます? 賞金首さんたち!!」
『照会するっすねー。……おおう。意外なところでヒットしてちょっとビックリっす』
「人違いですか!? だったら僕、帰りますけど!?」
『ああ、いえいえ。合ってるっすよ。ただ、10番さん以外のお2人。1南雲と3南雲の人たちがっすね。3年前にイギリスで行方不明になった、Sランク探索員ってデータが出て来るんすよねー。間違いではないと思うんすけど』
珍しく歯切れの悪い山根。
そんな彼の代弁を引き受けたのは10番だった。
「はっ! 教えてやれ、お前たち! 今の所属と階級を!」
「オーケイ、サー。私はジェパート・アルキンソン。元英国の探索員だ」
「……同じく、マイク・ロードニー」
「今はアトミルカ09番だ! 少しの間だが、仲よくしようサムライボーイ!」
「オレは08。お前もアトミルカが番号によって序列を表しているのは知っているな?」
「えっ!?」
「……知らないのか」
アトミルカの基本情報はちゃんとチーム莉子にも伝えられている。
その脅威が日本に迫った時点で、南雲が解説したし、今回の制圧作戦に先駆けても説明をしたし、先ほどまでの休憩時間で山根も説明していた。
だが、六駆は忘れていた。
「あのあの、山根さん? イギリスのSランク探索員ってどういうことですかぁ?」
『やー。自分も驚いてるっすよ。実はっすね、3年前のアトミルカ侵攻作戦で、イギリスに2人しかいなかったSランク探索員が行方不明になってるんす。戦闘中の行方不明だったので、戦死扱いになってたんすけど』
六駆の前には体をほぐすジェパートと、シャドウボクシングをするマイク。
洗脳や体の自由を奪う類のスキルは使われていない。
これは六駆の見立てであるため、ほぼ確定事項と考えても良い。
そうなると、非常に残念な結論が待っている。
「つまりアレですかにゃー? この2人は自分でアトミルカに入ったとー?」
「ヒュー! ダイナマイトボディのガール、鋭いな!」
「調子に乗るな、ジェパート。正しい表現をしろ。オレたちは戦ったさ。アトミルカを相手に。だが、国の協会本部は無理難題をふっかけてきて、ろくな支援もしない。気付けば全滅。そしてアトミルカの施設で目覚めたオレたちに、1番が言った」
マイクの言葉をジェパートが引き取る。
「ナンバーワンの言う事はスマートでシンプルだった! それに魅力的だった! アトミルカの秘匿機関に所属し、成果を挙げればそれに応じた待遇を受けられるってね!」
「オレたちは既にシングルナンバーと同格の扱いを受けている。探索員協会などと言う、恩知らずどもよりもここはずっと居心地がいい」
結論から言えば、この2人の英国Sランク探索員は自らの意思で探索員を辞めて、アトミルカの構成員として生きる道を選んだのだった。
もちろん、捕虜の状態からの選択である。
そこに自由意志など存在しなかった可能性は大きい。
が、重要なのは現在、ジェパートとマイクの両名が日本探索員協会にとって敵であると言う事実。
そして、何よりも重要な事は。
「ああ、はいはい! なんかそれっぽい理由を付けて裏切りを正当化するヤツ! 分かります、分かります! よく見かけてましたよ異世界でも!」
「知った口を利くじゃないか、サムライボーイ!」
「苦労をしらん子供はこれだから好きになれない」
六駆は両手を竜の口の形にして、「ふぅぅぅぅんっ!」と気合を込めた。
「莉子! 小鳩さん! 盾スキル全開にしといてください! ……『滅・大竜砲』!!」
逆神六駆にとって、彼らの事情など知った事ではない。
「ぐっはぁ! おいおいおい。クールじゃないか、サムライボーイ。日本はこんなに若いSランクがいるのか!?」
「うぐぐっ。だから油断をするなと言っている。見た目に惑わされるな」
壁際まで吹き飛ばされたジェパートは41歳。
その場でどうにか堪えたマイクは39歳。
六駆おじさんよりも若かった。
ベテランスキル使いの六駆は言い放つ。
「僕はDランク探索員ですので! よろしくぅ!! ……これ、口に出すと気持ちいいなぁ!!」
スキルによる国際交流の幕が今、切って落とされようとしていた。
コメント
1件
読み終わりました!いやー、今回も六駆くん炸裂してますね。「お金のかかった状態で負けるわけがない」名言すぎます。あとチーム内で飛び交う「南雲」単位、笑いました。1南雲とか3南雲って……南雲さん本人聞いたら複雑そう(笑)。そしてまさかの英国元Sランク2人がアトミルカ側で登場。ちゃんとした過去事情もありそうで、単なる敵ではない感じが気になります。でも六駆くんは一切お構いなしに「滅・大竜砲」ぶっ放す。その潔さ、癖になりますね。次が楽しみです!
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