『ぐちつぼ〜』
遠くから聞きなれない名前を呼ばれ,傷が多少痛む体を起こし,部屋を出る
壁に手をつきながらゆっくりと廊下を歩く
すると階段を丁度上がって来たであろう,この館の主『らっだぁ』に出会った
rd『あ…ごめん,まだ体辛い?』
gt「まぁ…多少は…」
rd『そ。悪い事しちゃったね〜…』
gt「別に大丈夫だけど…何用?」
rd『普通にご飯出来たからさ〜。』
gt「ん。ゆっくり行くわ」
rd『ら民に手伝ってもらう?』
gt「いや〜…こいつらすぐ攻撃してくるからいいわw」
rd『んはwじゃぁ先に待ってるわ』
ら民に対して叱るとかは無いのか…。と思いつつ先程と同じ様に壁を使いながら歩く
結構な時間をかけながら食堂に着いた
あまり刺激を加えない様に椅子に座ると,らっだぁが何かを思い出した様に
rd『今日チャイムが鳴っても出ないでね〜』
と言って来たので,「何で?」と聞き返してみるとらっだぁは少し考える素振り見せ,
『良いから〜』と誤魔化し食事をし始めた
誤魔化された事に納得が出来ず少しむすっとしていると,
rd『お前のためでもあるから…』
と呟き,そのまま部屋を出て行った
最後の顔何か変だなと思いつつ,冷め切った食事にようやく手を付ける
gt (美味しい…)
冷め切った食事とは普通不味い物なのだが,らっだぁが作る料理だけは冷めていても美味しかった
時間をかけて食べ物を胃に流し込んでいたら,気付いた時には皿はもう空だった
もう少し食べてたかったと思いながら皿を眺めていると,
ら民が頭に皿を乗せ運んで行ってしまった
gt (あいつら仕事はちゃんとするんだよな…)
そんなくだらない事を頭の隅に置き,また部屋への道のりを歩み始めた
食事と風呂,トイレに行く時以外は,体の弱った機能を修復するための点滴チューブを腕に刺さないといけないので,少し足早に廊下を歩いた
見慣れた床を見ながら歩いていると,いつの間にか部屋の扉の前に付いていた
少々重たい扉のドアノブを引き,部屋に入る。そして,ふかふかのベットに腰をかけ左手にチューブを刺した
奴隷時代にこれくらいの痛みは慣れていたので,痛みに対しては何の躊躇いも無いのだが,少し触っただけで皮膚に傷が付くこのチューブ先だけは未だに慣れない
刺し終えたところで,毛布をゆっくりと体にかけ天井を見つめる
だいぶ動けるようになって来たし,そろそろこの館の図書館に行ってみるのも良いかなと思いながら目を瞑る
部屋の明るさのおかげで,目を瞑って居ても多少は明るいのだが目の端の方だけ何故か暗い
きっとら民がいつもの様に状態を見に来たのだろうと考え,気にせずに居た
するとかなり遠い所から,チャイムが鳴ったのが聞こえた
食事中らっだぁが『チャイムが鳴っても出ないでね』と言っていたが,流石に居留守するのは自分の正義感が許さなかったので,目を開け体を起こそうとした時
⁇ 『ネェ…キミダレ?』
と,全く知らない声が横から聞こえ
驚いて横を向くと,口付けをしてしまうのではないかと思うほど,顔が近くにあった
gt 「ッ!?!?」
あまりの衝撃に声が出ず,目を見開いたまま部屋に静寂が訪れる
しばらくの沈黙の後,先程声をかけて来た男は『はぁ』とため息をつき,斬りかかってきた
俺は今素早く動ける状態では無いかったので,体に深い傷が付き地面に倒れ込んだ
どんなに蹲っても抑えても止まらない痛みに支配され
とうとう体は動かなくなっていしまった
痛みに必死にもがき苦しむ俺を見下ろす男はどこか悲しそうな表情をしていて
最後に何か呟いたところで俺の意識は飛んだ。
⁇『久しぶりだね〜。らっだぁ?』
rd『………』
⁇『そんな敵対心丸出しにしなくても良いじゃんかぁ〜。元は一緒に暮らした仲だろ?』
rd『来るなって言ったよな?俺は』
⁇『言われたけど…それで引き下がる様な奴らじゃ無いって知ってるでしょ?』
rd『……』
⁇『今日は話し合いがしたくて来たんだ。少しで良いから聞いてくれない?』
rd『話し合うって?今更何を話すって言うんだよ』
⁇『まぁ…色々?それより…』
スーツ姿の男は何かを心配そうに奥へと目をやり
⁇『⁇君がさっき凄い速さで奥の方抜けてったけど…何かヤバい?』
と聞いて来た
rd『奥…?……。ッぁ…』
何かに気付いたらっだぁは,形相を変え目の前から居なくなった
⁇『こりゃヤバいか…』
とスーツ姿の男は後を追う様に歩いて行った
あまりの乱暴さに扉が外れてしまうのではと心配するほど力一杯開けた扉の先には
血塗れになって倒れ込んでいるぐちつぼがいた
rd『………』
⁇『ァッ…ラダオクン…』
申し訳なさそうに此方の様子を伺ってくる此奴に苛立ちを覚えて
rd『帰れよ』
とキツく言い放った
すると男は弱々と唇を噛み締め,外へと通り抜けていった
rd『……⁇。』
⁇『何〜?』
rd『ぐちつぼを治療してくれ…』
⁇『ん。わかった。』
rd『…どうした?』
⁇『いや…⁇君の事は良いのかなって…』
rd『…今度話してくるよ。』
『⁇と…いや。彼奴等と…』
⁇『そっか…頑張ってね』
⁇『⁇チャン…』
⁇『⁇君…大丈夫?』
⁇『オレ…マダダメダッタ…』
⁇『そっか…。でも大丈夫だよ。』
『今回の一件できっとらっだぁの心は揺れ動いた』
『いつまでも逃げる事の弱さを知ったと思うよ』
⁇『ウン…』
⁇『それじゃ。帰ろうか』
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