竜基side2
パーティ当日、彼女はベルウッドの社長夫妻と共に出席していて、社交辞令的な挨拶をすると俺は他の招待客の元へ行った。
亜由美が気になって探すと男性客が声をかけているようで近くに行こうとしたところに彼女が亜由美に近づいていた。
そういう時に限って誰かしらに話をかけられ、足を止めせざるを得なくなる、ジリジリとしながら目線を送ると彼女は亜由美のそばから離れ行った。
志摩のこともあるし亜由美をおふくろに託した。
あらかた挨拶が終わり、亜由美をエスコートして影山とNインポートのスタッフに紹介した。影山にはある程度の説明をしてあるため、若干生暖かい目で見られているが、事情を知らないスタッフからすれば30歳の俺が20歳の女子大生と付き合っていると言うことで羨望とやっかみ半々といった対応だが、亜由美の見た目に負けず劣らずのしっかりとした受け答えに惚れる男が現れそうで牽制するのも忘れない。
そんな姿にさらに影山は呆れたように「だったら、契約とか言ってないで男らしくキメたらどうだ」とため息をつく。
両親も一回りの歳の差があるが、実際自分がとなると若干罪悪感もある。
半ば騙すような形で囲い込んでしまったし、俺を意識するように仕向けているが、亜由美が俺にオチる前に俺自身がどこまで耐えられるかが問題だ。
会話をしているふりでそんなことを考えていると亜由美が耳元で「お手洗いに行ってきます」と囁いた。
耳元で囁くとか、小悪魔かっ!
「大丈夫?ついていこうか?」
「平気です」
そう微笑んで歩いていく姿はまさしく
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花という言葉通りだ。
しばらく話をしていたが亜由美が戻ってこない、迷っているのかもしれないと影山に告げて探しに行くと丁度レストルームから亜由美が出てきたところで何かあったのかと焦って駆け寄った。
「遅くなってごめんなさい」
何となく違和感を感じて前を見るとそこには佳子が立っていた。
無視をして二人で歩き出すと「竜基」と声をかけられた為「そろそろ終了になります。会場へどうぞ」と伝えると何故か俺の横に並んで歩き出した。
素敵なパーティねだとか、しばらく離れている間に益々素敵になっただのどうでもいい話をしている佳子に社交辞令的に返事をするが、それよりも亜由美の表情が気になった。
復縁を狙う佳子にくだらない言葉を投げられていなければいいが。
そんな風に考えているとようやく会場についた。
俺の肩に手を置いてから「じゃあまた」と言って歩いて行った。
その仕草にあざとさを感じて胸が悪くなった。
翌日、亜由美は友人と飲みに行った。
昨夜、亜由美の様子がおかしかった。無理に聞き出すのもよく無いと思って様子を見ようと思ったが、俺が考えている以上に何か不安になることがあったのかもしれない。
帰宅した時に話が出来るように、仕事を持ち帰ってしまった。
以前の俺からは考えられない行動だ。
自嘲しながら作業をしているとインターフォンが来客を知らせる。
この部屋を知っている人間はかなり限られている。
志摩に知られたのは面倒だが、さすがに志摩の実家に抗議をしたからここに来ることはないだろう。
モニターを覗くと招かれざる客が立っていた。