10cm

nk ん~っ ！楽しかった 、先輩帰りましょ ！

sm うん 、

花火大会も終わってほとんどの屋台でも遊び尽くした 。もう終わる時間だから帰ろうと思い 、店を出る 。ちなみに今いる場所は休憩所 …みたいな ？近くにちょっと大きめのモールみたいなところがあるから 、そこの3階にいる 。

nk 人やばそ~ …

sm だな 。まぁ 、もう店も閉まるし出ないと

nk ですね 、

帰ろうと思い人が沢山いる階段をおりる 。

nk あ 、そうそう先輩 ！明日僕の家で …

なかむが俺に何かを言おうとして振り返ると 、近くではしゃいでいた子供たちとなかむがぶつかった 。ここは階段 、当然なかむは落ちていく 。何度も手すりをつかもうとしていたけど 、それは届くこともなかった 。俺も手を伸ばして 、必死に 、必死に助けようとした 。でも …

だめだった 。

最悪なことに前に人が居なくてなかむはそのまま下まで落ちていった 。

sm ぁ …ｯ 、なかむ 、？

周りがざわつき出した 。近くで見ていた人が俺をこの場から離れさせようとするけど 、力を入れてないのに動けなかった 。何も考えられなかったし見えなかった 、聞こえなかった 。ただ1つ見えるのは階段の下で血を流しながら倒れているなかむだけ 。誰かの手に覆われたのか 、前が見えなくなった 。

真っ暗だ 。安心できないのはきっと 、いつも隣でうるさく話していたあいつがいなかったから 。なかむと出会うまで俺はずっとひとりで 、暗闇の中をただひたすらに歩き続けている感じだった …だからこんな状況慣れていたはずなのに 、なかむと出会ってしまったから隣を何かで埋めようと 、求めてしまう 。

sm …ん 、

急に前が見えるようになって当たりを見渡すと 、心配そうに俺を見ている40代ほどの女性たちがいた 。

モブ やっと反応した …大丈夫 ？

何があったのか分からない 、でも …見えるようになって1番初めに視界に入ったのは 、「手術室」だった 。

ずっと俺を呼びかけて面倒を見てくれていた人が全部説明してくれた 。なかむは手術中 、ここは手術室の目の前だと …なかむにぶつかった子供とその親たちは今警察なのか知らないけど 、誰かと話している 。俺はと言うと …階段の上で立ち尽くして動かなかったらしい 。近くで見ていた人たちは俺となかむが話していたのが見えたから友達なんだと気づき 、俺がショックで動けなかったとすぐわかったらしい 。救急車には乗せてくれてなんとかここまでたどり着いたとのこと 。

…もしこのままなかむが死んだら 、俺はどうなるんだろう 。それだと 、きっとすごく後悔する 。好きだって言えばよかった 、もっとちゃんと向き合えばよかった …そう 。俺の判断力がもう少しあれば 、ちゃんと手を伸ばせた ？俺の心が弱くなければ 、すぐに駆け寄ってもっと早く処置ができた ？考えれば考えるほど嫌なことばかりが頭によぎってくる 。あと10cm …10cm足りれば助けられたのに 。なかむは俺を …

恨むのかな 。