合格通知…..と言う方がいいだろうか?それとも正式に、雄英高校の入学が決まった….と言う方がいいだろうか?とまぁ、それが届いたのだ。流石は雄英。その届け方も斬新で、なんと動画。しかも立体!1人で部屋の中の雑貨を整えていた時にポストに届いて驚いた。それより、もっと驚いているのは…..。
「同じクラスだったんだ…..」
入学試験の日、ハンカチを拾った緑髪の男の子。受かってるといいな、と思ってたけど、まさか同じクラスとは。
「う、うん!良かったね!君も受かって….ぼ、僕は緑谷出久、な、仲良くしよう?」
穏やかで話しやすそうだ。
「うん。……愛嶋ゆう。よろしく」
「オイコラ退けやクソデク!!」
怖くて話しにくそうだ。
「あ、ご、ごめんかっちゃん…..」
私の席は入口から1番近いから。特に邪魔になっちゃったかな….。
「オイコラクソチビ」
く、クソチビ?!
確かに身長はこのクラスでも低いほうだけど、
「か、かっちゃんやめなよ、怖がってるよ、」
「私がクソチビなら…..」
「ア”ァン?!」
「峰田くんはもっと小さいからやめてあげて!」
「愛嶋さんフォローになってないよ!1周回って傷付けてるよ!!」
「じょ…..女子に持ち上げられた….✨️」
何かに感動してる…..なんか….怖いよ峰田くん。怖いというか気持ち悪い…..。
「オイコラァ…..いい度胸だなテメェ!」
かっちゃんくん、近くで見ると尚怖い、
「テメェ筆記にはいたが実技試験いなかっただろ。どこで何してた。しっぽ巻いて逃げたんかと思ったわ」
ち、近いし怖いよ….巻くしっぽは私には無いよ…..そういう言葉があるのは知ってるけど…..。それより、よく見てたな。特待生ってこと、なんか自慢っぽく聞こえて周りには言いたくないんだ。もしかしたら、この子こんなにキレてるし怒ってくるけど、頭いいんじゃないか?
そもそもこのクラスの子、普通に試験受けて受かって来てる子が多いし…..みんな頭いいんだろうな。
「聞いとんのかオラァ!!」
ひいっ!机バンッてしないで、
「全員席に着け」
ガラッと開いたドアから入ってきたのは、この間の個性調査でお会いした相澤先生?!
緑谷くんも峰田くんも、流石のかっちゃんくんも、これは仕方ないと思ったのか舌打ちの後自分の席に戻っていく。
不良なのかな…..怖……。
「本日よりお前たち1年A組の担任になった相澤消太だ。よろしくね。突然だが、全員体育着に着替えてグラウンドへ集合しろ。戯れたいなら休み時間にやれ。自己紹介は省く」
自己紹介省かれちゃった….。コミュニケーションが上手く取れない私としては、やっぱり最初が大事だと思うんだけど、そういうことしてる時間は無いんですねはぁい….。
私たちは更衣室で体育着に着替えた後、グラウンドに集合した。
「今からお前たちには個性を使った体力テストをしてもらう。内容は全て今まで小中学校でやってきたものと同じだ。違うのは個性を使って良いこと。そして….」
相澤先生は重い瞼から覗いた鋭い目を光らせる。
「最下位は除籍だ」
除籍?!??
これには私と同じくクラスの多くが異論を唱えているが、まぁ、決定なら仕方ない。私は最下位にならない自信があるし。…..あれ?私は受ける必要があるのか?個性調査は今まで何度もしてきたぞ?
周りの生徒が準備運動に取り掛かる中、私は相澤先生にコソコソ近づいて聞いてみた。
「あの、相澤先生。私は…..」
「お前もやれ。基本指示がなければやることは周りと同じだ。お前だけを特別扱いはしない」
「…..わかりました」
うーん…..愛嶋先生、やっぱり厳しいのかな。入学前の個性調査でも、あんまり喋ってなかったんだよな。
なんて言っていられない。このクラスで1年過ごすとなれば、絶対コミュニケーションは大事になってくる。プロヒーローたちだって連携が必要になってくるに決まってるし、ここはコミュニケーション能力を育成する場所だと思って….!!
まずはそれぞれの個性や特徴を把握していこう。自己紹介がなかったから、相手のいい所を褒めたり仕組みを聞いたりして仲良くなるのが手っ取り早いと思う。まず、目に見えてわかる個性…。
あのクラスで1番大きい男の子。手がいっぱいあって、異形型の個性だ。頼もしい…..。大きい男の子はタイプだ。
黒い鳥の頭の男の子。身長はクラスの中で比較的小柄?私よりはそりゃあるが。どっちかと言うと静かで話しやすそうだな。
黒髪のショートヘアの女の子。パッと見変わらないように見えるけど、耳になんかついてる。アクセサリー類は授業の邪魔になったり怪我さめたりするから、あれはきっとアクセサリーじゃない。…..なんかよく見たら、見た事ある形してる。イヤフォンとスマホ繋ぐプラグみたいだな。
服だけ浮いてる子がいる。体系的に女の子。教室にいる時も服だけ浮いてて驚いた。偵察に役立ちそうだ。
あの肘や膝が丸い子はなんだろう。あ、なんか肘から出してる。トイレットペーパーみたいな….あ、でも巻き付けたり粘着してるところを見ると、テープっぽいのかな?
黄色い髪の子はわかりやすいな。しっぽがある。あのしっぽで浮いたり飛んだり投げたりできるんだ。……悪口じゃない….悪口じゃないが、猿っぽい…..。
身体大きいけど縮こまってる子は何となくわかる。異形型だ。でも、1番大きい彼とは違って、筋肉筋肉してないな。サポート型なのか?
って、分析ばっかりしてちゃいけない!私もやらなきゃいけない。
- 第1種目 - 50m走 -
これは余裕だ。水を出す勢いの反動で!……よっと…..飛べばいい。タイムは5.62。よしよし。まぁまぁか。本当は消化器くらいの威力使えばもっと飛べるが、そんなに個性使ってたらすぐ脱水になってしまう。
- 第2種目 - 握力 -
水圧かければもちろん簡単だが、感電とかしたくはない。本気でやらなくても、最下位にはならないだろうし、ここは自分の手の握力で問題ないだろう。
- 第3種目 立ち幅跳び -
50m走の時と容量は同じだ。特に、今回は浮遊時間を伸ばせばいいだけだから、むしろ有難い。かっちゃんくんと同じような感じになってるな。……パクったと思われたらどうしよう。また怒られるかな。…..いや、怒られるようなことしてないんだが。
- 第4種目 反復横跳び -
全体重をかけても問題なく立てる水をサーフィンみたいにしたら、より良い回数が出るだろうけど、ここでそんなにする必要があるのか?サーフィンは海の波やプールでやったことあるけど、水が無い状態では初めてだ。そうリスクを背負う必要もない。
- 第5種目 ボール投げ -
50m走や立ち幅跳びよりも簡単だ。ボールだけ飛ばせばいいんだから。水も多量に使わないし、こりゃあ有難い。麗日さんは物を浮かせる個性で無限大という記録を叩き出した。……もしかして、数値よりも誰がどれほど個性を扱えるのか試しているのか?
私の結果は…..1000m。1000mって、どれぐらい?
- 第6種目 持久走 -
うぇえ….持久走苦手なんだよ。走らないっていう方法もあるけど、それはもうサーフィンだし、長い時間保ってられないし。疲れるし。……仕方ない。普通に走るか。
- 第7種目 状態起こし -
背中に水を敷いて…っと。要は、手前でクロスさせた肘が膝に当たれば1カウントだろ?…..というか、膝に八百万ちゃんの胸が当たってるんだが….。
- 第8種目 長座体前屈 -
これは私の個性じゃどうしようもならないな。大人しく自分の身体だけで….イタタタタ…..私、身体硬いんだよ。
これで全部の種目が終わった。私の成績は….芦戸ちゃんと麗日ちゃんの間か。納得の数字だ。緑谷くん、最下位になってる….せっかく仲良くなれたんだ。除籍にならなきゃいいけど…..。
「女性になるというのはハッタリだ」
ハッタリかい!!
意外とお茶目なんだな相澤先生…。可愛い。それより、なんだろう。ずっと誰かに見られてたような…….。まぁ見るか。私が周りの子を見てたように、誰かが私の事を見るのは当然だ。
そうそう。個性が似てて仲良くなれそうな子をみつけたんだ。物静かで、話しやすそうな子。
「轟くん」
「あ?」
わぁ。ひ、怯んじゃいけない。話しやすい雰囲気をこちらから作っていくんだ、
「個性、氷なの?私水なんだ。なんか似てるね」
「一緒にすんな」
あれ。
「用がないなら話しかけるな。目障りだ」
「ごめん」
そんな変な言い方したかな。不快にさせてしまった。
「まぁまぁ元気だしなよ〜!これから仲良くなっていけばいいよね!」
あ、君も私と似た個性の….。
「私芦戸三奈!愛嶋だよね?個性似てるし仲良くしようよ!」
陰キャに優しいギャルだ。有難い。
「うん。よろしく。三奈ちゃん」
「え」
え?
「三奈ちゃん呼びなんだ。意外〜」
「いや、だった?」
「全然?よろしくねー!」
距離の詰め方間違えたか?私今まで特定の子と関わったりしてこなかったから距離の詰め方分からないんだ、だから轟くんも嫌な感じだったのかな。
私は基本的に嫌いになった人と関わろうとかしないから、復縁とかありえないって考えだ。縁を切ったら再生しないし、存在を消去した人は帰って来ない。
仲良くなれたらいいんだけどな。
教室に帰ると、既にコミュニケーションの輪ができていた。
赤髪の切島くんや、三奈ちゃん。金髪の上鳴くんが特に中心になっている。やっぱり暮らしでも話そうとしないのは轟くんだ。
イケメンだからとか、個性が似てるからとかじゃなくて、単純に仲良くなれそう…..だと思ったんだけどなぁ。
まぁ、嫌われてわざわざ歩み寄るほど私はできた人間じゃないから話しかけに行けないけど。
席順は、私は廊下側の1番前。背も小さいから黒板が見やすくてありがたい。私のいる列だけ、妙に数があってなくて6人になってるところを見ると、隣同士で交流し合うとか、そういうのは比較的無さそうだ。あの時間苦手だったから助かる。
後ろの席は青山くん。そういえば、青山くんも何となく似た雰囲気を感じるんだよな。
「ねぇ」
後ろの席を振り返ると、青山くんは両手の頬杖をついて私の方を見ている。…..というか、私は視界に入ってるんだけど、焦点は別の場所を見てるというか。…..か、考えごとしてるのかな?邪魔しちゃ悪いか。
席も近いし、今後も交流することになるだろう。焦らなくてもいいや。
隣?の席は尾白くん。
見た感じ普通。身長も、高めだけどクラスで見ると普通。コミュニケーションも取れそうだし、なんか安心。普通だし。
そしてその尾白くんの隣。障子くん。クラスで1番大きい子が1番前なのはどうなんだ?
「…….なんだ、愛嶋」
あっジロジロ見すぎたかな、
「えっと、その、個性、異形型なのかなって、」
「……それが?」
あ、ち、違うんだ、その、悪い意味で言ったんじゃなくて、……お、落ち着け。ここは素直に言った方がいい。マイナスなことは本当に思ってないわけだし!
「頼もしいなって思って」
「え」
「筋肉?すごいし!ヒーローになって救けに来てくれたら絶対安心だと思ったんだ、」
嫌味じゃない!本当だ!
「そ….そうか」
そっぽを向いてしまった!ち、違う!怒らせたくて言ったんじゃないんだ、誤解されやすいけど本当に、
「愛嶋〜?さてはタラシだなぁ〜?」
み、三奈ちゃん?!
「そうだよ!ヒーロー志望に対して、 “ 救けられたら安心しちゃう ” なんて、これ以上ない褒め言葉じゃん!」
あ、服しか見えない….葉隠透ちゃん。
「ゆうちゃん….罪やわ….」
麗日お茶子ちゃん、
「や、純粋にそう思っただけで、タラシとかじゃ、」
「みんな〜!!ここに天然タラシがいまーす!!」
み、三奈ちゃん!声が大きい!みんなこっち向いちゃったじゃないか、しかも緑谷くんなんか言ってるし….聞こえないけど、
「確かに。愛嶋さんって優しいよね。僕も試験日ハンカチ拾って貰ったんだ」
「何それ?!緑谷、意外と高校デビューしちゃう感じ?彼女できてウエーイとかしちゃう感じ?!」
「なにぃ?!ずるいぞ緑谷!オイラなんてそんな雰囲気ないし!どっちかって言うとオイラじゃマスコットだろ!!」
三奈ちゃんや透ちゃん、お茶子ちゃんのおかげで、クラスの子と話すきっかけができた。…..っとか言ってたら、蛙水梅雨ちゃんに耳郎響香ちゃん、八百万百ちゃんも….。
なんか、いいな。こういう雰囲気。今までクラスの子と和気藹々って雰囲気無かったから、余計楽しい。みんなも優しそうだし、先生も面白いし。このクラス、なんかいいかも。…..ま、まぁ….要相談の子もいるけどさ。この子たちと1年学校生活してみるの、楽しみだな。
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