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第1章.2 気持ち悪さと声の主
「ふぁ~…。」
何事も許したかのように軽いあくびをする。
「ん、らん寝不足?」
いつもキチッとしているらんのあくびに驚きを隠せず問いかけてしまう。
「ん〜…まあそんなとこかなぁ、笑」
少し苦笑いをしながら軽く答える。
「俺さぁ変な夢めっちゃ見るんよね。」
ポツリと呟くかのようにらんが言う。
「え、なんて?」
突然の事で聞き取れず聞き返してしまう。
「なんでも…ないよ!笑」
少し引きつった笑顔を見せながらそう答える。
「なんでもなくは…なさそうだけど。」
「気にしないで!…ほら!急がなきゃ!」
登校時間が迫ってることに焦り軽く走る。
「おはよぉ〜。」
俺と同じクラスの緑屋すち。すちも俺の数少ない友人だ。
勉強もスポーツも料理だってなんでも出来る。しかも絵も上手だ。まさに完璧人間と言えるだろう。
「すち~…今日の1限ってなんだっけ?」
「1限は担当先生が出張だから自習だよ〜。」
「…え。まじか。」
「うん。」
「え、寝れるやん。」
と、最低な考えが生まれた。
「え〜寝るのぉ?明日数学のテストだよ?」
「ぅ、…寝る!」
テストと言う事実に少し戸惑うが、自分の寝不足には耐えきれなかった。
「そっかぁ〜。俺も寝よーかなぁ。」
「お前はいつも寝てるだろ〜笑!」
「うぅ、確かに…。」
図星に戸惑う。その姿は同性の俺でも可愛く感じてしまうほどだ。
そうこうしている内にホームルームの時間。
特に何も無く、1限に移る。
「んぅ…。やっぱ寝るわ。」
「そっかぁ…。俺はテストで高得点取れるように勉強がんばるね‼️」
そう言われると少し罪悪感もある。
「お、おぅ。頑張れ。」
勉強しない罪悪感を抱きながら少しの仮眠を取る。
「ハ…。ソ、は…7…ス!!!!」
なんだこれ。誰かの声…?
俺は何か嫌な気がした。
灰色をベースにした髪にピンクと水色のメッシュ、雫型イヤリングを付けた…男の子。
何かを話している。なんだ。
「え〜…!違うんですか…!?」
ん?…聞き取れた。何が違うんだ?
日常会話の様なセリフに戸惑いを隠せない。
「せんせぇ〜もっと分かりやすく〜!!!!」
先生…?
男の子が言っている言葉の意味が解釈出来ない。
しかも自分の頭に問いかけている様な感じがして物凄く気味が悪く、気持ち悪い。
ぐるぐるして目眩の様な。寝ている感覚がない。
助けて と一言叫びたくなるような体の重さ。何かに取り憑かれているみたいだ。
「…て!」
「大…お…て!」
「大…夫…?お…て!」
「大丈夫?おきて!」
気持ち悪さから逃れたかのように飛び起きた。
「すち…??」
「大丈夫だった?なんか顔色悪かったよ?」
その 大丈夫? に心が浄化されたように気分が良くなった。
それでもどこかにヒシヒシと気持ち悪さが潜んでいる様だった。
「大丈夫だよ。すち。ありがとう。」
まだ完全に笑顔になれず、引きつっているような顔になった。
気持ち悪さがまだ抜けない。
あの男の子は誰なのだと。それだけが頭をよぎる。