―終演後・風磨の部屋にて―
「シャワー浴びてこいよ。……汗、すごい」
そう言ってタオルを投げてよこした風磨は、ソファにだらりと座り込んでいた。けれどその目は、どこか獲物を狙うような光を宿していて——元貴は背中に嫌な予感を覚えながらバスルームに向かった。
それから10分後、髪を濡らしたまま、バスローブ姿でリビングへ戻ると。
「……なに、その格好」
「着替え持ってくの忘れたんだよ」
「……俺が脱がせるってわかってた?」
「は……?」
返事を聞く前に、風磨は立ち上がって、歩きながらゆっくり近づいてくる。その気配に後ずさった瞬間、腰をぐいと引き寄せられた。
「バスローブ一枚で俺の部屋ウロウロして……誘ってるって受け取っていい?」
「ちが……やめ、っ……ん……!」
最後の言葉は、キスで奪われた。昼間の楽屋よりも、さらに深く、荒く、執拗なキス。
「ちょ、くるしっ……ふ、まく…」
「……ずっと我慢してた。楽屋じゃ中途半端にしか触れなかったし、本番中も……“演技”のふりで、おまえに触れるのが限界だった」
風磨の手がバスローブの裾を持ち上げ、素肌をなぞる。唇は喉元を這い、鎖骨に噛みつくように触れた。
「……あっ……ふ……ん……」
声を押し殺しても、風磨の耳には届いていた。
「……もう、隠さない。誰にバレたっていい」
「……ばっ……か、舞台終わったからって、気抜きすぎ……っ」
「いや。むしろこれから。まだ千秋楽あるし……その間、おまえが“俺のもの”ってこと、毎晩刻み込む」
バスローブが脱がされ、肌が空気に触れるたび、震える。風磨の目がそれを見逃すわけがなかった。
「昨日より感じやすくなってない? ……俺の躾、効いてきた?」
「っ……しつけとか、言うな……!」
「じゃあなんて言うの? 俺のキスで声出して、俺の手でイって、俺の……中毒になってるくせに」
そのまま抱き上げられ、ベッドへと運ばれる。汗と熱で混ざるシーツの感触。
触れられるたび、理性が溶けていく。
「もっと鳴けよ、大森元貴。俺以外に、こんな顔見せんな」
「見せるわけ……っ、あ、ああっ……!」
風磨の手が触れるたびに、夜が深く、熱く、重くなっていく。
その夜、風磨は何度も元貴の名を囁きながら、彼を抱いた。
「舞台は終わっても、おまえは俺のもの。ずっと、な?」
その言葉と、止まないキスの余韻だけが、夜の終わりを曖昧にしていった。
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