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庵野
ℋ.♡
1
#mryk
とくめい
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kurara
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六月の終わり。
昼間の熱気を抱えたままの夜風が、静かな住宅街をゆっくりと吹き抜けていく。
「……あっつ」
コンビニの袋をぶら下げた元貴は、額の汗をぬぐいながら小さくため息をついた。
隣では、若井滉斗が買ったばかりのアイスをくわえている。
「元貴ってさぁ、夏になると毎年同じこと言うよな」
「暑いもんは暑い」
「その顔なんかもう溶けかけてるぞ」
「誰のせいでこんな時間まで買い出し付き合ってると思ってんだ」
「俺?」
「お前」
滉斗は悪びれる様子もなく笑った。
「でもアイス買えたじゃん!」
「それ一本のために一時間歩かされたんだけど」
「散歩散歩」
「夜の散歩で汗だくになる高校生がいるか」
元貴は呆れながらも、小さく笑う。
二人は高校二年生。
色々な事情が重なり、今は古びた一軒家でシェアハウスをして暮らしている。
滉斗は明るくて騒がしい。
元貴は静かで皮肉屋。
性格は正反対なのに、不思議と一緒にいる時間は長かった。
――そんな、ごく普通の夏になるはずだった。
その時。
夜空が、一瞬だけ昼のように明るく光った。
「……え?」
元貴が立ち止まる。
白い光が夜空を一直線に横切っていく。
流れ星。
そう思った。
でも。
近い。
あまりにも近すぎる。
「滉斗、あれ」
「見えてる!」
次の瞬間だった。
ゴォォォォォォォォォッ!!
轟音。
住宅街の向こう、山の方角へ光が落ちる。
地面が揺れた。
窓ガラスが震え、犬の鳴き声が一斉に響く。
数秒間、 世界が静まり返った。
そして。
滉斗が満面の笑みで元貴を見た。
「行くぞ!!」
「は?」
「絶対隕石!!」
「警察だろ普通!」
「元貴、夢ないなぁ!」
「現実見ろバカっ!」
滉斗はもう走り出していた。
「ちょっ、おい!」
結局。
元貴は今日も、滉斗を追いかけるしかなかった。
◇◇◇
山道を登る。
焦げた匂いが鼻につく。
折れた木々。
黒く焼けた土。
「……マジで落ちたのか」
滉斗が足を止める。
そこには、小さなクレーターができていた。
土煙がまだゆっくりと舞っている。
そして、その中心に――
誰かがいた。
水色の長い髪。
月明かりを受けて淡く輝く白い輪。
輪には赤、青、黄色の小さな球がゆっくりと浮かんでいる。
少女にも見える。
少年にも見える。
どちらとも違うようにも見える。
不思議なくらい整った顔立ちだった。
その人物はゆっくりと顔を上げた。
目が合う。
そして。
ふわり、と笑った。
「こんばんは!」
場違いなくらい明るい声だった。
元貴の思考が止まる。
滉斗は数秒見つめたあと――
「アハハハハハ!!」
腹を抱えて笑い始めた。
「何これ!? ドッキリ!?」
「いや、違……え?」
元貴が言葉を失っている間に、その人物は立ち上がろうとした。
軽く膝を曲げる。
そのまま、ぴょん、と跳ぶ。
――十メートルぐらい。
「……え?」
地面がほとんど沈まない。
砂がふわりと舞い上がる程度。
なのに、その体だけがロケットのように空高く浮かび上がった。
「うわっ!?」
滉斗が思わず後ずさる。
空中でくるりと一回転。
そのまま音もなく着地する。
「……あれ?」
本人は首をかしげた。
「また高く跳んじゃった。」
困ったように笑う。
「地球って軽いねぇ。」
「……地球?」
「うん!」
にこにこと笑ったまま、その人物は胸を張った。
「ボク、キミらが言う宇宙人なんだよ!」
沈黙。
風が吹く。
どこかでカエルが鳴いた。
元貴はゆっくり滉斗を見る。
滉斗もゆっくり元貴を見る。
二人同時に頷いた。
「……帰るか。」
「帰ろう。」
踵を返す。
「あっ、待って待って!」
振り返ると、 もう目の前にいた。
「うわぁっ!?」
元貴が飛び退く。
「えへへ。」
宇宙人?は照れたように笑う。
「速いでしょ?」
「怖い怖い怖い!!」
「ねぇ、ここ地球で合ってる?」
「そうだけど!」
「よかったぁ!」
心底安心したように笑う。
その瞬間。
頭の輪が淡く黄色に光った。
小さく、電子音のような音が鳴る。
だが二人は気づかない。
『惑星認証完了。』
『地球環境への適応を開始します。』
輪――ハピネスが、小さく囁いた。
宇宙人?はその声に笑顔で頷く。
「ねぇ。」
元貴が恐る恐る尋ねる。
「それ……頭についてるの、何?」
「あ、これ?」
宇宙人?は嬉しそうに指をさす。
「ハピネス!」
「……ハピネス?」
「うん!」
白い輪が、まるで返事をするように小さく光る。
「ボクの大事な相棒!」
滉斗が興味津々で身を乗り出す。
「触っていい?」
「いいよ〜。」
「滉斗やめろ!」
時すでに遅し。
滉斗の指先が輪に触れる。
――バチッ!!
「ぎゃああああああっ!!」
青白い火花が散った。
滉斗がきれいに一回転しながら吹き飛ぶ。
「滉斗!?」
「いっっっってぇ!!」
芝生の上に転がりながら叫ぶ。
「今なんか脳に直接スマホ突っ込まれたみたいな感じした!!」
「あっ、ごめん!」
宇宙人?が慌てて駆け寄る。
「まだ地球モードになってなかった!」
「地球モードって何!?」
元貴は頭を抱えた。
夢なら覚めてほしい。
だが現実は、さらにその上をいく。
宇宙人?は少しだけ申し訳なさそうに笑った。
「えっとね。」
「ボク、帰る方法を探してるんだ。」
「……。」
「だから、その。」
少しだけ視線を泳がせる。
「しばらく住む場所が欲しくて……。」
元貴は黙る。
滉斗も珍しく黙る。
「……だめ?」
宇宙人?がそう言った途端、 どこからともなく一匹の野良猫が近づいてくる。
さらに二匹。
三匹。
気づけば、何匹もの猫が宇宙人?の足元に集まっていた。
宇宙人?は嬉しそうにしゃがみ込む。
「わぁ……。」
恐る恐る一匹を撫でる。
猫は逃げるどころか、喉を鳴らしてすり寄った。
その様子を見た宇宙人?は、まるで宝物を見つけた子どものように目を輝かせる。
「……かわいい。」
その笑顔は、どこか胸が締めつけられるほど無邪気だった。
元貴は、その理由をまだ知らない。
滉斗はその光景を見て吹き出した。
「アハハハ! めっちゃ懐かれてるじゃん!」
元貴は大きく息を吐いた。
夜空を見上げる。
星は静かに瞬いている。
「……なんで、こうなるかな。」
宇宙は何も答えない。
代わりに、水色の髪の宇宙人?が、照れくさそうに笑って言った。
「ボク、そんなに場所取らないよ?」
「そういう問題じゃない……。」
こうして。
元貴と滉斗の、ごく普通だった高校生活は、 空から降ってきた一人の宇宙人?によって大きく動き始めた。
コメント
1件
うわあ、めっちゃおもしろかった…!出会い方が衝撃的すぎるw隕石だと思ったら宇宙人が降ってきて、しかも「地球って軽いねぇ」って言いながらぴょんぴょん跳ねるの、もう完全に異世界感出まくってて好き。滉斗の「行くぞ!!」で即行動するノリも元貴のツッコミも最高だし、猫に囲まれて「かわいい」って言う宇宙人?に一気に胸きゅんした…これからどうなるんだろう、続きが気になりすぎます🤍🌙