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シーグラス

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シーグラス

1 - シーグラス

♥

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2024年08月10日

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※水白、白水

※これといった左右表現はありません

※少女レイの世界線

※一部目を瞑れば去年投稿した『少女レイ』の前につながるかも





チリン、と風鈴が鳴る学校の近くの駄菓子屋。

でっかい水槽みたいなのの中に入ってる氷の中からラムネの瓶を二つ取り出した。

「ほら、いむくんもお金出して」

二本のラムネ瓶をレジのおっちゃんのとこまで持ってって代金を払う。いむくんはなんか嘆いてるけど、たぶん推しに課金しすぎて小遣いが全然ないだけ。

そんな目しても奢らんよ……?

渋々いむくんがお金を出してラムネ瓶を二つもらう。

「……ねえ、しょうちゃん。これどうやって開けんの?」

「飲みたいゆうたんいむくんやん……」

ラムネ瓶をカランと鳴らし、こちらに尋ねてくるいむくん。

ツッコんだはいいものの、僕も開け方はわからん。

レジのとこまで戻っておっちゃんに開けてもらった。

「うわーーーーー、すごーーー!!!」

ガコン、とビー玉が落ちてシュワシュワと炭酸が溢れ出す。

目をキラキラと輝かせながら興奮気味ないむくん。

「……こども……?」

「うわ、しょうちゃんひどい」

聞こえない程度に呟いたつもりがバリバリ聞こえてたらしい。

傷ついたー、だの言ってるけど表情はどこか楽しそうで、好きだなぁ……なんてまた一人思う。

おっちゃんいわく、炭酸が落ち着いてきたら飲み頃らしい。

「おじさんありがとー!」

「ありがとなー、また来るー」

二人でお礼を言って、駄菓子屋を出た。

……うん、外あっつ。休む暇もなく鳴いているセミがうざったい。

自転車乗サドルを触ったら案の定鉄板状態になってて、自転車の上は諦めて、日陰になっている木の下に行ってラムネを飲み始めた。

炭酸がパチパチと口の中で弾ける。

なんで炭酸って飲むだけでこんな涼しくなるんやろ。

「あ、飲み終わった瓶は駄菓子屋んとこのゴミ箱に入れてっていいらしいで」

「おー、さっすがしょうちゃん。コミュ力たかーい」

「おっちゃんとくらいいむくんも話せるやろ」

けらけら笑いながら、なんでもない会話を交わす。

「……ていうか、僕にいむくん以外の友達おらんの知っとるやろ」

「うん、知ってる。……僕もしょうちゃん以外の友達いないもん」

「嘘やん」

「ほんとだって」

きらきらな笑顔を、濁りのない笑顔をみんなに振りまいてるくせに。僕だけを見てくれないくせに。

僕の『好き』っていう感情が、こんなに醜くなければ、ビー玉みたいに綺麗だったらこんな気持ちにならなかったのかな。なんて。

嘲笑うみたいに、ラムネ瓶が水色に輝いた。




「しょうちゃん海行こ!」

ラムネも飲み終わり、帰ろうかというところでいむくんがこう言ってきた。

「突然やなぁ……。僕暑いから帰りたいねんけど……」

「いいいじゃん!ちょっとだけ!ね?」

いむくんが僕の手を強引に引っ張って、無理やり連れて行く。

渋々感を出してるけど、いむくんのわがままに付き合うのは嫌じゃないし。振り回されるのも、楽しいし。

数分走って、着いたところには太陽の光を反射してきらきらと光っている海が一面広がっていた。

「こんなとこに海あったんや……」

自転車を駄菓子屋のとこに置いてきても問題ないくらいの近さ。

「えーっと、……あった!」

海に見とれていると、いむくんが海岸から何かを拾い上げた。

「なに?それ」

いむくんが手に持っているのは、水色の破片のような何か。

「これはね、シーグラスっていうんだ」

ガラスの破片。綺麗でしょ?

そう言って、僕にそのシーグラスを渡してきたいむくん。

太陽にかざしてみると、さっきのラムネ瓶と違って全然光を通さない。

ガラスの破片っていうくらいだから、光ると思ったのに。

「よし!しょうちゃんどっちが多くシーグラス見つけられるか勝負しよう!制限時間は10分ね!」

「え?は、ちょ」

「はい、よーいすたーと!!!」

急に何かを始めたと思ったら、ツッコむ暇もなく遠くの方に走り出してったいむくん。

突然のことに困惑するけど、まあやるか、としゃがんで海岸を見渡した。

意外と落ちてるもので、水色のものがほとんど。たまに白がある。

どれも角が丸く削れていて、半透明。全体的に曇ってる。

光は通さないし、目の近くにやってみてもそれ越しの景色は見えない。

ちらりといむくんの方を見ると夢中でシーグラスっを採っていた。

負けてられん、という気持ちになり海岸に視線を戻した。


「やったぁ~!僕の勝ち〜〜!!」

いむくん12個、僕10個でいむくんの勝ち。

結構採ったと思ったんやけどなぁ……。

なんて思っていたら、いむくんがどこからともなくポールチェーンのついた小瓶を二つ出してきた。

「なんでそんなの持ってるん……」

「おばあちゃんから貰った!」

そしてそれに拾ったシーグラスを3、4欠片入れて蓋を締めた。

「しょうちゃんのも」

そう言って僕の持っていたシーグラスをもう一つの瓶の中に入れて渡してきた。

いむくんのは水色のが基調で、僕のは白のが基調。

「かわいいでしょ!キーホルダーになるんだよ、これ」

お揃い!といむくんが笑うから、心拍数が上がった。

きらきらの、ビー玉みたいな瞳と目が合う。

「綺麗なガラスも、いつかはこうやって曇って、キラキラしなくなる」

ふと、いむくんがこう言った。おとなになるのと一緒だね、なんて付け足して。

「でもさ、そうゆう輝きを失ったものとか、醜いものがあるから、綺麗なものは輝くと思うんだ」

いつものいむくんと、どこか雰囲気が違うけどどうにも目が離せなかった。話を聞き逃せなかった。

「しょうちゃんが思うほど、僕は綺麗じゃないよ」

そう言ったいむくんの心は、靄がかかったみたいで見透かせなかった。





※シーグラスめちゃめちゃ綺麗なので調べてみてください

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コメント

6

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初コメ失礼致します🙇🏻‍♀️ 文章が儚くて脆い感じで大好きです🥲🥲 こういう水白はちゃめちゃに好きです🫰🏻🫰🏻🫰🏻

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