吉田武史は、ドアを開けると同時に重い疲れを感じた。会社の激務、そして闇の仕事。二つの顔を持つ日常は、じわじわと彼の精神を削っていく。
「ただいま。」
靴を脱ぎながら声をかけるが、返事はない。代わりにリビングから、何やら奇妙な音が聞こえてくる。
「……フフフ……ええ、その通り……ククク……!」
吉田は嫌な予感を抱きつつ、そっとリビングのドアを開けた。
「おかえり、お父様。お待ちしておりましたわ。」
ソファには、吉田の娘——吉田美咲(17)が鎮座していた。貴族のように優雅に足を組み、片手には紅茶。何よりその表情が危険だ。ニヤリと口元を歪ませ、まるで帝のような雰囲気を醸し出している。
「お前……何かやらかしたのか。」
「まあまあ、お父様。お座りになって?」
「座らない。」
「……ククク、賢明な判断ですわ。」
美咲は不敵に笑う。
「さて、お父様。わたくし、知っておりますのよ。あなたの隠された『裏の顔』を。」
吉田は一瞬、冷や汗を感じた。
「何の話だ。」
「しらばっくれても無駄ですわ。お父様が……傘マニアであることを!」
「…………は?」
「会社に行く時も、帰ってくる時も、その傘を携えている。しかもどんな天気でも。これはもはや……偏執的な愛ですわ!」
吉田は無言で傘を見つめた。
「それで?それがどうした?」
「ククク……わたくし、その情熱を応援いたしますわ!」
美咲は謎の決意に満ちた目をしていた。
「いや、応援しなくていい。」
「ところでお父様。」
美咲はスッとスマホを差し出した。そこには……。
「こ、これは……!」
吉田の机の引き出しに隠していた、秘密のファイルの写真が映っていた。
「なぜこれを。」
「フフフ、愚兄がね、お小遣いほしさに売ろうとしてましたわ。でも、わたくしが先に手に入れましたのよ。」
「翔太……あいつ……!」
「さて、お父様。わたくし、提案がありますの。」
美咲は微笑んだ。
「わたくしを、あなたの仕事に連れて行きなさい。さもなくば……この写真、流出いたしますわよ?」
吉田は頭を抱えた。
「……やはり愚娘だ。」
──つづく──
コメント
3件
神作とわこの作品のことを言うんだな! ここでまさかの娘登場だと、、、!相変わらず似てないな〜(性格その他もろもろが)続き待ってます(*´꒳`*)
今回も神ってましたぁぁ!!! 娘ちゃん登場だわ!!(? よっしー、、、頑張れ!!!!!!!(((( 続きもめっさ楽しみ、、(◜ᴗ◝ )←?