髪の話5 今回は短いよごめんね
レダーヨージローの髪
切ろうかな、髪。
半年以上切らずにいた髪は顎下まで伸びていて、正直制服には似合っていない。
大型の時みたいに結んで過ごしているけど、いい加減めんどくさい。
でもなあ、惜しい気がするんだよな…。
自分でも子供じみた馬鹿げた考えだというのは分かっているが、
あの街の、あの街で過ごした思い出がこの髪にあるような気がして、切る気になれないのだ。
「まだ、結んでおくかぁ……。」
ロッカーの鏡に向かって、誰に聞かれることもない独り言。
髪ゴムを手に取り慣れた手つきでひとつに結ぶ。
コーギーのしっぽみたいに、チョロリとした癖のある髪束。
すごく愛おしいものに思えて、寂しくて。
手袋を外した手で何度も何度も撫でた。
胸がいっぱいで、でも、なんか足りなくて、
「レダーさん。」
!!
「あ、あぁどした?」
「すいません、練習用ヘリの使用許可を頂きたくて。ハンコお願いします。」
「おっけーいいよ。練習すんの偉いだねぇ。」
「レダーさんに早く追いつきたくて。」
街を出る前からの後輩くん。
見られたかな…。やだ恥ずかしい。
もうすぐ四十のオッサンが自分の髪を撫でているなんて気持ち悪くないか。
「レダーさんの髪、オレ好きですよ。」
「へ?」
「街出る前もめちゃくちゃカッコ良かったっすけど、今の結んでるの、より強くなったって感じがして好きです。」
後輩くんはへらりと笑って言う。
なんか、なんかすごい、うれしい、
「…………っ」
「レダーさん!?え、え、なん、ごめんなさい!?」
「……や、違う、いやだったんじゃなくて、その、なんだろ、あーー……。」
顔を覆う俺を見て狼狽える後輩くん。
情けない。けど、全部報われた気がして、涙が止まらなかった。