「僕は、フョードル君、君達が羨ましいよ。」
傘を持ち彼に差し伸べそうとする私とは裏腹に、彼はそれを拒みずぶ濡れになる。
11月の秋特有の少し肌寒い風と雨で寒い筈なのに。
「其れは、何故だい?」
「直ぐに解るよ」
何時もの太陽の様に明るく、にこやかな彼は此処には居なかった。
眼の前の彼は只ドミノで游ぶ幼児の様に戯言を並べ、
ドミノを倒す大人の様に妄言多謝を繰り返していた。
本来の彼はこんなにもシーソーの様に不安定で鬱屈で、悲観的なのか。
流石、
天人五衰の愛され者の悲劇のお姫様。と言うべきか
最初はあのフョードルや天空カジノしか居場所のないシグマがこんなにも執着しているのか不思議だった、
が直ぐに其れに気付いた
ハイテンションでファンキーだし笑顔で人間を炳然と殺す。
然し彼にも弱さが有る
否、彼は弱さだらけだ。言うならば彼が一番弱い
そんな彼に皆狂わされたのだろう。
「じゃあ、私が忘れさせてあげようか?フョードルの事。」
とても滑稽な話であのヒョードルが聞いたら噴き出すだろう
けれども私も其の一人だった
「是非とも御願いするよ、ポートマフィアの最年少幹部様」
こうして何とも醜形な私たちの恋人生活が始まった
「ニコライ、お早う」
気だるそうにベットに蹲る恋人に優しく挨拶をする
「少し、少しだけ、ほっといてくれないかい、」
彼は今は少し精神が不安定な様で朝ご飯だけ置いてそっと部屋を後にした
そりゃあ彼にとって親友と助手を失ったのだから
、、、、、、私は彼にとってただの都合の良いセフレなのに
ただ今くらいは誰よりも愛する彼を甘やかしても文句は言われないだろう
私は苦い苦い珈琲を一杯飲み干した。
「お早ーう!!!!!!!!」
あれから2時間程経っただろうか。
彼もそろそろ本調子に戻ったみたいで、何時ものハイテンションさが戻って来た
「やあ、お早う。ニコライ
朝食は用意しといたよ」
「有り難う」
丁寧に食事を口に運ぶ彼は何とも優雅で気品溢れていた
「ねぇ、治君。
君は、気持ち悪いと思わないの?」
ピロートーク中につまらなさそうに天井を見つめるニコライに問われる
私は、と云うと誰かさんが呑み干した。大量の薬瓶を眺めていた
「気持ち悪いって、、、、、私も同じだしそんな事今更思わないよ」
ほんの一瞬だけニコライは私に目線を移したものの、直ぐにまた天井を見る
「僕はね、生きる意味が判らないんだ。
昔は死にたくなくて、死にたくなくて、必死に足掻いて来たけど、もうどうでもいいんだ」
語れば語るほど暗くなる声色に困った様に眉を下げる。
「もう一回しよ?そうしたら忘れられる気がするんだ」
私は彼に促される儘、もう一度交わった。
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