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黒い希望
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ゴーンと鈴の音が鳴る
新しい客が来たことを知らせる合図だ
立て付けの悪い扉を慣れた手つきでこじ開ける
「初めまして」
最近は客が多いらしい。
多分、誰も来ないような森の奥深くにある家_というか屋敷か。
今日は雨が降っていて、外に出る気も起きなかった日だった気がする。
そろそろ空が急に黒に包まれる時間になってきて、
なんとなく何もする気になれなくて、ソファに寝っ転がってぼーっとしてた時だった
ゴーン
「こんな天候ン時に客だァ? 」
最近は雨続きだったからか、少し手こずってしまった扉を「はーい」なんて言いながら開ける
「あ…すんません!入れてくれへんかな」
それは俺よりか身長が数十センチか高い、全体的に色素が薄い博識そうな奴
「あー、ええですよ」
風邪が引いてはいけないと思い1度ソファに座らせタオルで拭くよう指示する。
「随分と静かですね」
「昔ぎょうさん人おってんけどみんな出てってもうて」
人来るのは珍しいけど、なんて言葉は飲み込んで。
「名前は?」
「エーミールです」
「俺はゾムってゆー」
「ゾムさんですか!今日はありがとうございます!」
「エミさんは、なーしてここに?」
「お恥ずかしいことに、雨の日に見られる珍しい蝶がおって…」
「追いかけてたら雨強ぉなったと」
「です…」
「ふはは!子供やんけ」
「いや!珍しいんやてほんと!世界でも一定地域しか見られかかったり!!」
「へえー博識やな」
「勉強が好きでねぇ」
「そうなんや。昔住んどったやつもそういや好きだって言ってたかな」
「えっ!ホントですか!是非話してみたいな」
「すまんな、ソイツが10歳くらいまでしか一緒に居らへんくて、どこに行ったんかも覚えとらんねん」
「そうなんですか…今は何歳なんですか?」
「今は…俺と3歳差やから29とか?」
「そうなんですね!俺と同い年やな」
「え、エミさん29なん?」
「はい…あと半年で三十路…」
「まあ元気だせって俺もゆーて26やし」
「まだ若いやんか…全然見えへんですね、23とかかと…」
「ええーマジ?俺はエミさん30後半やと思ってたけどね」
「ゾムさん!?」
「ふはははw冗談やわ!まだ全然若そうやで。髪以外…」
「最後ォっ!」
「そういや、エミさんって食べ物何が好き?」
「うーん…基本なんでも好きやけど」
「強いていえば?」
「強いていえば麻婆豆腐とか…あと外国料理とかは結構いいと思いますね」
「へーでも怖くねぇ?他国のもん食うの」
「確かにそうですけど、友好関係結んでる国の物はかなり安心して食べれるけどなァ」
「確かに」
「ゾムさんは何が好きなんですか?」
「俺は辛いもんならだいたい何でも〜けどトマトは嫌い、他は甘ったるいもんも好きちゃう」
「誰にでも好き嫌いはありますもんね…」
「じゃあ激辛麻婆作ろっかな」
「いいんですか?!」
「ちな、エミさんって大食い?」
「周りと比べるとかなり食べるほうだと思うよ」
「じゃ、その食べっぷり見せてもらお」
「で、でも馬鹿みたいな量入れられても食べられへんからね!!」
「なんて言いながら食ってくれるやん」
「う…作って貰った分残すのは申し訳ないかと…」
「いやー見てて気持ち良かったわ!ありがとなエミさん!」
「エミさんこの部屋な」
「ありがとうございます!」
「エミさんにピッタリやと思って」
「おお!本が沢山…!」
「さっき話してた勉強好きな頭いいやつの部屋やで」
「おお!気になってた本ばっかり…!」
「そりゃ良かった」
「見覚えのある本も沢山あります!!」
「いつか帰ってきた時のために、そいつが好きそうなやつ沢山買っといたんよな」
「え」
「優しいかったから見たことあっても喜んでくれるかなって。まあ結局そんな日、来ること無かったけど」
「そっか…優しいんやね、ゾムさん」
「いや全然?昔はやんちゃで迷惑しかかけとらんかったわ。居なくなってから気づいたけど、そいつのこと好きやったんやなって」
「ええ?!」
「あっ!ちゃうで?!恋…とかちゃうくて!普通に、兄弟?的な感じとしてな!!」
「ああ、なるほど…でも、見知らぬ急に来た他人を家に入れてくれるような、そんな優しいゾムさんなんですから、きっといつか帰ってきてくれますよ」
「そーかなぁ〜」
「きっと、場所を忘れてしまっても道は覚えておると思うよ」
「そっかァ、期待しちゃうな」
優しくてどこか抜けてて、何でも耳を傾けてくれて、どんな無茶振りをしても受け止めてくれる、ような、人 だった 気が す る。
名前はたしか___
次の日
「ゾムさん、昨日はありがとうございました!」
まあ、なんという危機感してんだこいつ
疑いもせず出した茶を飲んで、そのまま案内した部屋で直寝やて?バカか
いや、昨日バカほどプライベート話した俺も俺か…
だが、それとこれとでは話が別だろ。
紅茶を飲んだ時なんて、
「エミさんさァ…もっと危機感持った方がええで」
と言ってみたが
「え?」
なんて間抜けな顔するもんで__
「お礼なんてええよ。エミさんおもろかったし」
まるで昔のようで、久々に楽しいと思った。
「それは良かったわ!」
天候は晴天。
最近は二週間くらいずっと降ってた気がするが。
「じゃあ、ばいばいエミさん」
「お邪魔しました!それでは、また」
今日ほど雨が降ってと願った日はない気がした。
ゴーン
最近は客が多いらしい。
コメント
1件
第1話、拝読しました。雨の日にふらりと現れたエーミールさんと、一風変わった優しさで迎えるゾムさんの距離感がとても好ましかったです。特に“遠い昔にいなくなった誰か”のために本を買い続けているゾムさんの台詞には胸が締め付けられました。エミさんが「道は覚えておると思うよ」と言ったときの響きも、なぜだか頭に残っています。初対面の二人の空気が、もう何年も前から知っているかのような自然さで描かれていて、すっと物語の世界に入り込めました。続きが気になります。