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ヌーオスタ村では、王都ヘモリコンに援軍を送るかどうかで議論が続いていた。
「大丈夫ですって! うちの親父、ゴキブリみたいにしぶといですから! 僕たちはここでゆっくりしてましょう! ぶっちゃけ、ジェロードさんを魔改造したせいで僕、結構疲れてるんですよねー」
まずは逆神六駆。
当然と言ってもいいほどの大吾放置派。
「芽衣はちょっと、アレがちょっと調子が悪いので、ちょっとアレです。援軍に行きたい気持ちはあるです! だけど、ちょっとアレです!! みみっ!!」
師匠をしっかりと見習う少女、木原芽衣。
何かがちょっとアレなので、参戦を見送る構え。
「パイセンは行きたいんだけどー。なんかねー、さっきのパパさん見てたらさー。あたしも胸とかお尻が『門』につっかえそうなんだよねー。もしそうなったら、恥ずかしいからにゃー」
椎名クララ。肉体的な問題で参戦できず。
ちなみに、この発言は隣にいる清らかな乙女の控えめなハートを傷つけております。
「異界の者たちよ。我の翼ならば、王都までさほどかからずに到達できると思うが。この体になってから飛んでおらぬので断言はできかねるが、試してみる価値はあろう。何人かは背に乗せる事もできる」
竜人ジェロード。彼は強者と戦いたいため、参戦肯定派。
『門』の問題も自分が飛んでいけばクリアできると胸を張る。
「バカ言ってんじゃないですよ、ジェロードさん! あなたね、さっきまでドラゴンだったのに、人のサイズになってるんですよ!? まずは慣らし運転から始めないと! 急に王都まで飛んでくなんて、僕ぁ認めませんよ! ……もっと親父を苦しめてやらないと!」
「人は情に弱く、特に血縁となればなおの事と冥竜殿は申しておったが、誤りであったか」
『ううん? 違うよ、ジェロードさん? そこの逆神くんを人でカウントしないで?』
せっかく王都へと向かう道筋ができたのに、「あたしゃ認めません!!」と息子の連れて来た彼女がド派手だったか何かで結婚を許そうとしない面倒な姑みたいな理屈でその道を通行止めにする六駆。
悪魔かな?
失礼。悪魔であった。
「もぉぉ! みんな、ひどいよぉ! じゃあ、わたしが行く! この小さい『門』でも、わたしなら潜り抜けられそうだし!」
「うん! 確かに! 莉子は身体に凹凸が少ないから、すんなり通れるだろうね! あああっ!? 莉子さん!? 待って僕なにか言っちゃいましたか!? ああああっ!?」
悪魔、清らかな乙女の莉子パンチによって粛清される。
「すみません! 鍛冶職人の皆さん、剣を作ってもらえませんか? 代金はちゃんとお支払いしますので、とっても良いものを作ってください!!」
莉子の行動は称賛に値する。
普通、いくら彼氏の父親だからと言って、あんなどうしようもない中年に救いの手を伸ばそうとは思わない。
ところで、そもそも君は六駆と付き合っていない事にそろそろ気付いて欲しい。
30分ののち。
鍛冶職人が村の建造物から剥ぎ取って来た鉱石を元に、2本の剣を作り上げる。
どちらも実に美しく、磨き上げられた鏡のように光っていた。
「まーた。そんな上等な剣なんか作っちゃって。もったいないなー」
『逆神くん。ちょっと悲しいお知らせがあるんだけど、良いかね?』
まるで山根健斗Aランク探索員のような話題のフリ方をする南雲。
六駆は忍び寄って来る得体の知れないものに恐怖したと言う。
彼が恐怖すると言う事は……。
『その剣、材料にオジロンベがたんまり使われてるよ。しかも、製作の過程でも砥石とかにオジロンベが……。言いにくいけど、既に費用が1千万越えてる』
「んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
信じがたい事実だった。
幻竜の爪と翼を高く見積もって700万。
協会本部の追加報酬で100万。
久坂監察官のポケットマネーから200万。
計算してみると、ぴったり報酬分の費用が使われていた。
しかも、ダメ親父のために。
六駆は叫んだ。
その悲痛な声は、遠く離れたヘモリコンにも届いたとか、届かなかったとか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おぎゃああああっ! その闇属性の攻撃ヤメろよ、お前! 正々堂々と戦え!!」
「……逃げ回るばかり、それも長らく経つのに一向に逆襲して来ないうぬに言われたくはない」
こちら、王都の血戦場。
30分間の追いかけっこをどうにかやり過ごしている逆神大吾。
だが、その足取りはかなり怪しくなって来ていた。
「ちくしょう! せめて剣があれば! うぉぉぉ! 一刀流! 『次元大切断』!! あああ! ダメだ、くそ! おたまじゃ斬れる範囲が狭い!!」
「もはや是非もなし。そろそろ仕舞いにしよう。逆神大吾。できれば今のうぬを見たくはなかった。さらばだ。『冥府の風穴・狂踊』」
その時、『門』から飛び出して来た影が、大吾の前に立ちはだかった。
彼女の名前は小坂莉子。
「やぁぁぁぁぁっ! 『苺光閃』!! 出力継続、熱線版!!」
「な、なにぃ!? 小娘、なんだそのスキルは!? 我の闇の攻撃を貫いただと!?」
「うぉぉぉ! 莉子ちゃん!! おじさん信じてたぜ! 助けに来てくれるって!!」
「当たり前ですよぉ! だって、将来、えっとぉ……。お義父さんになるかもしれない人が、ピンチなんですもん!!」
もう1度紹介しよう。
彼女の名前は小坂莉子。
残念な思考に支配されつつある、現世でも指折りの清らかな乙女である。
「お父さん! これ使ってください! ホマッハ族の鍛冶職人さんに作ってもらった剣です!! なんだかすごいものだって南雲さんも言ってました!」
「うぉぉ! ありがてぇ! うん、こいつぁ確かにとんでもない煌気を感じる! すげぇ業物なのは間違いねぇや!! これで戦えるぜ!!」
起死回生を図る逆神大吾。
そんな彼の前に、空間が歪み『門』が出現する。
やはり大吾の出した『門』のサイズなので、門と言うよりも小窓だが。
その小窓から顔を出したのは、息子の逆神六駆。
「おお! 六駆! 助かるぜ、剣の差し入れ!! おたま寄越して来た時にゃ鬼かと思ったが、ちゃんと準備してくれてたんだなぁ!!」
『親父。1つだけ約束してくれる?』
「おう、どうした? この戦いが終わったらってヤツか!?」
『その剣、汚したり破損させたりしたら。僕は親父を殺さなくちゃいけなくなる』
「剣なのに!? えっ!? 敵を斬ったりするのに汚しちゃダメなの!? 嘘だろ!?」
六駆はまだ、諦めていなかった。
「オジロンベの剣が美品として確保できれば、現世で換金できるはず」と。
「ホグバリオンもあるし、どうにか500万くらいは行くだろう!!」と。
ホグバリオンの所有権がいつの間にか完全に六駆のものになっている。
普通、その手の剣は異世界に遺して「英雄が使った剣」として代々受け継いでいくものではないのか。
否。
六駆にとって、大事なのは異世界の伝説ではない。
現実社会で使える日本円なのだ。
何なら、ドルでもユーロでも良い。現世の通貨ならなんでも良い。
「お父さん! 冥竜が来ます!」
「ええっ!? どうすりゃいいの!? オレ、冥竜か六駆のどっちかに殺されるよね!?」
状況は刻々と変化するのが戦場の常。
六駆もどうにかオジロンベ製の剣を死守するべく、方針を変更して戦闘に介入するつもりである。
金勘定のせいで六駆と大吾と莉子の三者から集中攻撃を受ける事になる冥竜ナポルジュロ。
実に気の毒としか表現できない。
コメント
1件
第188話、読んだわ! 莉子ちゃんまじ最高だった…!「お義父さんになるかも」って言いながら飛び込んで来る清らかすぎる乙女、その直後に六駆が「剣汚したら♡♡♡」ってマジギレしてるのも含めて全員ブレてなくて笑ったw 大吾が初めていいオヤジっぽくなったと思ったら金銭感覚で六駆に詰められてて、親子の温度差が絶妙だわ。 バトル描写も熱いし、日常パートの緩急がめちゃくちゃ好き。次も楽しみにしてる🔥
五木友人
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#コメディ
ウサギ様
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裏五条
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#学園
大正
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