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山の麓にある木々の生い茂った神社で駄菓子屋で買ったアイスをかじる。知覚過敏で溶かしながら食べなきゃいけないのが苦だ…。セミの鳴き声とジメッとした暑さを肌に感じながら黙々と食べてるとあっという間に棒だけになった。
けど、まだまだ暑い……そういえば神社のさらに奥に川があった気がする。
そう思って過去の記憶を頼りに道なき道を進むと無事川に出た。
涼しい風がふわっと吹いて、昔見た景色と全く変わらないことになんだか涙が出た。水の流れは緩やかで川の底が鮮明に見えるくらい透き通ってて、浅い。
社会は想像以上に自分に合わなくて逃げてきてしまった。うん。
少し涼もうと思ってクロックスをすぐそばに置いて足を川に入れる。さすがに少し冷たかったけどまぁ気持ちいいくらいか。
川の向こう岸に誰かがぼーっとたっている。自分は陰キャで話しかけるとか無理だから、自分の足元に目を移した。
ばしゃばしゃと水の音が聞こえて目の前に誰かが立った。だけど凄くおかしい。素足だろうに肌の色が…いや人種差別とかじゃなくて。なんか青色…………….。
恐る恐る顔を上げてみる….着物を着ていて全体的に青が基調の柄、髪も青色……。顔は随分整っているように見える。
「なあ、お前」
うわぁ!喋った!!!!
「いや、すまん。こんなやつに話しかけられたら怖いよな…..。普通に。」
え?
予想外のことを言われてびっくりした
いや、別に嫌とかは…なんならこんな不思議な生物、気になるな?
「いや、別に嫌じゃない…けど。」
眉を下げて気まずそうにこちらを見ている
そのナリからは想像もできない情けない顔だ
思わず吹き出してしまって次はこちらが怪訝な顔を向けられる。
「うん、うんwごめん…ww」
そのナリでそんなにも情けない顔をするのが意外だったと改めて説明する
「情けな….!?情けないってなんや!!」
「もう〜、ううううぅぅぅ」
と顔を覆って恥ずかしそうに唸っている
今彼の顔は赤くなっているのだろうか?
彼に赤い血が通ってるとは思えないが、
そんなくだらないことがどうしようもなく気になって彼の腕に手を伸ばす。
触れた腕は特別冷たいわけでも熱いわけでもなくて、ただ冷たい風に当たっていたせいで少しひんやりとしてた。
やはりその見た目故なのだろう。誰かとこうやって接触することがないからか掴まれた腕を見て「あ、あう…」と情けない弱々しい声を上げている
その青い手の隙間から見えるその顔は赤くなってはいなくて、ただただ眉を八の字にして汗をだらだら流している。
「ねぇ、顔」
「あぁ、ええ?」
「見せてよ」
まるで口説いてるみたいだ。でも、どうしようもなくからかいたくなった。
「お、おま…!おまえ….!!お、俺だって一応は妖怪で…!!!」
そう言ってまた、うう。と唸って次は泣き出してしまった。気持ちが昂ると感情の行き場が分からなくなるタイプなのだろうか。
どうにか落ち着かせたくてその青い腕をすりすりと撫でる。
青とベージュのコントラストが妙な気持ちにさせた。
そのせいだろう、もっと深く踏み込みたくなった。失礼なことだろうなとは思ったけど
腕を引いて顔と顔を近づける。
未だ溢れて止まらない涙をちゅうと吸ってみた。別にソレの涙は甘いわけでも苦いわけでもなくて、少し塩っけのあるあじ。決して美味しくはなかった…けど、涙は血液からできてるという話を思い出してなんだかドキドキした。背徳感だろうか?
そいつはわなわなと体を震わせて信じられないと言いたげな顔でこちらを見ていた。
ばしゃ!と音を立てて川に倒れ込む。
あーあ、その着物は良質なものだろうに勿体ない…。
大丈夫?と手を差し伸べた
「誰のせいでこんな…!お、お前!」
そう言われて手を叩き落とされてしまった。
思ったより力が強くて手がヒリヒリした。
それを咎めるようにキッと睨むと力加減をできなかったことに気づいたのかあわあわと吃りながら謝罪をされる。それが面白くて
「いたいなぁ〜?」
そう言ってわざとらしく眉を寄せるとやっと引っ込んだ涙をまた目から溢れさせてもう俺断髪する…。とグズグズ泣かれてさすがにやりすぎたなと思えてきた。
じゃあ….と話を切り出す。
明日もここで会おう。と言った
名前も聞いていないし、妖怪だなんて興味深いじゃないか。
こんなに弱気な鬼なんているのか….。
「ええんか…?そんな….。こんな…..こんなことってあるんや….」
酷く自己肯定感の低いやつだな。と思う
明日も会いたいのだとはっきり伝えてみると嬉しいと半泣きで言われてキュンとしてしまった。うん、なんだか犬みたいだな
今日は帰る。と言われ家があるのかと何となく驚いた。仲良くなったら家に入れて貰えるだろうか…..。きっと狭い納屋だろう。男女が3日間共に過ごすように狭い。
ミカノモチヒ…..いや、ふむ………..。
それじゃあ…..とまるで何を言ったらいいかわからないとでも言いたげに言葉を詰まらせる
「またね」
「またね..??」
「はあ……またねって言うのはまた会おうねの略だよ」
そう言って説明してやる、そんなことも知らないくらい誰とも関われていなかったのかと驚く。またね、またね。と教えた言葉を反芻させている
わからないことはこれから教えてあげる。
「じゃあ、またね…?」
「うん、またね」
嬉しそうにさっき教えた言葉を使っていてなんだか温かい気持ちになった。
彼の歩いていく背中を眺めながらこれは楽しくなると確信した。