✧︎ attention ✧︎
➵ 捏造 / 二次創作
➵ 本編伏字 ×
➵ nmmn / rukg
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✧︎ 叢雲 side
「 … はぁ、 」
独り、誰も居ない静かな部屋で溜め息をつく。
“ 溜め息をついたら幸せが逃げる “
なんて諸説を聞いたことがあるが、今はそんなの関係ない。
だってもう既に逃げているのだから
叢雲が想いを寄せている彼と出会ったのは約2年と少し前のこと。
2023年×月×日、叢雲は『にじさんじ』というVTuberが集うグループに『MECHATU-A』の一員として有難く所属させて頂くことが決まった。同時期にデビューをする、所謂同期として仲間になった彼と打ち解けるのはそう難しくはなかった。お互い『暗殺者』と『忍者』。暗闇の中で戦うもの同士、どこか理解できるところがあったのだろう。今思えば今まで忌み子として扱われていた自分の立場を理解して貰えた、あの瞬間にはもう彼に惚れてしまっていたのかもしれない_。
別に初恋という訳では無い、小学生の時に年上の女の子に好意を寄せていたことだってあった。そう、『女の子』に。初めてだったのだ、異性ではなく同性を好きになったのは。どうすればいいか分からない。付き合いたい、抱きしめて欲しい、自分を好きだと言って欲しい。なんて欲は勿論ある。けれど、それを言葉にしてしまってはどうだろう?同期という近しい立場で居れたのに、近づくどころか、それ以上遠のいた関係になってしまっては、後悔先に立たずというものだろう。それに、他の同期にも迷惑をかけるかもしれない、気持ち悪いと思われるかもしれない。無論、そんなのは嫌だ。だから言葉にすることは出来ない、許されない。これが悲しい現実というものだ。
そう、このように頭の中ではわかっている、分かっているのだ。デメリットが大きすぎるのも。けれど恋心というのはそう簡単に捨てることは出来ない厄介なものなのだ。彼を、小柳を振り切ろうとしても、小柳から話しかけて貰えたら分かりやすいように気持ちが高揚するし、自前のポーカーフェイスで難を逃れているが、彼が居なくなった瞬間に気が抜けて頬が赤く染まるのだ。これは変えようのない事実である。勿論こんな自分のことが嫌になることも、嫌いになることも多々ある。何故自分の恋心が誰かにとって迷惑になるということを理解した上で振り切ることが出来ないのか。考え込んでも結局自己嫌悪で終わる。だからせめて、彼らの前では叢雲の嫌いな自分を出さないように全力を注いでいた。
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その結果がこれだ。冒頭で話したように、叢雲は今幸せを逃がしてしまった。否、逃げてしまったの間違いだろうか。…そんなのは今考えるべきことでは無い。今頭を回すべきは、白昼に駅へ足を運んだ際に目に映った、想いを寄せている彼と自分の大切な同期の姿だ。別に、ずっと2人のことを眺めていた訳では無いが、叢雲の目には距離感のおかしい、楽しそうな2人の姿が映ったのだ。自分は人里離れた村からやってきたから、この世界のことはよく知らないと自認しているため、2人の距離感がみなの言う”普通”だったのかもしれないと考えたが、叢雲にはどうもそうは思えなかった。叢雲は、そもそも外に出ないで有名なあの小柳が、同期である星導と出かけている事に違和感、もしくは嫉妬かもしれない気持ちを抱いたのだ。その気持ちのせいか、今日はずっとその事が叢雲の脳内を占領していて、他に頭が回らなかった。何度赤信号で渡りかけただろうか。
と、いう感じでずっと考えていたのだが、先程漸く自分の中の結論が出たのだ。最悪な結論…、だけれど。きっと彼らはお互いに想いを寄せているのだろう。そういう関係があるのかないのか、そこまでは考えきれなかったけど。この答えを出したのは、決して今日の出来事だけでは無い。小柳と星導は叢雲が出会う前から知り合いだったらしいこと。片方は記憶が無いと自称しているが。そんな星導を小柳は誰よりも気にかけているし、自分を気にかけていることに気づいているのか、はままたそういう訳ではないのかもしれないが、星導からしても”相棒”と呼ぶ、呼べる相手は小柳一択だろう。僕ら同期から見てもそう思うよねって話をしたし、リスナーさんからも『ドンタコ』と親しまれて人気があるペアだ。叢雲が「きっと彼らはお互いに想いを寄せている」と結論を出すにしても十分な理由になる。ただこちらで勝手に解決したことを言いふらすことは確実に良くないと分かっている。例え本当に想いを寄せあっていたとしても、そうでなかったとしてもだ。憶測というものはとても恐ろしいものなのだ。だからこれは本当に叢雲の自分を抑えるための一考えに過ぎない。
だから叢雲は、頑張って自分が捻り出した答えが間違っていますように。と願いながら重い瞼を閉じた。
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あの日から数日経った今日、久しぶりにDyticaで本部と言われる場所で集まることになった。『本部』と言っても別に堅苦しい場所な訳では無いし、叢雲たちDytica専用の部屋もあるため、そこで少し今後の方針やただの世間話でもしよう、という話になったのだ。勿論、あの小柳も来る。「リモートでよくね?」なんてほざいていたが、伊波の圧に敗北していた。
本人たちに言うと弄られそうだから絶対に言わないが、叢雲は同期に会うことが大好きなのだ。だから今こうやって集合の15分前に着いてしまっている。暇だな、と思いながらスマートフォンでエゴサをしていると扉が開く。開けたのは伊波ライで、よっ!と明るく話しかけてくる。彼と話すとどれだけ曇っていた気持ちも明るくなる。それほど陽の人間なのだ。……中学生の頃とあるマルチメディアプロジェクトのキャラクターにガチ恋してたことは…一旦なかったことにして。
「 おひさ〜カゲツ 」
「 そんな久々とちゃうやろ 」
「 前事務所でもあったし 」
「 それはそう 」
「 けど挨拶の鉄板といえば久しぶりじゃない?? 」
「 そうなん、笑 」
こんな他愛のない会話でも楽しいと思ってしまうのは末期なのだろうか?自分がイカれてるほど同期を好きという事実は受け入れたくないため、普通であって欲しいと願う。…最近は神に願ってばかりだ。
なんて思っていたら伊波が『なんでも見透かしてますよ』と言いたげな表情で聞いてくる。
「 ところで何に悩んでるの? 」
「 ……は? 」
少し強く言いすぎたか?いや、誰でもそんなことをいきなり言われたら同じ反応になるだろう。突拍子もなく悩みを聞かれたのだから。いつもの自分ならきっと軽く流せたのだろうけど、今は別。本当に悩んでいることがあるから。勿論、それは小柳のこと。言葉に詰まってる叢雲を見て伊波は確信を着いたように話してくる。
「 やっぱり!なんか悩んでんでしょ〜 」
ニヤついた顔でそう言う彼は悩みを聞いてくれる優しい少年ではなく、ただの小悪魔にしか見えなかった。
「 なんでわかるん……。 」
「 同期だから? 」
「 そーいうもん? 」
「 そーいうもん。 」
「 で、どーしたの。 」
「 お兄ちゃんに言ってみなさい!! 」
「 お兄ちゃんて、笑 1つしか変わらんやん笑 」
「 そこは気にするな。 」
今悩んでいることは到底言えたもんじゃない。つい数日前に彼を好いているということを表に出さないと決めたばかりなのだ。
…ん?…でも特定の名を出さなければ…?”好きな人”という固有名詞を使わない方法で相談すればこの恋先はバレずに相談できるのでは…?…よし、我ながら天才。
「 …まぁ。うん。 」
「 好きな人が…出来た。 」
「 ふぅん…… 」
「 ……… 」
「 …? 」
「 ………………?!?!! 」
「 すッ 好きな人が出来た…?!!! 」
「 あッ”、ち”ょい!!” 」
伊波なら、伊波だけなら…と思って意を決して小声で伝えたのに、伊波が驚きのあまり大きな声を出して僕の言葉を復唱してきたため咄嗟に自身の手で彼の口を塞ぐ。叢雲の言葉を処理しきれていないのか、伊波は瞬きを必要以上に繰り返していたが、少し経つと落ち着いたらしく、「ごめんごめん」と言いながら叢雲の手を退けてまた口を開く。
「 え、えー…まじかぁ… 」
「 …やっぱおかしいよな…、わかっててんけど… 」
「 あッ、いやいや?! 」
「 おかしいとかそーいうんじゃなくてね?! 」
「 なんか…あのカゲツが恋するほど成長したんだなぁって思ったらしみじみしちゃって笑 」
「 親か、笑 」
「 もう親みたいなもんだろ!! 」
「 それは無い 」
「 それは無いかぁ 」
そうかぁ…まじかぁ。と伊波がまだ余韻に浸ってる隣で叢雲の頭には1つの疑問が浮かぶ。今の返しとかからすると、伊波は多分、叢雲が今恋している相手は異性である。と勘違いしているだろう。もしそうじゃなかった場合、叢雲が同性を好いていた場合、伊波はどう思うのだろうか、と。そもそも伊波は同性愛、*“LGBT”に対してどう思っているのか、と。伊波がLGBTに対してどう思ってるかによっては叢雲が今同性愛者であることを隠す必要はないのではないか。不安と聞きたいという好奇心が叢雲の頭をぐるぐるとさせる。うーん、うーんと捻った末に、聞こうと決断し、口を開こうとする前に伊波がまた質問を投げかけてくる。
「 で、なんで悩んでんの?絶対に叶わないとか? 」
「 あ、いや…うーん…まぁ、せやね 」
「 へぇ〜?俺は絶対に叶わない恋はないと思うけどなぁ 」
「 … 流石に綺麗事すぎるか、笑 」
「 まぁ、絶対はないかもやけどね 」
「 それは確かに 」
「 …… 」
「 …あの…さ、 」
「 ん? 」
「 ちょっと話変わるんだけど、 」
「 なになに?いいよ 」
「 伊波って同性愛についてどう思う? 」
「 どうせいあい…? 」
「 あぁ、同性愛ね、…。 」
「 ぅん…、 」
「 どう、っていうのは? 」
「 ぁ、その〜… やっぱ賛成派と否定派がおるやん。伊波はどっちなんやろって、 」
「 なるほどねぇ 」
「 あんま考えてこなかったけど 」
「 別に否定する理由も気持ちもないから賛成派…だと思う。 」
「 そもそも好きな人が出来るって素晴らしいことだからね 」
「 対象がどうであれ、好きなら素敵だと思うよ、俺は。 」
「 …… カゲツは?どーなの? 」
「 ぁ、僕……は… 」
今自分は同性に恋していますと言うべきか、また叢雲の頭はぐるぐると回り始めた。正直伊波の「好きな人が出来るって素晴らしいことだからね」「対象がどうであれ、好きなら素敵だと思うよ、俺は。」という言葉を聞いて心が軽くなった気がする。彼になら言っても引かれないんじゃないか、と。なのに何故言うべきかと悩むのか。決まっている。伊波の放った言葉が、叢雲も対象かどうか分からないからだ。
どこか遠くの知らない人が誰を好きになろうと好きになること自体が素晴らしいことだと言っているだけで、身内もそうだとは限られていない。……いや、伊波はきっと含んでくれているだろう。2年共に歩んできた仲間だからこそわかる。仲間を信じろ、伊波を信じて言うんだ 。
「 僕は…いい、と…思う… 」
「 その…あの… 」
「 なぁに?ゆっくりでいいよ 」
「 …… 」
足の震えが止まらない。冷や汗が止まらない。こんなにも優しい彼に言うのを躊躇う自分が嫌になる。ゆっくりでいい、そう言ってくれた彼の言葉に甘えて、自分のペースで話すことにした。
「 あの…な、? ぼく、ぃま、すきなひとぉるって、いうた…やん、 」
「 言ったね。 」
「 で、その…すきなひとが、ぁ、 」
「 うん 」
「 どう…せい、…なんよね、 」
ついに言った。ちゃんと聞こえるように言えていただろうか?自覚できるほど声が震えていたが、伊波にはちゃんと届いただろうか。…否、心配する必要は無いようだ。だってこんなにも優しい顔で頭を撫でてくれるのだから。
「 ふふ、自分で言えて偉いぞ〜カゲツ !! 」
「 めっちゃ怖かったでしょ 」
「 う、ん…伊波は…引かんの? 」
「 なにが? 」
「 僕が…同性愛者…だってこと… 」
「 べつに?だって言ったじゃん俺。 」
「 好きな人が出来るって素晴らしいって 」
「 ジジくさいこと言うけど、さっきカゲツが好きな人が出来たって言ってきてほんとにちょー嬉しかったんだからね 」
「 性別なんて関係ないよ 」
「 ………ぐすっ、…う’、ぅう”…、 」
「 はうぇぇ?! 」
「 どした!!!? 」
性別なんて関係ないだとか、伊波の口から出てくる全ての言葉が自分にとって1番の救いになって、我慢できず泣き出してしまった。本当はこんな情けない姿見せたくないのに。そんな叢雲の顔を伊波は自身の胸に抱きしめるように埋めて、叢雲のふわふわとした頭を撫でる。1つしか年は変わらないのに、何故こんなにも安心感があるのだろうか。伊波の服をぎゅーっと掴むとそれに比例して伊波が叢雲を抱きしめる力も強くなる。小柄な体なのに凄く大きく感じたのは、彼の人柄も相まってなのだろう。こんなにもいい同期がいる自分はどれ程の幸せ者なのだろうかと思っていると、叢雲が泣き止んでからしばらく静かだった部屋に扉の開く音が響く。
「 わりぃ、遅れた 」
「 遅れてすみません〜 」
「 あ、俺悪くないですよ?小柳くんが絶対に寝坊すると思ってチャイム鳴らしに行ったら50回鳴らさないと起きなかったのが悪いんです。 」
「 はぁ?俺のせいにすんな 」
「 事実だから仕方ないですよ 」
「 ……って…、 」
「 え? 」
「 あ、お邪魔しました〜? 」
「 違う違う違う笑笑 」
「 …… 」
「 明らかに抱き合ってるじゃないですか… 」
「 友達間でもするやろ! 」
「 そうそう!俺は今カゲツを慰め 」
「 伊波? 」
「 スイマセン 」
「 …さっさと会議始めよーぜ 」
「 せやな 」
「 あ、うん 」
「 ……んふぐwwwwwwwww 」
「 ぇ、 なに、タコ、いきなり笑い出して… 」
「 ちょ!引かないでください! 」
「 狼って嫉妬深いんだなって思ったら笑っちゃっただけなんです!w 」
「 はぁ?お前何言うとん 」
「 カゲツには一生わかりませんよ 」
「 はぁ?!舐めとんのかァ! 」
「 ははは笑 」
「 ……チッ …ほしるべ …、」
「 なんか俺…色々察したかも笑笑 」
「 くそっ、さっさと会議始めるぞ、! 」
「 はいはい w 」
「 いつか気づいて欲しい人に気づいてもらえるといいですね 」
「 うるせ、ばーか 」
そこから3時間ほど4人で会議をした。会議と言っても、最初の30分以外ほぼ世間話だったが。正直、会議前に星導と小柳が耳打ちで何か言っていたことが気になりすぎて半分そっちに頭が持ってかれていたけれど。今日のところは解散、という形になってそれぞれの方面で帰ることになった。
うん、なった。
「 くぁ……くそ寝みぃ… 」
なんで、なんでこうなるんや!!!と心の中で大声で叫んでみた。うん、いや心の中だから大きいも小さいもあんまないけど。今の状況を端的に説明すると、4人で途中まで一緒に帰って、そこから家の方面で別れてそれぞれ帰る→何故か別に家が近い訳でもない小柳と一緒に帰っている。うん、説明しても頭の整理が追いつかん。正直、好展開ではある。好きな人とすっかり暗くなった夜道を2人きりで歩くという漫画のような展開。けど、今の叢雲にはこの好展開を上手く使うことができないのだ。そもそもなぜ小柳が叢雲の家の方面で帰っているのか。先ずそこが分からない。いや、何も分からないけれど。二人で配信することもなければコラボもない。強いていえば同期コラボやイベント等のコラボで話すくらいの仲である。言っちゃ悪いが話す回数や遊ぶ回数は同期の中でダントツで少ない。勿論大好きなことに変わりはないが、あまりにも話す機会がないとなると、こういう時でさえも何を話せば良いか分からない。はぁ最近は考えすぎだなぁと考えていると、あれ、これも考えてて、え、これも…もしかしてずっと考えてる…?と勝手にゲシュタルト崩壊を起こしてると、小柳が口を開く。
「 なぁ 」
「 …なんや 」
「 …今日俺と星導がDytica用部屋入った時に伊波とハグしてたやん 」
「 あぁ、おん。 」
「 なんで? 」
「 え? 」
「 いや、理由もなくハグなんてしねぇよなって… 」
「 あ、いや…そのぉ … 」
「 …もしかしてお前、伊波のこと好きなん 」
「 へ……? 」
「 え?!!! 」
「 おまっ笑夜だぞ 」
「 あぁ、すんません 」
「 って、え、いや、伊波のことは好きやけど、え、 」
「 それは恋愛的にも、? 」
「 いや…ちがう 。 」
「 ほんとに? 」
「 ほんま。 」
「 ……っだぁぁ、、よかったぁ…、 」
隣にいる好意を寄せている相手からいきなり質問されたかと思えば、他の同期を恋愛的に見ているか聞かれるし、NOと答えれば安心したように崩れ落ちながら情けない声でよかったとかいうし ……ん?よかっ、た?たしかに、今小柳はよかったって言ったか?流石に自分の聞き間違えではないかと疑うがこんな近距離にもいるのに聞き間違えるはずがないと結論出した。え、よかったって…それはどう言う……
「 ぇ、よかったって…どういうこと… 」
「 あ。 」
「 え。俺口にでてた? 」
「 うん 」
「 …はー”まじか……”やったわ…えぇ、嘘だろ……。 」
「 え、なになに、なんやどういう意味や 。」
「 う”、お前は分からなくてい… 」
「 …… 」
「 …そんなキラキラした目で見てくんなよ… 」
「 ? 」
「 はー……ふー… まぁ、知りたいん、だろ、 」
「 おん、 」
「 聞いてから、いきなりで困るとか言われても受け付けねぇからな 」
「 はぁ? 」
「 …俺はお前が好きなの 」
「 おん 」
「 わかってねぇな 」
「 え、え?好きなんやろ?僕も好きやで?小柳も星導も伊波もみんなも 」
「 ちげぇよ、そうじゃない 」
「 恋愛的に、だ。だからお前が伊波のことを恋愛的に見てないって聞いて安心したの 」
「 は、え、ん?え、うそ…え、うそやろ… ? 」
「 うそじゃねぇよ…、んなとこで嘘つくかよ…… 」
「 え、えぇ、… 」
「 っおい?!なんで泣く?! 」
「 だって、だって、うれしいんやもんっぐすっ、 」
「 へ、? 」
「 こやなぎは、ぐすっ、タコのことすきなんやとおもっとったから っ 、」
「 りょうおもいだっていわれてうれしかって、ひっぐ、 」
「 え、両想い?え?え?は? 」
「 ぼくもこやなぎがすきっ 」
「 ……っ 」
「 わっ 」
「 ごめん、我慢できねぇわ 」
「 はー、かわいい、もふもふしてる、いい匂い、あったかい、ちっちゃい、こそばゆい 」
「 全部、全部ずりぃわ 」
「 …… こやなぎ … 」
「 こうやって突っぱねずに抱き返してくるのも可愛い、素直、可愛い 」
「 う、// 」
「 お願い、我儘だって思っていいから、ロウって呼んで 」
「 ろ、ロウ、ぼくもだいすき 、かっこいいところも、優しいところも、情けないところも、声も匂いも全部、だいすきやで 」
「 ……サービス精神豊富だな、笑 」
「 ほんとかわいい 」
「 、// 」
「 ねぇカゲツ、周りからなんて言われようとどう見られようと、俺がカゲツを守るし 」
「 ずっと幸せにするから 」
「 俺と付き合ってくれん? 」
「 ……あったりまえやろ 、だいすきやもん 」
「 っは笑、最高の返事だな 」
「 愛してるよ、カゲツ 」
小柳はそう言いながら叢雲のふわふわな頭を撫で、ほんのり赤く染っている耳を触り、左手を叢雲の腰へ落として自身にもっと近づけ、右手を叢雲の顎に添えて上を向かせる。そうしたら満足そうな顔をした後、お互いの唇が触れるだけのキスをする。キスをされた叢雲の顔は茹でダコと言われるほどには紅く染まった。白狼だからか、はたまた猫なのか分からないが、夜目の効く小柳には紅く染った顔が丸見えだったが、当の本人は辺りが真っ暗だからバレていないだろうと、紅く染めた顔をにヘラと崩して満面の笑みを浮かべる。
お互いに満足するまでハグをし続け、5分が経った頃、ハグをやめて、どちらからともなく手を繋いで叢雲の家ではなく、小柳の家へ帰る。
繋がった恋人繋ぎは、先程実ったピュアな2人の恋心を象徴しているように、深く絡み合っていた
✧︎ 不安の先に
fin
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*LGBT ➵ 性的少数者(セクシュアルマイノリティ)を表す総称の一つで、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を組み合わせた言葉。
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長すぎると書き方変わるなあ …