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うちに来てくれないかと萌さんに頼まれて身構えた。

「もう交際の報告? 君がそうしてほしいならそうするよ」

「いや、許してもらえたってあたしがおばあちゃんに言っても信じてもらえないから、シン君の口から言ってもらおうと思ったんだ。でも、あたしの家族に交際の報告してくれるというなら、それはそれでうれしいけどな」

赤っ恥をかいてしまった。交際の報告はまた後日ということになった。


許しましたと伝えるだけだから、次の日の夜、萌さんに迎えに来てもらって加戸家を訪問した。

彼女の自宅は沼津港に近い住宅地にある一軒家。庭にツワブキが植えてあってうれしくなった。僕に教わってすぐネット通販で苗を買って植えたそうだ。

玄関で許したことを伝えてすぐに帰るつもりだった。静香さんだけでなく、静香さんに話を聞いたのだろう、萌さんの両親や妹まで僕のために玄関まで出迎えてくれた。萌さんの妹はまだ高校生だと聞いている。

「萌が大変失礼なことを申し上げたとさきほど聞きました」と父親。

「本来ならこちらから謝罪に出向かなければいけない話だと思います。本当に申し訳ありませんでした」と母親。

20歳の娘がしでかしたことの謝罪まで、親はしなければならないのか。親って大変だなと思った。

両親は深々と頭を下げ、その隣で静香さんは僕に拝んでいる。僕に拝んでも何もご 利益りやく はないと思いますけど。

「大丈夫です。もう許したので、静香さんも遠慮なくこれからも歌会に行かれてください」

「萌にみんなの前でひどいこと言われて、和田君こそ歌会に出られるの? 和田君が出ないなら、私だけ出るわけにはいかないと思う」

静香さんも平身低頭。萌さんの家族なのにみんな常識的な人たちで驚いた。萌さんは突然変異だろうか?

「僕はもう気にしてません。歌会にも出るので安心してください」

「でもあんなこと言われて……」

「おばあちゃん、しつこい! 本人が気にしてないって言ってるんだから、それで話は終わりだろ!」

「黙っていれば話が終わったものを……」

父親があきれ顔で萌さんを諭そうとする。

「付き添って歌会に行ったら、萌はまた暴言を吐くんじゃないか? そんなじゃ歌会にはもう行けないとおばあちゃんは言ってるんだ」

「暴言? 童貞だってけなしたこと? それなら二度と言わないから大丈夫」

「萌のその態度を見れば全然大丈夫だと思えない」

「だってこいつもう童貞じゃないし。童貞はあたしが卒業させた。今じゃ毎日セックスしてるんだ」

当然だけど萌さんの家族の視線が僕に集中した。

「和田さんとおっしゃったか。ちょっと聞きたいことがあるので、うちに上がってもらっていいですか」

交際報告は後日にという話だったのに……

失礼しますと言いながら僕が靴を脱ぎ出したのを見て、萌さんはただきょとんとしているだけだった。


君はスタジアムに吹く風のように

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