テラーノベル
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一時期は死にたくて仕方がなくて文房具から刃物まで全部没収されて、執事達に生活の管理を厳重に行われていた。
もう自傷行為やODはしないと約束させられてからは薬は管理下に置かれているが道具は自由に使わせてもらえるようになった。
ずっとベッドに居るのも退屈だし、お庭を毎日見て回るだけで疲れ果てて15時間くらい眠っていた時期も超えて、久しぶりに趣味を再開してみようかなと思ってそれも軌道に乗ってきた。
私はそろそろ現実世界の貯金も少なくなってきたし、働きたいと思ってルカスに相談してみた。
「お仕事をなさる?その体力で?朝起きて身支度を整えるだけでかなり手いっぱいでお風呂も毎日入れていませんよね?いきなり復職するだなんて無謀です。主様のスマホを預かっている間に主様の世界の福祉サービスの勉強をしていたんです。作業所というのはご存じですか?障がい者の就労の継続を支援してお金も貰えるところです。それにも種類があって基本的に週5で通わないといけないけれど最低賃金が保証されているA型、自分のペースで週1からでも通えるけれど工賃という形でお小遣い程度の収入しかないB型があるのです。
主様は障害者手帳を申請して貰ったと言っていましたよね?それならばどちらでも働けるはずです。私としてはB型で生活リズムを作ってからA型に移行するのがよろしいかと思うのですが、どうでしょう?」
私がスマホを預けていたのはほんの1週間くらい。その間にどこまで調べたんだろう。
というか、パレスってネット使えたんだ。知らなかった。
『そのB型の作業所っていうのはどんなことをするのかな?家の近くにあるかな?』
「それはご自分で調べてみるのが一番よろしいかと。通うのは主様なのですから。したい仕事ができるところのほうが気も楽でしょう?」
それはそうだ。私は近くのB型作業所に見学に行き、そこに通所することに決めた。
ただ、福祉サービスなので手続きが面倒らしく、相談支援事業所というところに手続きを代わりにやってもらう必要があって、通所できるようになるまでしばらくかかるという連絡が入った。
2~3月してからやっと通所できるようになったから来られるかと聞かれた。
私はもちろん大丈夫だと答えて最初は週2回から通所を始めた。
朝早起きするのはちょっと辛かったが用事があると思えば何とか身体は動いてくれた。
それからは趣味をやりながら作業所にも通所するということを続けた。
アラームをかけ忘れて寝てしまって昼前に電話がかかってきて午後だけ通所するという馬鹿なこともやらかしつつ、とりあえず私は週4くらいは通所できるまでになった。
しかし、5月の連休のせいで週4に慣れてから週5に増やそうと思っていたのに5月の間だけは週5で出ないと4月より通所する日数が減ってしまうという現実に涙を呑んで週5行くことに決めた。
きっと未来の私が頑張ってくれる。土日の連休無しで水曜日と日曜日だけが休みというスケジュール表を見せるとルカスの眉がピクリと動いた。
「主様。いくら収入が下がってしまうのが嫌だという理由であっても週5はまだ早いでしょう?それは主様が一番お分かりでしょう?どうしてこんなスケジュールにしたのですか?」
『ゔ…だって…連休があるからって理由でサボっているみたいなの嫌だったんだもん…』
ルカスははぁと溜息を吐いて手帳に私の予定を書き込み、他にはないかと聞いてくる。
『あと友達とカラオケ行く…水曜日に…』
「他は?」
『毎日投稿してる小説をやることくらいかな?』
ルカスは頭を抱えて私の両肩を掴む。
「主様。はっきり言います。もう体力的に限界でしょう?休みなさい」
『ダメだよ。お父さんとお母さんに何て言って休めばいいの?私に普通に生きてほしいって言ってくるお母さんに何て言えばいいの?』
「それは…でも、今の主様の状態では無理なことくらい分かるでしょう?自分で自分の首を絞めているのが分かりますか?」
『ルカスには分からないよ。できない人間が普通になるためにどんなに努力してるか。毎日毎日限界以上まで頑張ってそれでやっとスタートラインに立てるかなってくらいにしかならない惨めさも』
MAKO
「主様…確かに私は主様の苦しみを全て理解しているとは言えません。でも主様を思う気持ちは誰にも負けないと自負しております。そんな私を信じられませんか?」
『ルカスだって早く普通の生活ができるようにって思って支えてくれてるんでしょ?私を追い詰めてるのはルカスもお母さんも一緒だよ。今私がどんなに我慢してるか分からないでしょう?死んでいいって言われたら迷わず死ぬくらいの気持ちだよ?理解できる?』
「主様…もっと違う考え方をしましょう?貴女にはたくさんの可能性も選択肢もある。それにまだ若い。今無理しなくてもいつか無理せずにできるようになる日が来ますから。ですから今は休みましょう?」
『…堂々巡りだね。私は休めないよ。頑張る以外の選択肢ないよ。それで早死にできるなら喜んで無理するよ』
「主様!!言って良いことと悪いことがあるでしょう!!」
『だって生きていてどうするの?親の望み通りに普通に働けるようになっても親の介護の為にお金貯めて自分に使えるお金なんか残らない。障害年金だってもらえても生活できない。生活保護もダメって言われる。これでどう生きるかなんて決まってるでしょ。早死にすること以外の何が希望なの?』
ルカスはもういいと言いたげに首を振った。
「主様が選ばれることに執事としては意見することはできません。ですが医者としてなら言えます。貴女はもうとっくに限界を超えている。そこまでして頑張る理由も全部自発的ではない。これのどこを応援しろというのですか」
『毎回こんな感じになっちゃうね。ルカスはカウンセリング向いてないんじゃない?』
そう言って笑う私の表情は一体どんな顔なのだろう?
ルカスはいつも休め、もう無理だ、と止めてくれる。
でも頑張らなかったら私に生きている価値なんてないって皆思うでしょう?
社会のお荷物にもなってはいけないと言われるなら頑張って働かないといけない。
限界を超えてることなんてとっくに知ってるよ。でも現実の誰も私を心配して生きていてくれるだけでいいって言ってくれない。この屋敷にいる間だけしか私に休んでい良い環境を用意してくれる場所は無い。現実世界で生きていかねばいけない私にはもうその羽休めさえもできないほど追い詰められていた。
きっと今止まったらもう飛べない。そんな確信があるから。
だからルカスには申し訳ないけど、早死にするように頑張るね。
そう言い残して私は指輪を外した。
コメント
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うわあ…第14話、すごく重くて胸が締め付けられました。主様が「頑張る以外の選択肢ない」って言い切るところ、読んでて息ができなくなる感じがしました。ルカスの「もう限界」って言葉と、主様の「早死にできるなら喜んで」のギャップが痛すぎる…。でも、作業所に行くために早起きできたエピソードとか、少しずつ前に進もうとしてる姿に泣きそうになりました。無理してるって分かってても止まれない気持ち、すごく伝わってきました。