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隆「母さんがな、しゃべったんだよ」
龍「は・・・?」
父の言葉に龍季の思考は一瞬止まる
その時の龍季の指は無意識にスピーカーに触れていた
隆「おーい、聞いてるのか?だから母さんにも今の話を聞かしてあげたらどうだってので電話したんだよ」
父の声が洸にも届く中、フリーズしている龍季
洸「もしもし父さん?わかったよ。急いでいくから」
洸が龍季の腕を起こして、スマホに顔を近づける
父「おう、洸。兄貴の目覚まさせてくれ」
そういうと隆一は電話をきった
洸「兄貴、兄貴。大丈夫?」
龍「お、おう!行くぞ!」
四人は全速力でそこから近いバス停まで走った
近いといっても少し離れている
そこからすぐにバスに乗り込み、史江のいる病院に向かった
兄弟はすぐに受付を済ませると、母のいる病室に急いだ
二人の目の前には腕を組み佇む父と、こちらに気付き控えめに手を振る母の姿があった
二人を見た父は早かったなと声をかけたが、聞こえる間もなく、兄弟は母のそばに駆け寄った
史「お、かえ、り。」
ゆっくりと発音された声はぎこちなくはあるものの、確かに母の声だった
洸「母さんも、お帰り」
洸が母の手を握り、言葉を噛みしめながら話す
母「たっ、だ、いま」
史江は微笑んで答える
久しぶりの再会を喜ぶ兄弟と母の間で龍季は複雑な感情を抑え込むのに必死だった
母の回復への喜びと自分の決意への迷いを持って
洸「兄貴・・・?泣いてるのか?」
龍季は違うと拒否したがその複雑な感情は絡み、涙として龍季の元に出ていく。龍季が母の前で泣いたのは、母が傷ついたあの日以来だった
史「たつぁ、き・・・?」
名前を呼びながら母は困った表情で息子の頭を一度撫でた
後頭部に置いてある母の手に、龍季は耐えきれず下を向き声をあげ泣いていた
史「たつぁ、き!」
史江は泣いている龍季の姿に思わず胸を貸した
その時、病室の戸の向こうにいた二つの影に気付き会釈する
洸が龍季の涙を少しもらってしまい、目を拭いた後二人に気がつき手招きをした。豪と小春が二人の様子を見にきたのだった
洸が龍季の肩に手をおき龍季は状況の変化にきづくと母から体を離した
龍季の涙はまだ止まらなかったため、洸が史江に自分たちの状況を説明した
洸「母さん、僕らあの家で便利屋をやってるんだ。この女の子は僕らの仕事の新人の雪野さん」
小春がよろしくお願いします、と丁寧に挨拶すると母は声にならない口でこちらこそと返した
豪「おばさん、お久しぶりです」
豪の顔を見た史江は判断に困る顔をしていたが、洸が豪だというと豪の手を引きぱんぱんと豪の手の平を打っていた
多分「立派になって!」と興奮しているのだと洸には見えた
洸「それでね、僕らから母さんに伝えなきゃいけないことがあって」
史江はん?と目を丸くして兄弟を見る
洸が龍季の肩をゆすり奮い立たせると
龍季はぐすっと鼻をすすって赤くなった目を母に向け話を始める
龍「母さん、俺の子供の頃文集に書いた夢覚えてる?」
史江は静かに頷いた
龍「俺、その夢そろそろ叶えたいなと思って・・・。俺ら4人と父さんであの家でレストランをやろうと思ってる。それでもし店の準備が終わったら・・・。母さんを最初の客にしたいんだ。だから二人に許可を貰いたい。いいかな?」
史江は最後まで聞き終えると微笑み拍手した
兄弟二人の決意を聞いた隆一は、洸の肩をぼんっと叩いて喜んだ
いいムードのところに小春からの待ったが入る
小「ちょっと待ってください!二人のお住まいはどうなるんですか?ご両親も・・・。」
家族全員の時が一瞬止まった
自分たちのことをすっかり忘れていた龍季の叫び声が病室に響いた
何でも屋を閉めて数ヶ月
今もそこにはあの凸凹兄弟の家と隣にレストランが建っている
店の名前はレストランa&r(エイ・アール)
ここは今も有妻家と仲間、そしてここにくる客の居場所となっている
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