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「産まれたべ!臍の緒切るの一回待ってや!」
再び目覚めた俺はふわふわのベッドの上、作業着姿の人が右往左往している。
俺の体はしっとりと湿っており朧げな視界の中で辺りを見回す。
足元はベッド…では無く、藁。隣には座っている大きな栗毛の美しい馬。こちらを心配そうに眺めている。
俺は何故か2歳児程の大きさになっており、人差し指の感覚しかなく、首が異常に長いことにも気がついた。
「ナーさんそろそろ血が子供の方に行ったから臍の緒切ってや」
「はぁーい、じゃあ切っちゃいますねぇー」
いまいち自分の状況に適応できておらず、四方を見回す。
「ラグの子供、元気いっぱいですねぇ〜首ブンブン振ってますよー。」
「そりゃ名牝の子じゃ。元気モリモリだわ。」
ラーメン屋の大将のようなおじさんと、ナーさんと呼ばれている物腰柔らかそうなお兄さんがしゃがんで前に座っている。
「この子、競にだすんですか?」
「いや、出さんよ。確かにこいつは将来性がありそうだが、それ以上に何か…あぁ…?」
「輝くモノを持ってそう、って感じですかぁ?」
「だぁら、俺が馬主になる。母親と離されるこいつも可哀想だろ。」
「バヌシ」…?つまり今…俺は…
競走馬になったって事か…?自殺しようとして…競走馬に転生って…!普通悪役令嬢(?)とか最強勇者とかじゃねぇの!?
なんでよりによって競走馬…!?
思考を巡らせてるいると、母馬が立ち上がり俺の事を舐めて羊膜を剥がそうとする。少しくすぐったい。
「あとはラグだけで大丈夫そうや。」
「仔馬の方、立ち上がって無いですけど大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろ。さ、あとは母親に任せるぞ。」
そうか、馬って生まれた瞬間立ち上がるのか。そういえば小学校の頃「名前つけてよ」なんてやったな…
俺は湿った体を起こして立ち上がる。
俺はこれからどうする?
競走馬として中身人間が走らされるのか?
いや待て…たしかアイツら競馬の話で良く盛り上がってたよな…?
俺が競走馬として名を挙げ、あいつらに何万も賭けさせてそれをパーにすれば…!
…少し、気分が乗って来た。この気持ちなら今の境遇を乗り越えられる!